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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
44/211

挑め!竜王、その結末

お待たせしました


※4/11一部修正

 「よし、砲撃型全機、攻撃態勢!前衛型は砲撃後前に出れるよう準備をするのである!」

 「「「「はッ!!」」」」


 うむ、よい返事である。

 今回動員された機竜は我輩の乗る指揮官機以外に砲撃型二機に、前衛型二機。

 指揮官機と言っても実際には前衛型か支援型、指揮官の得意な方の機竜に通信用の魔導具を仕込むだけ、というのが正体な訳であるが。まさか指揮官一人一人に特別あつらえの機竜を作るなんぞ出来る訳もなし。精々が所、機竜の色を変えるぐらいであろうが、真っ当に現場を知る指揮官であれば「自分を狙ってください」と言わんばかりの特別カラーな機竜なんぞ乗りたい訳がない。

 無論、我輩もそれに関してはまったく同意見であり、部隊は最小単位を前衛と後衛二機の組み合わせを一つとしておる。

 かくして、この場には森林地帯用の偽装を施した各二機の砲撃型と前衛型、指揮官仕様の砲撃型一機の合計五機が存在する訳である。

 その三体の砲撃型で先手を打つ。

 今は相手が動いておらぬ故、こちらも全力砲撃がかけられるのである。

 魔力を蓄積してゆく。

 魔法の場合、反動はないので火薬を用いた武器と違い、固定は四肢で事足りるのである。ま、だからこそ開発者連中も主兵装に魔法を選んだのであろうが……。

 そんな事を考えつつも、発射準備の手順を整える事は怠らない。


 『赤二番砲撃準備完了!』

 『赤三番同じく!!』

 「よろしい」


 今回、赤が砲撃型を、青が格闘型を示している。

 色を分けたのは全部同じ色だと咄嗟の際に「赤五番損傷大!後退します」「ええと、五番だから格闘型の方か!」となる事を避ける為だ。尚、赤一番がコッペルマン子爵の乗る隊長機となる。


 「ようし、全機各個に照準!奴のど真ん中をぶち抜くぞ!発射五秒前!4、3、2…」


 照準を展開し、自らも準備を整え。


 「1、撃て!!」


 引き金を引く。

 前傾姿勢となり、砲撃形態となっていた三機の砲撃型の頭部から一斉にブレス状の攻撃が放たれた! 

 その攻撃は瞬時に対象までの距離を零とし、直撃……。

 今更であるが、まさかあれ、本当はただの岩でした、などという事はあるまいな?

 などと一瞬頭を掠めたのも杞憂であったようで、直撃した攻撃が岩のようなそれを粉砕し、明らかに岩の欠片とは異なる肉と血を甲殻と共に撒き散らした。だが……。


 『やった!!』

 『隊長、やりましたよ!!』

 「うむ……しかし、待つのである。何か妙なのである」


 いや、直撃したのは良いのである。

 しかし、あれである。仮にも生物なのであるから、飛び散るのが……こう言ってはアレであるが、肉や血だけというのは何かおかしくないのであるか?

 そう口にすると部下達も改めて見て、疑問に思った様子なのである。

 グロいような気もするが、何度も言うが、グロい気もするが、普通生物の胴体やら何やらに直撃したら飛ぶのは肉片だけではなく、骨や内臓も含まれていて然るべき話ではなかろうか?少なくとも、我輩には違和感しか感じられないのである。

 などと思っていた訳であるが、その違和感が正解であった事を我輩は今、目の前で思い知らされているのである。


 『な、なな、な……』

 『こ、これは!』

   

 ああ、うん、部下達も混乱しているのであるな……。

 いや、確かにそりゃあ内臓とか骨がないのも納得である。

 たった今、地上が盛り上がり、慌てて後退した我輩達の目の前で地下から体を起こす巨体が姿を現しつつあるのである!

 先程我輩達が吹き飛ばした大岩めいたのは目の前の巨竜の背中のコブ一つ。

 巨竜の外見は四つ足の……何と言えば良いのであろうか?トカゲではあるが、大きなコブが全部で四つ、両肩の上と、更に背中に二つ縦に並んでいる。今回、我輩達が吹き飛ばしたのは背中にある二つのコブの内、後方にあったもので、どうやらこの巨竜は何とも信じられない事に斜め下に地面に埋もれる形で眠っていたようだ。それもあれだけコケが生えていた所を見るに、恐ろしく長い時間ずっとそのまま。

 つまり、こやつ何百年単位でこの地で寝ておる内に、上にあれこれ積もって埋もれた?

