幕間:少女視点
次回からは「派手にいくぜ!」
これで終わりかな。
ふとそう思った。
思えば、自分は悪運だけは強かった。大きな不幸不運は一度ならず体験してきたが、その中でも幸いを得てきた……そう言えるような人生だった。
……けれど、どうやらその悪運も尽きたようだ。
最初の不幸は八つにもうじきなろうかという頃だった
中堅と呼べる規模の、けれど若手のやり手と言われていた、らしい商人であった父と、おっとりした母に可愛がられていた私だったが、ある日大きな仕入れの為に自ら隣国に出た父は上手く商いをこなしての帰りに盗賊に襲われ帰らぬ人となった。
悪い事に父はこの仕入れの為にまとまったお金を借りていた。本当ならば、盗賊に襲われさえしなければ問題のない金額のはずだったが、当然ながら、仕入れた商品をそっくり盗賊によって奪われた以上借金を返す当てはなくなった。
この知らせが届くや、途端に店には借金取りが押し寄せた。
付き合いのあった店でも距離を置く店が相次いだ。その掌の返しっぷりは潔い程。
無論、全てが全てそうした人ばかりではない。さすがに金額が金額であったのでお金は無理だったが、それでも間に入って苦労してくれた人もいた。
お陰で本当の意味での人間不信にならなかった事は感謝しているが、結果だけ述べるならば、店は潰れ、母は愛する夫を突然失ったショックに慣れぬ仕事による疲労、責め立てる借金取り達の言葉による心労からか、ある朝を最後に二度と起きてくる事はなかった。
こうなると、娘である自分に残る責任が圧し掛かってくる。
それでもまだ連中はまともだったのだろう、母の葬儀の金ぐらいは残してくれたのだから。
ただし、その代わりといっては何だが、私は借金のかたに奴隷として売られた。
……本当に連中は借金取りとしてはまともだった事を知るのはもう少し後の話なのだが。この国で一般に奴隷商と呼ばれる者にも良い者と悪い者がいるという事を知るのももう少し後の事。
隷属の腕輪を嵌められた自分を買い取ったのはさる貴族。
まだ幼い娘の世話をする為の同年代の少女が幾人か欲しかった、という事らしい。ただ、世話をするだけならばそれまで雇っていたメイド達で十分だろうが、その貴族が求めたのはプライベートでは娘の友人となりうる相手だったらしい。
貴族という立場上、どうしても外で町の子同様に遊ぶのは難しい。
かといって、貴族の子同士の付き合いというのは非常に堅苦しく、しかも毎日会うという事はまず不可能。
常に傍に控えているのは自分よりずっと年上の女性ばかり、かといって親である自分達もずっと傍についていてやれない、という状況を何とかしてやりたかったらしい。貴族としては優しい親だったと言えるだろう。
無論、その後は大変だった。
何せ、自分もメイドの仕事なんてやった事がない。商人の娘がどうとか云々以前の、まだ八歳になる前の子供がそんな仕事を完璧にこなせるかどうかという問題だ。これは私以外の同じく買われた娘達も同様で、一人親がメイドであったという事からきちんとこの年齢でも仕事をこなしてみせる者がいたが、そんなのは例外中の例外。殆どは見習い以前の問題だった。
もっとも、貴族家の方も最初から完璧など想定していなかった。
じっくり教育を行い、将来娘が社交界に出る頃までに互いに友人関係を築いてもらえれば、そう考えていたのだ。その頃になれば貴族同士の付き合いも多くなるが故に嫌な思いをする機会も増えるだろう、そんな時に不満や相談に乗れる者が育っていれば、そう考えていたのだ。
そう難しい話ではないはずだった。令嬢自身も高慢な性格ではなく、新たに迎え入れた少女達に穏やかな態度で接し、何時しか彼女達は友人としての関係を築き上げていたのだ。このままの日が続けばいい、令嬢は大人となり、自分達はそれを支える。
……そのささやかな願いは叶わなかった。
今年初めの事、貴族の令嬢が体調を崩した。
最初は軽い風邪かと思われたそれは一気に悪化し、気付けば危険な状態に陥っていた。
