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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
45/211

王国内情、そして異なる戦いの結末

何とか間に合いました

 「どういう事だ?」


 王である自分が怒りの声を洩らして、周囲を見回す視線も自然と厳しいものになってしまう。

 殆どの者はどことなく困惑した表情や、厳しい表情をしているが中に幾人か視線を逸らした者がいるな……。


 「ヴェルガン?」


 ヴェルガン伯爵、確か技術開発局の副局長。

 今しがた視線を逸らした者達の視線、他の者はいずれも逸らした後、お前に視線を向けていたぞ?


 「王よ、何でしょうか?技術部の儂には……もしや機竜の性能に関してであれば今の段階ではこれが限界であったと申し上げるしかないのですが」


 ちっ、抜け抜けと……。

 機竜が竜王に仕掛けた。

 五つのチームを『竜王が住む』とされる地域へと派遣し、内三つは竜王と出くわす事なく帰還した。

 一つのチームは竜が住んでいたと思われる痕跡を発見した事から勘違いや誤った伝説でもなかった事ははっきりした。

 それはいい。問題は残る二つだ。

 竜王を発見、交戦。

 結果は二チームとも壊滅。

 片方は無傷の一機を残し、完全に全滅。もう片方も同じく一機、こちらは大破しつつも同じく生存していた指揮官を回収し、帰還。この内容からして、おそらく前者は途中で恐怖から逃走した、と見るべきであろうな……それはいいが、再び竜王の所へ送り出すのは無理かもしれぬ。

 今回は私が命じたのはあくまで偵察任務。

 竜王がいるのか、いるのならばどこにいるのか。

 それを確認する為に派遣された部隊であったのに、報告書を見る限り(生存していた指揮官のものだが)最初から交戦を前提とした動きをしている。

 これがまだ、相手が本当に竜かどうか確認出来ないので確実を期して、というならいいだろう。だが……。


 『命じられた討伐任務を果たせず真に申し訳ありませぬ。失敗の責は全て我輩にあり、部下には何卒寛容な処置を』


 というコッペルマン子爵からの一文がそれを否定する。

 呼び出して聞いてみたが、やはり彼に与えられた任務は竜王の探索と、その殲滅、であった。無論、正式な書類で与えられたもので、彼はそれをきちんと手元に控えていた。

 つまり、どこかで私の『偵察任務』が『偵察と、殲滅』にすり替えられた。

 

 「私が気づかぬと思ったか?貴公には私の命令を途中で改竄した容疑がかかっているのだがな」

 「何と!?それは心外ですぞ!」


 白々しい。

 だが……。


 「……現状、そう疑われても仕方のない行動が見られた、という事だ。注意せよ」

 「かしこまりました。疑わしい行動は慎むべきですな」


 証拠を残していないと判断しての行動だろう。

 実際、幾つもの方向からの調査がうっすらとヴェルガンの方向を示してはいたのだが、間違いない!と言える程ではない。証拠を掴ませない程度には巧妙だ。

 まあ、いい。

 今回は警告だ。「これ以上は許さん」というな……当人も自分に注意が向いていると分かれば当面はおとなしくしているだろう。今回の損害は決して軽いものではないが、重大な問題を引き起こす程ではない。それに損害が出たとはいえ、竜王との直接戦闘記録は今後を考えれば非常に貴重……間違いなくヴェルガン伯爵はそこらの兼ね合いを考え、もしばれても重い処罰は受けないと判断したのだろうな。

 

 「さて、では改めて今回の結果を見てみよう」

 「「「「はっ」」」」


 結果から言えば、やはり竜王は竜王だという事か。

 攻撃力自体は問題ない。ただし、事前砲撃段階に限る。

 そして、いずれの竜王も人が想定していた形状とは異なっていたというのがまた面倒だ。

 人が想定していた竜王は基本、下位竜を元にしていた。

 だが、出現した竜王は下位竜とはまったく異なる形状をし、全く異なる攻撃方法を有していた。無論、その攻撃力もだ。

 後者の地点に現れた竜王はまだ分かる。巨大さや見た事のない形状はともかく、その攻撃は肉体のみだったからだ。それに形状が多少異なるといってもそれは背中のコブなどの細かなものだ。トカゲを想定していたらカメが出てきたと言っても、そこまで異様な形状ではない。

