実験第二弾……予定だった
遅れまして申し訳ありません
職場で三名も急に人が消えたので余裕がありませんでした……
当人の責任を問われて逆ギレして辞めたのもいれば、単純に異動した人もいます。ベテランの異動は後がキツイ
続いて出てきたのは……。
「ここにいるトカゲ達を使う実験でしたな」
そう言われて視線を集めた男は、だが気まずそうな顔だった。
「申し訳ないが、あれは中止にしたのだ」
「……何故です?」
簡潔に言えば、倒した竜モドキの一部を培養。
生体兵器として利用するというものだった。
人のクローニングはさすがに禁止されているし、通常の生物ではクローニングして強化しても限界がある。より正確に言うなら彼らの頭の中身は変わらないので、クローニングしても調教はまた別問題だし、かといって彼らの頭の中に電子制御を組み込むには小さすぎる。
そもそも他の地域では大きな体の生物は動きがゆっくりになり、中型の生物では装備させられるものに限界がある。
だが、竜モドキなら?
竜モドキならば生半可な火器は通じないどころか、下手をしなくても戦車ですら破壊する。
ならば、強化するだけの価値はある、と思われたのだが……。
「実はクローニングした個体は魔法が使えないのかまともに立つ事も出来なくてな。かといって連中に魔法を教えるような相手もいない為、研究を断念したのだ」
「なるほど、そうだったのか……」
「それならば仕方ありませんな」
などと周囲は納得したようだが、当人は内心恐怖に震えていた。
実際にはそんな事ではなかったのだ。
――――――――――
「どういう事か説明してもらおう」
私は酷く困惑していた。
いや、この場にいる技術者含めた全員がだ。
圧倒的な怖気、恐怖そういうもので私の心は一杯だった。当り前だ。生身で最新鋭戦車を真っ向から粉砕するようなバケモノからの怒りを向けられたらそうもなる。せめて、間に頑強な檻でもあれば話は別だが、相手との間には何もないのだ。こちら側にも銃を持った兵士あがりの傭兵はいるが……そんな連中で相手どれるなら誰も苦労しない。
……ちなみに戦車に関しては最新鋭のものが出来る度に、ここの地元住民と契約して対戦してもらっているのだが……未だに移動時間も含めて5秒もった試しがない。もちろん、戦車の方が。
「な、何か問題があっただろうか?」
そう、今回の為に契約した地元住民の戦士に培養し、強化したトカゲを相手どってもらったのだが……。
ちなみにやる前は自信満々だった研究者達は一刀の下に斬り捨てられた事で殺意を向けられるまでは呆然としていた。
「問題?……大ありだ。貴様らの出してきたあれは竜に手を加えたものだな?」
「…………そ、そうだ!正確には以前に買いとった竜の細胞を培養して作りだしたものでいわば人工の竜だ!」
黙っていたかったが、殺意が更に増して、おまけに話をしている代表以外の他四名の地元民達が一斉に武器に手をかけたので慌てて叫んだ。
そう、これ以上黙っていたら間違いなく殺される!と僅かに残った人の本能ともいうべき部分が強烈に叫んだからだ!……物語でそうした展開を読んだ事はあるが、本当にそんなものが存在する事も、私が実体験する事になるとは思わなかった……。
おかげで全てベラベラと口を開いてしまった。
……もっとも、この一件が終わった後で後ろを見てみれば、残った全員が気絶したり、腰を抜かして大小洩らしていたりと、失禁していたが立っていた私が一番マシだった上、全員から純粋な尊敬の視線を向けられたのだが……。
「そうか……ならば最初ゆえ一言だけ忠告しておく。二度とやるな」
「わ、わかった……」
一言でも躊躇っていたら間違いなく全員の首が飛んでいただろう、そう思えるだけの圧倒的な死を濃厚に感じる事が出来た。
「貴様らには竜は単なる動物なのかもしれんが……我らにとっては大きな意味を持つのだ。それを弄ぶなど断じて許さん。もし、次に行ったなら……」
全部族でもって、この都市を叩き潰すからそう思え。
そう告げて、彼らは怒りをまき散らしながらも、その日は帰って行った。
もちろん、即時全研究を破棄したのは言うまでもない。というか、命じた途端に研究者全員が、それを行う為にすっ飛んでいった。世間一般ではマッドサイエンティストと言えるような奴もいたんだが……そんな連中でさえ研究がどうでもなるぐらい恐ろしかったらしい。
(ああ、もう二度とあいつらにはかかわりたくない……)
正直、今回の研究発表が終わったら、引退しよう。
そう決心した私だった。
研究者達に対しては部族の人達は魔法をこっそり使ってます
脅しを強化する為のものだったんですが、彼らは自分達の死すらどうでもいい程のマッドではなかったようです