……この世界の子供が成人まで生きるのは難しい。
魔物という現実的且つ物理的な脅威があるのもそうだが、病気や怪我というのが大きい。アルコールなどによる消毒の効果は分かっていても、何故それが有効となるのか理解出来ていない、といった状況だ。
結果として、一般的な平民だけでなく、貴族社会においても子供の死亡率は高い。昔の王家や貴族が側室という形で複数の女性と関係を持っていたのもそこに理由があり、より確実に男子の跡継ぎを得る為、そして多くの子を得る事で多少病気や怪我で亡くなる者が出ても家が断絶する危険を減らす為だ。
そうした意味合いでは彼女一人の為にそこまで多額の金をつぎ込む必要は全くなかったとも言える。
だが、初めての子であり、たった一人の女の子である彼女の為に、その貴族は大金をつぎ込んだ。そして、それは無駄に終わった。
令嬢が亡くなったのである。
問題はその後、少女達を見ると亡くなった娘を思い出すという事で再び彼女達は売られる事になってしまったのだ。
それだけならまだ良かった。
だが、奴隷商にも良い奴隷商と悪い奴隷商がいると言われるように、今回は彼女達は後者の方にあたってしまった。
結果から言おう、彼女達は殆どが劣悪な環境へと送られ、なまじそれまでが良い環境だっただけに心を壊してしまったり、果ては自殺する者も現れる事になる。
そんな中、少女は外国に売られる事になり、船に載せられ……そして船は嵐に巻き込まれた。
激しい嵐で船はマストはへし折れ、舵は破損し、ただ漂うだけの状況に陥った。
次第に食料も水も底が見えだし、まず切り捨てられたのは奴隷達。
大半は食べる物もろくに与えられず、飢えて死んでいったが、ここでも彼女の悪運ぶりは発揮された。
最初の嵐の際、彼女を柱に繋ぐ鎖を固定していた留め金が壊れていたのだ。
長年使われていた留め金が腐食していたのか、或いは単なる偶然か、それは分からないがそのお陰で他の奴隷達と異なり動く事が出来た。いちいち鉄格子の檻など設置していては費用がかかるとばかりに押し込められて、留め金で固定されていた為に彼女は案外あっさりと部屋から逃走する事が出来た。要は彼女は他の奴隷達を見捨てて、自分だけが助かる道を選んだのだ。
助ける余裕がなかった、そう言ってしまえば気楽だろうが……。
いずれにせよ船員達はもう奴隷になど構っている者はおらず、体力の消耗を防ぐ為に動き回る事を減らしていたという幸運も味方して何とか僅かばかりながら食料を確保。間もなく再び嵐に巻き込まれた事で水の補給が為された事もあり、後はどこかに流れ着く事を祈るだけ、だった。
事態が急変したのはそれから間もなく。
『おい、この嵐って……』
『まさか、あの島か!?』
一際騒がしくなった後、急に慌しくなった。
この時は知る由もなかったが、あの嵐の島の事は潮の流れ故に一度入ったら二度と戻れぬ島として船乗りの間では有名だった。
その前兆となるのが上空渦巻く嵐の兆候。
救命ボートという小船で逃げ出すのは危険だが、同時にあの島が見えるという事は小船で到達出来る距離に人の住む地があるという証でもあった。それ故に「二度と抜け出せない島に入るよりは」と彼らは命がけの脱出を試みたのである。
静まり返った船の中、隠れていた場所から抜け出した少女は船員の一人とばったりと出くわした。
本来なら、そこで終わり。
男は奴隷商に雇われていた護衛の一人だったのだが、船乗りでなかったが故に危機感が薄かった。つまり、島の事を詳しく知らず、船員達がそこまで怖れる理由も分からなかったのだ。だからこそ、忘れ物に気付いて短時間だからと誰にも言わず部屋に戻るような真似もしたのだろう。
そして、置いて行かれた。
彼が再び甲板に上がった時、救命ボートは全て出払った後で彼が船を離れる手段は最早存在しなかった。
だから、だろう。
少女に手を出さず、食料を二人で分け合ったのは。
結局の所彼も一人置いていかれて寂しかったのだろう。