 だが、前者は違っていた。


 「では、戦闘に関して順に説明せよ」

 



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 「なんだ、これ……」


 俺ことネイマン少尉に今回命じられた任務、それは竜王討伐。機竜とかいう正直気持ち悪い代物に乗る適正とかがあったお陰で、下っ端の一兵士だった俺がいきなり昇進して士官になった。その時は自分の幸運にうかれたもんだったし、周囲からやっかみを受けたもんだったが、当時の俺が今、目の前にいたらぶん殴ってやりたい。

 機械とかいう最近の流行りもので竜の死体を動かす。その中に自分が入らないといけない、って事は気持ち悪かったが、それさえ我慢すれば給料も上がるし……そう思ってたんだが、まさかこれで「竜王を退治してこい」なんて言われるとは……。お陰で、行軍中俺達は仕事の大部分を免除されてはいたが、俺達機竜乗りに向けられる視線は以前と違って、生贄を見るような哀れみの視線だった。先の他国との戦争では活躍したお陰で憧れとか英雄を見る目だったってのに。もっとも、立場が逆だったら俺も同じ事をしてただろうけど。

 そうして発見した竜王、それが目の前の空に浮かぶ半透明の塊だ。

 到底生物には見えないどこかぶよぶよしたそれは体を時折別の色に染める。

 時に淡く緑色に、時に深く闇色に、時に赤く。

 濃さも色も様々であり、染まる割合も全体が染まるかと思えば、一部のみが染まる。

 

 「くそっ、今回はこれかよ!!」


 攻撃を仕掛けてくる時に色が変わるというならともかく、そうじゃない。

 仕掛けてくる攻撃が直前の色に関わるというならともかく、その逆。

 緑に染まる前に仕掛けてきた攻撃は植物を用いた拘束だった。

 闇色に染まる前に仕掛けてきた攻撃は漆黒の闇がドーム状に広がる攻撃だった。

 赤く染まる前に仕掛けてきた攻撃は超高温の炎だった。

 今回は氷だった。

 ぽぽっ、と空中に浮かぶいくつかの白い光の塊。嫌な予感がして全速力で逃げれば、直後にそれから氷の刃が無数に飛び出し、周囲を氷漬けにしてしまう。白い世界は直後にパリンと澄んだ音を立てて、砕け散り、その中にいた物は粉々に砕かれた。

 そう、同僚の機竜の一機ごと、だ。

 

 「くそっ……」


 思えば、あいつの名前もろくに覚えられなかった。

 今回動員された部隊は既に編成され連携訓練も積んだ真っ当な部隊もあれば、寄せ集めの急造部隊もあった。機竜自体がつい先だってまで戦争であっちこっちに引っ張り出されていたせいだ。おまけに、機竜を操れるかどうかはある程度の相性が必要だったものだから俺みたいに下っ端からの引き上げも多かった。

 そうなっちまうと、それまでお世話になった部隊とはおさらばだ。

 あっちの部隊から一人、こっちの部隊から一人と選抜されて機竜の訓練を受けて、動かせるようになったら一機二機で戦場へ派遣。

 複数で派遣されて、同じ境遇から仲良くなったと思ったら、他の戦場で戦力が足りないってんで一人別れて現地へ派遣。

 そんな事を繰り返していたものだから、まだ貴族の部隊とかだとある程度戦場が落ち着いた後は母国に帰還して連携訓練積んだりも出来たんだろうが、俺達下っ端からの繰り手はあっちこっちへと動かされ続けていたもんだった。

