とある番組(後編)
「さて、ごく最近の話ですが、大きな展開がありました」
と言われますと。
「皆さんは復興の中、空の彼方へ飛翔物を飛ばす事に成功した話はご存じだと思います」
ええ、知っていますとも!あれは感動ものでした。
「そうですな。我々も教義とは関係なく、感動したものです」
「ええ、まあ、あれが多額の資金をつぎ込んで建造された理由は無関係とは言えませんが……」
(司教様苦笑)
そうですね。
民衆からの突き上げが酷かったのが大きかったとか……。
「ええ、やはり水の壁の恐怖が忘れられなかったのでしょうね。宇宙への進出があれで一気に加速した面があります」
「分からないでもありませんな。あれで我が教団に救いを求める者も大きく増えましたから」
ああ、確かに……帝国の人には分からない人も多いと思いますが、世界のほかの地域で見ると……。
ええと、それでお話を戻しますが、どのような展開があったのでしょうか?
「ああ、そうですね。実は今回、月を観測する事が出来たのですが、そこに奇妙なものが発見されまして。ようやくそれに対して確信が持てたのです」
ほう、変わったもの、ですか?
「ええ、人工物です。それも相当な大型、おそらくは何等かの船ではないかと」
「船ですか?」
船!?
「ええ、船です。宇宙を進む船ですから、宇宙船と呼ぶべきですかな?これが衛星にて観測されました」
へえ……誰が乗ってたんでしょうね?
「相当古いもので当初は自然物を見間違えたのではないか、という声が多かったですね」
パレイドリア現象ですか?
「まあ、そんな感じですね。それっぽい形を自身の感覚や経験から顔に見えたり、道具に見えたりする訳ですが、今回も当初はそれだと思われたのですが、探査機に搭載されていたローバーが近くまで寄る事が出来た結果、違うと判明しました」
何というか、随分と色々な機能が搭載されていたんですねえ……最初だともっと簡単なものだと思っていました。
「おや、ご存じなかったんですか?」
ええ、史上初の打ち上げ成功や、探査を開始する事は見ましたが、実際にどの程度の性能があって、どんな探査能力まであるかは……。
「なるほど。実の所、それは言われてましたね。最初なんだからとにかく打ち上げて、探査機能はカメラぐらいがあればいいじゃないかと……ですが、結局世論に押された政治家達の突き上げがありまして。その分、予算は潤沢に出たので、まあ、それならやってやろうとなった訳ですね」
強制的な部分があったのですか?
「いえ、単に私達もやってみたいという気持ちはあったんですよ。ですが、史上初ですから失敗する可能性も決して低くはありませんし、そこに多額の金がかかった探査機を積んだ場合はどうなるか、とか。あるいは純粋に初開発には色々お金がかかる訳でして。金は出すからやってくれ、というなら我々としても思い切ってやれたのでありがたかったですね」
ああ、なるほど。言ってみればこうですか?『金は出すから、この店で一番いい奴を頼む!』、と。
「ははは、そんな感じですね。……話を戻しますが、この結果、色々と判明しまして、まともに考えるなら可能性としては三つ、まず、私達の祖先はそもそも宇宙から来た、次に宇宙から来た者達がこの地の住民と混ざり合った。最後に竜達こそが宇宙から来た……もっとも、宇宙船の入り口のサイズなどからして最後はないだろうとされています」
とすると……。
「ええ、竜王達こそが先住民であり、私達はこの地に後から降り立ったのだと考えられるのです。少なくとも、衛星にそのまま放棄されている事や、宇宙を行く程の技術が元々はありながらそれらが失われた事などを考えると、おそらくギリギリの状態で衛星に不時着し、その後この惑星に降り立った最初の人々はもしかしたら竜の庇護を受けて、この地で生きていく道を選んだのではないかと……」
私達こそが外部からの来訪者だったという事ですか……竜と私達とはそもそも発祥の地も、進化の道筋もまったく異なると。
「そういう事です」
なるほど、実に興味深いお話です。
残念ですが、そろそろ時間のようです。本日はお二方ともありがとうございました。
とある番組の最終話をお伝えします
あ、竜ではなく、この前中後編の三本からなる番組話の最終って事ですのでw
次回からはまたストーリーに関わるお話を投稿予定です




