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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
49/211

テンペスタによる考察

まだ当面は毎週火曜更新が続けられそうです

リアルの忙しさがまだこの段階で収まってくれるのならば…っ

 「ふむ」

 

 大分こちらの知りたい情報も集まってきた訳だが……。


 「いや、これはなかなか楽しいな」

 

 国を育てる。

 もちろん、彼らからすれば生きる為に一生懸命であり、このような事は不謹慎なのだろうが何分こちらとしては手伝っているだけなのでどうしても、なあ。

 あれから幾度か、伯爵に頼まれて手紙を届けた。

 要は新しい帝国、彼らの宣言する所の新生帝国の発展に協力してくれそうな相手に声をかけた訳だ。

 もちろん、全員が全員それに応じた訳じゃない。彼らの書斎などに送り込んだ手紙に対して、応じた振りをして王国に情報を売って自分の立場を改善しようとした者とか、単純に断りを入れようとした者もいる。

 ただし、裏切りを図った所でこっちは竜である自分だけ。周囲に王国の兵士を隠していようが丸わかりだし、そんな所にのこのこ姿を現す必要もない。そのままこちらの姿を見せる事もなく、おさらばだ。ちょいと気になって後日見たら、領主が変わってたような気がするが知らぬ。


 もちろん、当初の伯爵の目論見通り新天地への移動に賛成した者も複数いた。

 ある人物は「今更帝室への敬愛を、王室に変える事は出来ない」と。

 またある人物は「王国に敬愛する兄を奪われて、奴らに忠誠を誓うなんて死んでも嫌だ」と。

 それぞれに理由があったが、当初に比べて新帝国とやらの住民は着実に増えていた。


 「その結果、色々判明した事もあった訳だが……」


 まず一つ判明した事だが、この地の自然の回復は遅い。

 中央大陸では本物の竜王の住む場所であれば、伐採された森が一晩で回復する事すらあるし、そうでなくても数年もあれば完全回復する。

 それがここではこの調子であれば数十年をかけてゆっくりと回復するのだろう。これでは中央大陸と同じような伐採をやっていれば即効で森は丸裸、森からの恵みなど失われてしまう。

 また魔法も反応がおかしい。

 人族はまだ気づいていないようだが、魔法の力が低下している。

 原因を探っていて気づいた事だが、この地では根源の欠片が妙に薄い。

 根源の欠片は魔法の源。竜は自身の属性に合うそれを内に宿し、体内に取り込み、成長と共に強大な力を奮うが、人族もまた持っているはずだ、本来なら。

 だが、欠片が薄いこの地では新たに魔法の力を持たずに生まれてくる子の割合がじょじょに増えてきている。


 「まあ、竜が暮らしていない原因は分かったな」

 

 竜種は根源の欠片を取り込む。

 それが薄ければどうなるか、それこそ空気が薄い場所で暮らしているようなものだ。テンペスタのような竜王ともなればそこまで不可欠なものではないが、最初に感じた不快感はこの薄さのせいだろう。分かってしまえば無視も出来るが。

 しかし、他の竜達はどうだろう?

 自分とて、昔、こちらに飛来していれば不快感を感じて早々に立ち去っていたはずだ。

 これが知性を持たぬ大半の竜であれば、住む事もないだろう。

  

 「うん?」

 

 妙に引っかかった。

 属性は、ある。

 大地は回復速度こそ遅くとも確固としてそこにあり、天空から降り注ぐ光は火に満たされている。水は流れ、風は他と変わらず吹き続けている。……ならばおかしくはないか?

 属性があれば、竜は食事には困らない。多少息苦しくても、争いを好まない竜が他の竜や魔獣との争いを避けるためにいてもおかしくはないだろうか?なのに、ここには竜の姿がまるで見えず、魔獣もまた同じくその姿をまるで見かけない。

 

 「……確認してみるか」


 すぐには大丈夫だろう、ここも。

 状況を確認すれば現状、常に自分が張り付いていなければならないような状況ではなさそうだ。大分落ち着いてきている。

 それを見て取って、テンペスタは空へと舞い上がった。


 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 「ふむ」


 根源の欠片に十分に満たされた地域は大陸全てを回り、確認してみれば中央以外には北方大陸のみ。

 寒冷で常に氷に閉ざされる北方大陸には、だが多数の竜と魔獣が生息し、少数ながら母竜などの竜王も暮らしている。


 「つまり、竜や魔獣が暮らすには根源の欠片が不可欠という事か?」


 属性が幾ら豊富でも根源の欠片がない、訳ではないが少ない所では生息していない。

 いや……。


 「竜の数が少ない北方大陸は根源の欠片も属性も豊富だが……あそこまで極端な気候になるものなのか?」


 北方大陸の偏りは考えてみれば異常だ。

 沿岸部まで凍り付き、剥き出しの陸地は僅かな例外もない。

 そうでありながら、北方からの氷の流出もまた、ない。

 氷は水に浮かぶ。だが、北方大陸は氷と雪に閉ざされた大陸でありながら、その氷が周辺地域に流れ出す気配は微塵もない。単純に寒いだけならば南方の海も果てまで行けば凍り付く訳だが……そこからは時折氷の巨大な塊が流れ出している。

 何故それが起きるかと言えば、寒い時期と比較的寒さが緩む時期があるからだ。

 なのに、北方にはそれがない。常に、そう常に吹雪が吹き荒れ、気温は常に極度の低温のまま。夏のない大陸。

 

 「面白いな」


 根源の欠片が薄い大陸には竜も魔獣もおらず、それが濃く、けれど竜王の少ない地域は気候が極端な偏りを見せている。

 そして薄い大陸での自然の回復速度は遅い。

 ただし、工夫次第でそこで人族が暮らす事は可能。「そういう場所」なのだと認識して、暮らすのであれば順調に人族は新たな国を築き上げつつある。単純な真っ向からの強さではともかく、それ以外では果たして人族と竜種、どちらが強い、いやしぶといのか……?

 この時、テンペスタはこちらに関心が行き、新帝国とそちらの観察に意識が完全に向いてしまっていた。

 そしてそれは必然的に、意識が逸れた場所が生じる結果を生む事になる。 

 

という訳でテンペスタの考察です

ただ、結果的に放置しちゃった場所が……

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