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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
208/211

裁きの場

仕事開始前に投稿

 実の所、事態を把握、停止を行う事を竜王達が全力で行った場合、それこそ人の知覚すら不可能な段階で行う事が出来た。

 人が誰一人気づく事なく、「あれ?失敗か」と思わせる事だって出来た。

 しかし、それでは人が異常の発生に気づかない。だからこそ、竜王達の感覚ではえらい時間を置いてから停止を行った。

 そうして……。


 「……ここは、どこだ?」


 企業家の一人がそう呟いた。


 「機械が何かトラブルでも起こしたのかね?」

 「いえ、機械が爆発した訳ではないと思いますし、停止してもここまで完全な闇にはならないはずなのですが……」


 別の一人が研究者に問いかけるが、研究者の側としても首を傾げるしかない。

 出力炉が緊急停止したとしても別系統のバッテリーによって最低限の明かりと維持システムは動くようになっているはずだからだ。つまり、これは何等かの想定外の異常事態だと口にしてから気づいて、慌てて周囲を確認しようとしたが、すぐにもっと異常がある事に気が付いた。


 「……ここ真っ暗のはずですよね?」

 「む?そうだな、周囲は真っ暗だな」

 「何で、お互いの姿ははっきり見えるんでしょう……」


 そのやり取りに周囲も気が付いた。

 本当の闇というものは何も見えない。

 科学と、その作り出す明かりに慣れた人の目では森の中、月の光も届かない真っ暗闇に一歩足を踏み入れれば、自身の手元足元ですらまともに見る事が出来ない。なのに、周囲は黒いのにそれぞれの人の姿ははっきり見える。ただ、黒に塗りこめた部屋という可能性もないではないが、こうも姿がはっきり見えるという事は明かりがないとおかしいのに頭上含めてどこにも光源らしきものが見えない。

 これはどういう事かと首を傾げかけた時、その声は響いた。


 『よく来たな』


 はっとした様子で全員が視線を向けた、その先には――。


 「りゅ、竜?」

 「いや、ただの竜ではあるまい、竜王?」


 赤く美しい結晶のような鱗を全身を包まれた巨大な竜がいた。


 『この場合、人ははじめまして、というのかな?私は君達が赤の竜神、と呼ぶものだ』


 全員が息を呑んだ。

 竜神、その存在は知っているが、今ではその姿を知る者は誰もいない。

 聖竜教という世界最大宗教がかつて聖地に舞い降りていたというその似姿を残しているし、その存在が知られる【祖霊】からも伝えられている。もっとも、内心ではさすがに「本来は宇宙全体をその手に掴む程の強大な存在」という事に納得していない者は一定数いたが、それはさておき、そんな存在が眼前にいるという事に普通なら研究者達は色めきたつはずだった。

 時に学者バカという奴は信じられない事を仕出かす。

 だが、それも正真正銘、彼らからすれば神としかいいようがない上位者達の前では消えるものらしい。

 

 『ではこれより裁きを始める』


 裁きとはなんだ!?

 そう問いかけたかったが、周囲に位置する気配がその口を閉じる。

 一際巨大な蛇体を持つ龍、黄金に輝く毛並みを持つ竜、岩山を思わせる竜、氷の球体であるかのような竜。

 更にそれ以外にも背後に更に怖ろしい気配を持つ何かがいたが、誰もそちらに視線を向けようとはしなかった。……それは正真正銘、怒りの殺意であり、それと真正面から向き合った時、自分の心臓が動いていられるか、自信がなかったからだ。

 それは企業家達でさえそうであり……とっくに野生というものを失ったと思っていた彼らにさえそう感じさせるほど、背後から感じさせる気配は怖ろしいものだった。

 そして、後ろに視線を向けないという行動は必然的に竜神と向かい合う状況を作り出してもいた。

 

 『さて、まずは何故、お前達が裁かれるのか、それを説明するとしよう』


 お前達も問答無用で裁かれるよりはよかろう。

 そう告げられて、裁きの場は始まった。 

 

4月頭から新しい職場で仕事です

その前に投稿です


ちなみに背後で殺気立ってるのは言うまでもないかもしれませんが、料理を中断して呼び出されたルナですw

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > しかし、それでは人が異常の発生に気づかない。だからこそ、竜王達の感覚ではえらい時間を置いてから停止を行った。 この「えらい」は方言なので「長い」とか「とても長い」とかに変えたほうが…
[一言] > ちなみに背後で殺気立ってるのは言うまでもないかもしれませんが、料理を中断して呼び出されたルナですw あ、こいつら終わったな(゜ω゜)
[一言] ウポツでーす。 竜神様との対面人類史上初ヤゾ! おら、もっと喜べよ。(なお、内容) 生きて帰れればいいなぁ。
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