 で、新たに集められた部隊。

 てっきり余程大きな戦闘があるのか、って思ってたらいきなり「竜王討伐」と来たもんだ。

 おまけに集まったら即効出発。連携さえろくに出来ちゃいねえ。

 俺は最後に到着したんで、何とか互いに話して同僚になった奴らと連携取りたかったんだが、部隊長がな……。

 いや、悪い人じゃなかった。ただ大変だろうから、ってんで色々と接待してくれただけだからな。

 でも、毎晩のように酒宴に誘われて、おまけに次々俺達に話しかけてくるもんだから、繰り手同士で話をする機会が……昼はどうしたって自分の機体の整備とか、他の仕事で潰れちまうから同じ機竜の乗り手同士で友好深める一番の機会は夜だったんだがな……。

 おまけに昼に連携訓練の場を、と思ったんだが「移動しながらでは」って事で難色示されちまったし……。

 多分、時間制限あったんだろうな。「何時何時までに到着し、何時までに帰還せよ」って。或いは帰還の時間だけかもしれねえけど。(実際、当初は偵察任務のつもりで出動命令が出されていた為に、帰還日程が既に設定されていた)

 けど、お陰でこっちは連携不十分で戦闘突入だ!

 部隊長自身はっていえば、とっくに死んだ。

 悪い人じゃなかった、っていうか単に無謀だったんだな。機竜に乗れねえのに「部下を置いて隊長が退避する訳にはいかん!」って。

 でも、なあ。

 相手は竜王なんだぜ?人より頭いいって言われてんだぜ?あんな大声で指揮してりゃ狙われて当然だろうよ。

 上空から叩きつけられた巨大な岩塊によって部隊長とその護衛ごと死んでしまった。

 こいつがまたややこしい事態を招いてしまった。何しろ、俺達は下っ端だったせいで指揮官機って奴がいなかった。つまり、互いに連絡を取る手段がねえんだ。

 本来なら、指揮官に安全な場所にいてもらって中継、ぐらい考えてたんだがなあ……。くそっ、こうやって実際に機竜動かして一緒に戦闘すんのは初めてだからまともに連携取っての戦闘が全然出来ねえ!!

 砲撃機なんて、足を止めて攻撃しないといけないから、即効で潰された。

 そりゃまあ、竜王相手にある程度以上の攻撃能力がいるのなんて分かり切ってるけどよ。こいつ目も何もないからなあ。どこ見てるか分からねえんだよな。迂闊に他の機体が攻撃してるから、って足を止めて砲撃しようとするとその攻撃の気配を感じ取るのか、攻撃してる他の機体無視してチャージ中の砲撃型を攻撃しやがったし。

 予兆も何もなしのいきなりの攻撃だから回避も厳しい。

 ちらり、と視線を自分の機体の前脚に向ける。


 「潮時かもな……」


 格闘型である自分の機体の前脚は武器な以上、頑丈だ。

 なのに、そこについた刃はドロドロにとろけてしまっている。奴のぶよぶよした体を斬りつけていると、次第に破損が酷くなってこのありさまだ。もう一機の格闘型は攻撃の後距離を取るのに失敗して、もう呑み込まれて丸ごと溶かされてしまった。

 後は残されたのは俺と……。

 ああ、たった今、俺だけになっちまったか。

 地面から無数に突き出した金属の槍に貫ぬかれて全身引きちぎられた砲撃型に視線を向ける。

 多分だが、格闘型と砲撃型では機動力で砲撃型が明らかに劣るからな、それで当てやすい方が先に狙われたって所か?それとも単なる運か?

 それを見て、俺は即座に逃げ出した。

 だってそうだろう?俺の最大の武器はもうとろけちまって、残ってない。

 砲撃型に劣る程度の火器しかない俺の機体じゃ、奴を倒せるとは思えない。

 だから……。


 「許してくれ」


 畜生……畜生!!

 どこのどいつがこんな計画立てたのか知らねえけど!竜王に挑むってのなら、もっと戦力と連携訓練積ませてからやりやがれってんだ!!!

 

昨日完成させる予定が頭痛で寝込んでました

昼は結構あったかくなるのに、夜は案外冷えるので体調崩しやすい時期ですね……

皆さんもお気をつけて


※5/3誤字修正

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