……その事を嵐の中、二人で耐えている時に聞く事が出来た。そう、遠くを波に弄ばれながら必死に逃げ救命ボートが次々と襲い来る巨大な波によって転覆し、波間に浮かぶ頭が一つまた一つと消えうせ、誰かがこの船に生きて戻って来る事は最早ありえないという事実と共に。
そうして二人で生き延びて数日。
激しい衝撃と共に船は波に弄ばれる動きを停止させた。
最初の衝撃の時、遂に私達は船も終わりかと思ったものだが、何時まで経っても動き出さない船にもしかしたら座礁したのかもしれない、と彼が呟き、様子を見に二人で出た。私も出たのはもしかしたら船が沈みだしている危険もあったからだ。いや、一人で死体が多数転がる(既に生き残っている奴隷達もいなくなっていた)船に取り残されるのが怖かったのもあっただろう。
そうして、船外に出た私達が見たのは横向きに岩に突き刺さるようにして座礁した船と、その目の前に広がる噴煙を上げる島だった。
「……野鳥や何か動物がいるかもしれん。様子を見てくる」
そう言って、男は一人様子を探りに島の奥へと歩いていった。
私もついていきたかったが、それには一つ問題があった。
あの船に放り込まれれていた私には靴が与えられていなかった。そして、船内では靴がなくても何とかなった。
もちろん、革靴と呼べる類のものはあったが、それらはいずれも大人の男性用のものであり私に合うようなサイズのものは存在していなかった。
そして、島は、少なくとも海岸に関してはごつごつの岩だらけ。頑丈な革靴を履いている彼はともかく、私があそこを歩くのはこのままでは難しいであろう事は傍目にも明らかだった。それ故に彼が探っている間に私は靴を手直しする事にした。
幸い、というべきか、靴が傷む可能性はあるからか簡単な補修の道具ぐらいはあったし、裁縫の技術などもメイド時代に仕込まれていた。
そうして、作業をしながら待っていた時、私の脳裏に声が響いた。その声は逆らうなど考えさせない程の重圧に満ちたもので……外へと出た私はそこで出会ったのだ。
そう、竜に。
そして、私の今を決めた運命とでも呼ぶべき出会いでもあった。
竜、人が彼らと交わる事は少なくとも私の知る限りは殆どない。
私が知るのはほんの僅かな事。
一般に竜と呼ばれるものにも下位と上位の存在がいる事、下位は比較的強い動物レベルからもっと強いものまで様々ではあるが大なり小なりの犠牲を覚悟すれば人に何とかできるレベルだが、上位の竜やそれに殉じる存在となればまず人に太刀打ち出来るレベルではないという事。
ただ、私にとってはどちらでも大差ない。
きちんと訓練を積んだ兵士や冒険者であっても犠牲を覚悟しなければならない相手、そんな相手に単なる商人の家の出であるメイドが太刀打ち出来る訳がなく、下位だろうが上位だろうが自分を殺せる力を持っているという現実には変わりはない。
ただ、一つ気付いた事を言うならば、目の前の竜はどう見ても下位の竜と呼べる相手ではなかった。
淡い銀色にも見える白い毛並みを持つ四足歩行しているのに頭がかなり大きなこの船の甲板よりも上にあるような威厳すら漂わせる竜が下位などと信じたくもないし、こんな相手に街で見かけた兵士が多少束になったぐらいで敵うとも思えなかった。
事実、後に知った事だが相手は竜王、上位を更に上回る最高位に近い竜だった。
でも、その時はもう自分の悪運もこれまでか、とそう思ったものだった。
……幸いな事に竜王は当初、自分達に関わらないなら見逃そう、そう言おうとしていた。
今から考えれば、ある種の絶望ではあっただろう。
誰もいない島で一人生きるという事がどれ程辛い事か……きっとあの後待っていたのは話相手もおらず、周囲が荒れ狂う海故に新鮮な魚なども滅多な事では期待出来ず難破した船から食べれる物を漁りただ生きるだけの日々だったはずだ。何時かは心が折れ、自ら死を選んでいた事だろう。
そんな運命が変わったのは横から掛けられた声、いや、鳴き声、だろうか?
