実験開始
最初の実験はまだ穏やかですが……
「さて、皆さん、各自兵器に関しては?」
「ええ、三種類。無事持ち込み完成しましたわ」
中央大陸に持ち込まれた兵器の内、既に二つは着々と準備が進んでいた。
「一つは大掛かりですからな」
最後の一つだけが遅れていた。
これは口にされた通り、仕掛けが大掛かりである事が大きい。
中央大陸の借地には都市部の他に各国家に割り当てられた土地があった。
中央大陸ではスパイなどが非常に限られた数しかいない。
何せ、元より定住している者が限られる。見知らぬ人間がいたら非常に目立つという事だ。
現地協力者を確保しようにも、現地住民はまず彼らに関わろうとしない。
そうなると狙いは買収で現地研究員を買収、などになるが……この大陸ではいわゆる紳士協定を各国が結んでいて、そうした行為は行っていない。これは以前に今は崩壊した中小国らによるスパイ行為が発生した瞬間に全員が中央大陸から母国へと転移させられていた事に起因する。
それ以降、その国の人員は中央大陸へは一切近づく事さえ出来なくなった。
面白いのはギャンブルなどで作った借金が原因で金を欲して買収された者は、裏切った母国へではなく、買収された国へと飛ばされ、反面病気の子供を助けたくて金が欲しいとなった者は母国へ、そして脅迫や人質によって強制的にスパイ行為を行わされた者は中央大陸にいたままだったという事だ。
この時はスパイを行おうとした相手が帝国だった為、この転移を「竜神様のお裁き」と判断して、三者の内最初のケースは懲戒免職、二番目は降格と三か月の減給処分、三番目は訓告という処分になっている。不正行為を行った者が通常認める事などせず、それこそ長期の裁判や警察沙汰になる事も多々あるが何しろ今回は最初に処罰した相手が竜神とみなされていた為にさすがにそうした行為を行った連中も抵抗はせず、素直に処罰を受け入れた。
こうした事によって自然と結ばれたのが紳士協定だ。何せ、それを行った企業だけでなく、その国の人員自体が一切中央大陸へと近づく事さえ出来なくなったのだから(中央大陸に足をつけたと思った瞬間、母国に戻っている)、どこの国も企業も厳しい規定を設け、それを無視した人員は……まあ、良くて懲戒免職確定だった。
さて、こうした結果、各国や企業は積極的に中央大陸の租借地に極秘研究施設を設けるようになった。
何しろ、スパイされる危険性がないのだから、利用するに決まっている。どんなに厳重にした所で普通ならばスパイ行為を完全に防ぐ事は不可能なのに、文字通りの意味で神の目で見張られているのだから、これほど信頼出来るものはない。
そうした中に、実験を実際に行ってみる為の区域がある。
通常は複数あるそれを今回、企業連合が共同でまとめて貸し切った状態にあった。
「では最初の実験を開始しましょう」
「影響が小さなものからですな?」
と言う訳で最初に行われた実験は……。
「まずは魔法再現実験ですな」
「楽しみです」
まず最初に行われたのは強化スーツを装着した人による魔法の行使だった。
中央大陸の氏族達は生身で戦車を粉砕する。
それを何とか再現しようというもので、彼らのまとう鎧は各種の強化装甲で賄おうというものだった。こうしたパワードスーツには魔法の補助を目的している面もある。もっとも……。
「……やはりそう上手くはいきませんか」
この分野は長らく研究されてはきたが、同時に上手くいっていない分野でもあった。
研究者によると。
『おそらく幼少期から魔法文明に接して育っていないと、魔法を扱う領域が発達しないのではないか?』
という事だった。
つまり、科学文明で育った大人が急に魔法を使おうとしても限界があるという事だ。
もちろん、無理ではないし、簡単な魔法ならば扱えるようになった者もいる、という例が確認されているが高度な魔法になるほどその数は激減し、生身で戦車と戦えるレベルとなると皆無だ。軍人や社員のみならず、治験扱いでアルバイトも用いているが、やはり結果は同じだった。
それを今回は専用開発したアシストスーツによって賄おうとした訳だが……。
「意味がない訳ではないんですがね」
「そうですな、しかし、これならば……」
各国が特殊部隊の訓練などに採用している、一部の者に限定的ながら魔法を使えるようにさせる、というだけで良い。
そう、各国共、一度は捨てた魔法を見直し、再度活用しつつある。
企業も魔法の活用を目論んで復活を目論んではいるが、やはり、あくまで補助的なものに留まりそうだった。
「まあ、大体予想通りです。次にいきましょうか」
アメリカの大統領選挙見てましたが、揉めてますねえ
一部では急にバイデンオンリーの票が十万規模で出てきたとか、いきなりバイデン優位に転じた州で有権者数を超える票数になってるなんて話も出てきてますし、間違いなくトランプ陣営は納得しないでしょうから選挙後、裁判沙汰になるのは確定でしょう。でも、それでトランプ陣営の意見を認める判決が出れば、今度はバイデン陣営からの抗議が出るでしょうし、当分アメリカは大揉めに揉めそうですね




