実験の最後、そして最期
どうもお久しぶりです
やっと一番厄介な所が終わり、徹夜も終わりました……
結果もほぼ最高の結果が得られ……るはずです、今分かってる範囲では
ただ、このまま上手くいった場合、異動による引っ越しが必要になるのでその時はまた一時更新が出来なくなる可能性が……
さて、わざわざ実験ドーム施設自体を移動したそこには、後に大きな問題を引き起こす道具がそこにあった。
「気象兵器です」
気象というものを操る事が出来れば、その影響は巨大なものがある。それは良い方向にも、悪い方向にも使う事が出来る兵器だ。
例えば、雨を操作するとしよう。
自由に雨を降らせる事が可能となれば、旱魃というものとは無縁になる。
だが、それはしょせん別の場所から雨雲を持ってきているだけだ。何せ、蒸発する水分は変わらないのだから、どこからか持ってくれば、どこかで奪われる者がいる。
だが、調節は可能だろう。雨が降りすぎて困っている地域だって存在している。そこから雨が全然降らなくて困っている場所へと雨雲を運ぶ事が出来れば、救われる者は大勢いるだろう……そして、それを可能とする兵器を握っている者達は……彼らの生殺与奪の権利を握る。
「しかし、苦労しました、こいつの開発には」
「元々開発は進められていたという話でしたが……」
そう、それもまた事実だ。
「施設や実験データは失われました。しかし、幸い研究者達は生き返らせてもらえましたからな……彼らの頭の中にある知識を動員すれば相当なレベルまで復元出来たのも事実です」
データ自体は失われても、『こんな実験をしたが、失敗した』といった記憶は残っている。
となれば、当然そんな実験は省略出来る。
上手くいったという記憶のある実験なら、そのまま推し進める。
そうやって完成した実験機をここに持ち込んだ。
「……正直、実験機もろくに稼働させてないので不安はあるのですがね」
こんな場で使うのなら、せめて実験機ではなくまともな実証機を、と考えるのは当然だが、本格的なものを下手に使う事が出来なかったのもまた事実だ。
原因は上手くいった場合の、周囲への影響が半端ではないという点にある。つまり、一発で何かやらかした事がばれてしまうのだ。
「そういう意味では、この中央大陸は人が少ないですからな」
少なくとも、何かと疑い探ってくるマスメディアは存在しない。
「では、いよいよ稼働ですな……」
「楽しみです」
「これが予定通り稼働すれば、少なくとも人の世界では有効に活用できるでしょう、ええ、有効に……」
さすがに竜王をどうこう出来るなどとは誰も思わない。
だが、竜王の権能の一端に手を触れる事は出来るかもしれない。そう思うのも事実だった。
「では始動」
指示に従い、技術者達が装置を動かし始める。
この装置、影響も巨大だが、本体も実に巨大だ。
ドーム施設は巨大だが、装置自体はその全体に広がり、地下室も使い、高さ自体はさすがに天井までは届かないにせよ結構な高さがある。少なくとも巨大さ自体はこれまでで随一と言えた。まあ、魔法再現実験はほぼ個人の能力頼りで観測機器が重要。
竜モドキの強化実験に至っては研究そのものが途中で頓挫。
それらと大きさを比べるのはいささかならず間違っていると言われたらその通りというしかない。
「始動します!!」
そう責任者が声を上げて、スイッチを押し込み。
システムが稼働を始めた。
このドーム内部にあるAIを組み込んだ部分はいわば人の体で言えば頭脳部分にあたる。では、体にあたるのは?
それは当然、外部に設置されている。
全力で稼働を始めたそれらは第一の発表である魔法研究の成果も組み込まれている。
……そう、弱くても魔法の効果自体は発動する。
研究者らは、そう思っていた。
だが、ここに一つの勘違いが存在する。
魔法とは常識によって良くも悪くも影響される。
なまじ科学というものに触れ、生身でトラックとの正面衝突など耐えられるはずがない!と考える者が身体の強化魔法を使えばその通りになり、逆にこの程度なら防げる!と考える者が使えばそうなる。
中央大陸の部族の者達は幼少の頃から親達が魔法を使う姿を見て育ち、魔法というものがどんな力を発揮出来るかを見て育っている。だから、彼らは強力な魔法を行使出来、生身で武器と体を強化し、最新鋭戦車と真っ向から激突して力でねじ伏せ、両断してみせる。
一方、他の大陸出身の者達は魔法を弱いレベルでしか発動出来ないが為に極力増幅可能なようにシステムを組み、それを行使する者として専用のAIを開発した。
そう、この装置を稼働させるAIは中央大陸の部族の者達同様、自分が魔法を使える事に疑念を抱いたりなどしていなかったのだ。
一方、この装置を作った技術者達は彼ら自身が発動可能なごく弱い魔法を基準に、それを増幅して、理論上は気象に干渉可能なレベルにまで引き上げた。
稼働実験であり、一時的にこの地域に雨を降らせるだけのはずだった魔法は、技術者達が基準とした自らの魔法、その数千倍以上のレベルで発動し、それが増幅され――それを引き起こした。
という訳で、最後の実験が動き出しました
かくなる次第で開発者たちの想定を超えた事態が……