「きゅい?」
当時の私に竜の声など分かるはずもなく、彼もまた生まれたてで人の言葉を知るはずもなく……そんな鳴き声に振り向いた私は……硬直した。
太陽の光を遮られた空の下でさえ内からの輝きを宿すような赤く半ば透き通った結晶でその身を覆った小柄な竜。
恐怖ではなく、魅入られた事で私は動けなかった。
見た瞬間に、その美しさは私の目を釘付けにし、魅了したのだ。
お互いに見詰めあう私に何か思う所があったのか、竜王は私が世話を手伝うならば、という話へと方向を変え……私は頷いたのだった。
どうやら私の悪運はまだ尽きていなかったらしい。
そう思えたのはもうしばらく経っての事だったが、それから私を待っていたのは何とも困惑し、一時は命の危機にさえ晒された日々だった。
別に殺されそうになった訳ではない。
相手は甘えて、或いはふざけてじゃれついてきただけの話なのだと相手のどこか甘えたような声や態度から分かるようにはなっていた、が……同じ人の子供ならともかく、相手は子供であってさえ既に大型の牛や馬に匹敵するようなサイズになっていた。そんな相手がふざけて体当たりしてきたらどうなるだろうか?
答えは大怪我をする。
下手をすれば死ぬ。
頑丈さ、硬さで言えば岩にも匹敵する相手が馬車や馬並の速度で突っ込んでくるのだ。当たり所が悪ければ本気で死ぬ。ましてや地面はゴツゴツした岩だらけでショックを和らげてくれるような場所ではないのだから尚更の話。
実際、ギリギリで長女と次男の行動に気付いた母竜が空気のクッションを私と彼らの間に、更に吹き飛んだ私を受け止めるべく地面にも展開してくれていなければどうなっていた事か。
これでも同じ竜の兄弟姉妹同士ならば精々が所当たり所が悪ければ「いたっ」と顔をしかめるだろう、ぐらい。これで子供同士のじゃれあい程度というのだからどれだけ竜と人との間に差があるか分かるだろう。
自然とその後は私はその辺りを理解してくれる長男と末妹のどちらかの傍にいるようになった。
母竜の傍が一見すると最も安全なように思えるかもしれないが、彼女の巨体では当人の感覚で軽く当たっただけでもこちらが吹き飛びかねなかったのだ。
結果として自然と私は二体とは仲が良くなると同時に、他の三体とは距離を置くようになっていった。
竜の世話自体はそう難しい話ではない。実の所、ご飯の世話にしたって私がするような事はない。竜の子供達は初期は母竜の乳を飲み、やがて間もなく彼らは何も食べなくなっていった。これはずうっと後の話だが、彼から聞いた所によると息吹を通じて自然の属性を取り込む事で空腹を感じなくなっていくのだという。だから、属性を持つ竜は自分の属性のある領域で暮らす。氷竜が北の地に住まうのはそこならば特に獲物を必要とせず生きられるからであり、水竜らが水のある領域で暮らすのも同じ理由。風竜などが広範囲で暮らすのは風というどこにでもある属性を持つ故、これは火竜もまた同じ事で、彼らの場合は陽の光を己の属性として取り込んでいる。この為、火竜は夜は寝ている事が多いが、星や月の光でもある程度満たす事は可能だし、一月やそこらで空腹になる訳でもないので別に行動不能になる訳ではない。
その一方で属性を持たない大半の竜は他のもので腹を満たす必要があるからそれぞれの育った地に応じて草や肉を喰らうという訳だ。
その言葉を聞いた時には「道理で全属性を持つという彼が(味が好みという嗜好品以外)何も食べない訳だ」と思ったものだ。
結果として私が求められたのは掃除だった。
しかし、食事をしなくなるに連れて彼らは排泄自体しなくなっていってしまったので基本は鱗や竜毛を払い、寝床を整えるという殆どベッドメイク程度の仕事が主だったのだが……。
