昔語り後半
『いや、彼ら自身は近くに同胞の船などがいる可能性に賭けたのだよ』
例え、それが奇跡に等しい可能性だったとしても、それしか彼らが助かる可能性がない。
そう思ったからだった。
『だが、それは偶然に偶然が……お前達の言う所の奇跡によって宇宙の外に偶然いた存在に届いた』
「「「「「「「……はい?」」」」」」」
『『『『???』』』』
ふむ、竜王達も首を傾げているな。
……お前も少しは関心を持ったらどうなんだ、ルナ。
『別に神とかそういうものではない。ただ単に宇宙という枠の外に生きる生命だというだけだ。力そのものはより高次元の存在でもあったようだから、神のように見えるのかもしれないが』
紙の上に存在する二次元の世界の住人にとっては、紙の上に自由に線や絵を書き足す存在は神に思えるだろう。
『それはどこから声が届いたのか確認するために、少し目を向けて、力の欠片を送り込んだ』
それこそが我々竜や龍の祖だ。
そう語ると竜王や龍王達も驚いていた。
『そうして、その送り込まれた欠片達は気紛れで、その届いた声の大本を助け、惑星を調律したという訳だ。お前達の祖が生きられるようにな』
地は重力を弱めた。
風は暴風を制御した。
火は熱を蓄えて、星深くへ潜った。
そして、水は地表から吹き飛ばされていた大地を水で満たし、溶け込んだ毒性を奥底へと沈めた。
かくして、星は人の祖が生きられる大地となった。
『彼らがいたのは大本の存在からすれば、僅かに視線を向けた程度の一瞬。だが、この宇宙の存在からすれば何百年という時間であり、その間に彼らは自分達の後継を育成し、ゆだねようとした。結果、私が生まれ、管理を引き継いだ訳だ』
そうして、私自身がより上位次元に上がる事になった故に、今は後継の竜王や龍王達に任せている。
『分かったか。人族達よ。お前達が我らをどう見ているか分からんが、そもこの星にお前達が生きていられるのは我らの祖の調律のお陰である』
「……………」
『だが、その事を恩義に感じる必要もない。何しろ、彼らと我らでは大本が違うのだからな。だが、一つだけお前達は知らねばならぬ事がある』
それはこの星の細かな調律は今でも為され続けているという事だ。
長い時間をかけて、惑星は大分安定した。
だが、惑星の本来あるべき本質は実の所変わってはいない。
何故、この星が元々、灼熱の暴風惑星と化していたかといえば、星自体の位置によるものだ。恒星によって熱と重力双方で莫大なエネルギーが与えられた結果、大気が攪拌されると同時に熱を蓄えて、暴風吹き荒れる灼熱の惑星が誕生した。
お陰で、水は水素と酸素に分解されて、軽い水素は宇宙空間へと飛んで行ってしまった。
『今もなお、この惑星は隙あらば本来あるべき姿に戻ろうとしているのだ。意味は分かるな?』
おお、蒼白になっているな、人族は。
まあ、我々が管理を放棄したからといってすぐ戻る訳ではない。
とはいえ、本来あるべき姿から外れているのも確かだ。数十年も経たぬ内に人族が暮らすのは極めて困難な状態に陥るのは間違いなかろうな……。
……いっそ、恒星系の他の惑星の位置もずらして、調整すべきなのだろうか?
「HD 189733b」という惑星があります
これはガス状惑星なのですが、こいつを地殻を持つ地球型惑星にすれば大分近いのではないでしょうか?青い惑星なのですが、地表温度は1000度以上で、溶けて上空で冷やされたガラスの雨が時速7000キロで降り注ぐという地獄のような惑星です(色自体は綺麗な青だそうですが)
ちなみにこの星の風の速度は秒速2km、地球の音速が秒速340mという時点でヤバさが分かると思いますw
灼熱の惑星というと太陽系では金星があるのですが、金星は上空こそスーパーローテーションと呼ばれる高速の風が吹いているものの、地表では大気圧が高すぎて逆に風が物凄く弱いんですよね
かといって、水星ですと大気が薄すぎるのでやはり、太陽系内惑星ではこの星に似た惑星はなさそうです