 というか、まあ、そんな寝ぼすけがいきなり痛みでたたき起こされたりしたら……。


 【ゴガアアアアアアアアアアアア!!!!!!】

 

 まあ、普通怒るのであるな。

 

 「散開!!」

 『『『『了解!!』』』』


 即座に部隊は散る。

 と、同時に砲撃型は距離を、格闘型は距離を詰め……。


 「あ、青一番と青二番も余り近すぎないようにするのである!!」

 『『え?』』


 いかん、連中距離を詰めて、砲撃型への攻撃を誘引するよう訓練をしすぎた上に、機竜での初実戦でそれしか思い浮かんでいないのである!!

 

 「いいから下がれえええええ!!」

 『『りょ、りょうか』』


 思わず叫んだのであったが……それが遅すぎたのは目の前の光景が示したのである……。

 巨竜がその場で高速回転。

 さて、トカゲのような体というか、爬虫類となると尻尾があるのである。

 あの巨竜にしてはそう長い尻尾ではなかったのであるが、それはあくまであれの全長にしては、の話なのである。

 機竜の全高にも匹敵する太さのそれは横から襲い掛かってきた壁にしか見えなかったであろう。

 

 「くっ……」


 青一番と二番が共に吹き飛ばされ、森の中へと木々を薙ぎ倒して吹っ飛んでいってしまったのである。

 あれで戦闘に支障がないとは思えんのであるな……。

 格闘型はどうしても距離を詰めての戦闘となる故、機動力か装甲、いずれかを高めてあるのであるが……。


 (どちらであってもアレでは論外である)


 何とか中の人員だけでも無事であって欲しいのであるが……。

 もっとも、そんな事を考える余裕なぞ今の我輩にありはせんのであるが!!


 「我輩が前に出るのである!!赤二番、赤三番、後方より奴の頭部を狙うのである!!」

 『『隊長!?』』

 「前が戦闘不能に陥った以上、誰かがやらねばならんのである!!そして我輩の機竜の方がお前達のより頑丈なのである!!!」


 指揮官機である以上、装甲は通常型より厚めになっている。

 

 (まあ、紙の服よりは布の服の方がマシなレベルであろうが!)


 どうせアレの前では多少の装甲の厚さの違いなど大差なさそうなのである。

 我輩が声をかけながら、連携を取って攻撃、というのも考えたのであるが……うむ、実際にやってみると操縦に手一杯なのである!

 運転しながら、攻撃も行い、回避も行い、尚且つ部下二人の動きを見ながら指示を出すなど不可能なのである!というか出来るか!!我輩の頭は一つしかないのである!!

 

 「よいな!我輩が囮になった後は各自に任せる!とにかく撃って撃って撃ちまくるのである!!」

 『『りょ、了解です!!』』


 はあ、これなら機竜を二人乗りにして、我輩は指揮に専念する仕組みの方が良かったのである。

 事前の訓練の際は割と冷静に……いや、違うのであるな。我輩もまた、この新兵器にうかれていたのであろう。あの時は我輩、ほとんど機竜を動かさず指揮に専念出来ていたのである。うむ、砲撃部隊の指揮官がこんな機動戦を前提とした戦闘の指揮を執る事なぞ想像すらしておらんかっただけであるな!

 えい、今更どうにもならんのである。

 これは生きて帰れたら、是非とも申告せねばなるまい!


 「くそ、このような巨体との間合いも未体験であるな!せめて剣の鍛錬ぐらいもう少しやっておくべきだったのである」

 

 近接戦闘も騎士だの歩兵だのと比べて、我輩がやっておったのは「一応は」やっておっただけだったのである。

 お陰で連中のいう間合い、という奴が分からん!!

 いや、意味は分かるのだが、我輩にとっての間合いとはあくまで射撃の間合いというか距離の測り方が専門であって、このような互いに動き回りながら相手の攻撃の範囲を見切って、などというのは専門ではないのである!いや、うちの部下達も同じであるな……考えてみれば、青一番と青二番がああもあっさりと早々に吹き飛ばされたのも同じであるか。

 連中も経験不足であるからなあ……貴族の嗜みとやらで昔やっておった我輩の方がまだマシか!

 うむ、その点でも我輩が前に出たのは正解であるな!!