たまに行う仕事で大変だったのはブラッシングだ。元々はこの毛並みなら、と思い末っ子である女の子にしてあげた所凄く気持ち良さそうにしているのを見てして欲しくなったらしい。気持ちが良いと行う事になったのだが……何分母親竜はあの巨体だ、長時間かかる大仕事だった。
まあ、私の食事を調達してきてくれるのは母竜である竜王様なのだからその辺は仕事と思って頑張った。毎日要求されるのならともかく、たまに、であったし。普段は暇なので逆に「本当にこれでいいのだろうか」と不安になる事もあった私としてはむしろやりがいがあったとも言える。
そんなある日、子竜の一体の姿が見えなくなった。
一番体が大きくて、強面だった聞いてた限りは女の子の竜が……。
溶岩の中に潜り込んで、流されたのだろうと聞いた。
人の場合は探すだろうが、竜は探さない。これもまた独り立ちと看做すらしい……。最近は接する機会が殆どなかったとはいえ、私などは大丈夫なのかとしばらく心配していたものだけれど……そして、更に一年が過ぎる頃には更に一体が巣立ちした。
だから最後の頃は仲の良い二体だけでなく、一体だけとなった事もあって氷の竜という子とも割合また一緒にいるようになっていた。
一時は二体と三体に分かれていたのだけど、三体のグループは一体だけになっちゃったものね……。
最後の頃は三体がよく一緒に猫団子ならぬ竜団子になっていた。或いは近い内の別れを察していたのかもしれない。
「……行っちゃったね」
そして今日、彼らもまた巣立ちを迎える。
白い子だけはお母さんが遥か北方へと連れて行くそうで一緒に飛び立っていったけれど、金色の女の子は自分で飛び立って行った。
『準備はいいかい?』
「……うん、大丈夫」
彼の確認の声に体を固定する鎖とロープを確認する。
大丈夫だとは思うが、念の為にこうして今、彼の体に私の体を固定している。これから私は始めて空を飛ぶ。
初めて出会った時は大型犬ぐらいだった彼は三年少々で随分と大きくなった。今ではようやっと巣立ちの時だというのにちょっとした小屋程度の大きさがあり、私ぐらいなら問題なく乗せて飛ぶ事が出来る。
人の世界にこれから私は戻る。
幸い、というか彼は当分の間私と一緒に来てくれるそうだ。私の故郷では少なくとも竜は畏れられてはいたが、人が従える竜はそれなりの数が存在していた。もっとも私が遠目に見た竜はいずれも下位と呼ばれる動物のような火も吐けない竜だったし、私の場合は竜を従えているのではなく心配して来てくれるだけなんだけど……。
そして飛び立つ。
来る時はあれだけ大きな船に乗っていてさえ今にも壊れそうな揺れ具合に恐怖しか感じなかった嵐。
けれども彼と共にある限り、自然は彼も私も傷つけようとはしない。激しい風も叩きつける雨も私の体には届かず、飛び立った後私は島を落ち着いて見る事が出来た。
ああ、あれは私がこの島に来た時の船……その残骸だ。
三年の間荒れ狂う海の晒されていた船はもう一部の大きなパーツが残っているだけで、バラバラになり流されてしまった。
あれから流れ着いた船もあるけれど、生きている人で辿り着けた人は誰もいなかった。
そんな島だけれど、私にとっては命を救われた島でもあった。そして……さようなら。
声に出さず、別れを告げ、そして彼が一気に速度を上げて離脱する時はもう島を振り返ったりはしなかった。
そしてこれが、私の、キアラ・テンペスタの始まりだった。
良い奴隷商人と悪い奴隷商人?と思われるかもしれませんが、この国の奴隷商の内情故です、そこら辺は次回か次々回にて
今回で誕生編相当部分は終了、次回から幼竜編……といっても既に結構というかかなりデカイですが彼の活躍も始まります
某戦隊の決め台詞じゃありませんが派手にいくぜ!