 ……などと所詮は自画自賛、うぬぼれであったか。

 あー、うむ、あの巨体がこうも素早く動くとは。これは……避けれんな。

 

 「赤二番!赤三番!!撤退をきょか……がっ!?」


 瞬時に詰められた距離、至近距離に巨竜の豪腕が迫る中声を上げたのであるが直後に襲ってきた衝撃に我輩、意識を失ったのである……。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 「……う、むむ……ぐぐっ!!」


 い、痛いのであるな!

 これは左腕の骨が折れているようである……いや、最後に見たあの豪腕の一撃を喰らってこれなら十分機竜は役目を果たしたのであろう……。

 どれ、出れるか……?むう、手動の方で何とか……。


 「これは……」


 出てみて最初に確認したのは乗っておった赤一番の状態なのであるが……訂正しよう!我輩運が良かっただけなのである。

 赤一番の機竜の全身はぐしゃぐしゃ。我輩も攻撃を受けた位置があともう少し上であれば間違いなくあの世逝きだったのである。うむ、この、最早残骸としか呼びようのない光景を見ればそうとしか思えんのであるな……。

 だが、我輩の機竜がこれでは……。

 そう思いつつ、覚悟を決めて周囲を見回した我輩は予想通りのものと、予想外のものを見つけたのである……いや、どちらも予想通りというべきか?

 一つは叩き潰されたのであろう、ぺしゃんこになった赤二番。

 もう一つは……これは奴のブレスがそういうものだったのであろうか?ドロドロに溶けて、酸っぱい匂いが漂ってくるのである……。うむむ、これではどちらも絶望的であるな……。

 救いはあの竜王と思しき巨竜の姿がない事であるか。出てきた穴は残っているのであるが、姿は見えんのである……むう、我輩であればどうか?やはり、戦って散らかってしまった上、残骸まで転がっているような場所で寝直そうとは思えんのであるな……。

 とすると、寝所を変えたと考えるのが妥当であるか。とはいえ、追うなぞ不可能であろうが。

 

 ギギ……ガシャ……。 


 そんな歪んだ音が微かに聞こえたのはそんな時であった。

 はっと意識を向けたその先に見えたのは……。


 「おお、あれは……青一番であるか!?おーい!!」


 おお、我輩の姿に気づいたのかゆっくり近づいてくるのであるな。あの様子からするとあちらもあれが限界であるか。いや、動けるだけ我輩の赤一番や他よりマシであるな。


 『コッペルマン隊長!ご無事でしたか!!』

 「うむ……まあ、これを見る限り運が良かったのであろうな」

 『でしょうねえ……いちいちトドメを刺しに来る程暇じゃなかったのが救いですか』

   

 まったくであるな……。

 その後話を聞いてみれば、青一番も応急修理をして何とか最低限の移動が可能になったので戻ってきたそうなのである。そういえば、青一番の乗り手は元々はうちの整備士であったな。確か、機械弄りが趣味であったか。残骸となった青二番から申し訳ないが使えそうなパーツを拾ったと言うておったが、仕方あるまいよ。

 青二番はちょうど、尻尾の直撃を受けた。

 奴の尻尾>青二番>青一番と直撃し、青一番は結果として青二番がクッションになった為に何とか助かったらしい。無論、その分尻尾と青一番に挟まれた青二番は空を舞う間にバラバラになったそうであるが。無論、中身は推して知るべし、である……遺品すら見当たらず、ただべっとりと真っ赤な血が広がっていただけだったそうである……。

 我輩と青一番はその後、赤二番と三番の残骸を調べようとしたが、赤三番は諦めざるをえなかったのである。おそらく酸と思われるものに塗れたそれは我輩達が試しに放ってみた手袋を白煙を上げて溶かしてしまったのである……あれでは触れたものではない。

 赤二番からは何とか肉片らしきものは発見したのであるが……。


 「これは事前に切っておいた各自の遺髪が遺品となりそうじゃな……」

 『そうですね……とりあえず合流しましょう』

 「うむ、すまんが頼む」


 危険なのは分かっておったから事前に全員が遺言と遺髪を離脱する副官らに預けておいたのである。

 結局、使う羽目になってしもうたか……。

 結局、我輩達の竜王への挑戦は五機の機竜の内四機を失い、一機も大破。五名の搭乗員中三名死亡、重軽傷二名という結果を持って終わったのであった。

 

 

という訳で生き残りました、コッペルマン子爵

次回はワールドネイション(改)の二話を投稿予定です

出来れば、それまでに黄金竜外伝も上げれるといいんですが

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