その後の世界の一幕2
物語というものは常に新しいものが書かれている。
絵画もまた常に新しいものが描かれている。
さて、そうした作品の中で、今一番熱いジャンルというか題材は竜であり、竜神だった。
「いや、こんな作品出版出来る訳ないでしょう!」
……なんて作品も、中にはある。
小説や漫画なら由緒正しい女体化ものから、竜神を完全なる悪役設定したもの。18禁方向に突っ走ったもの。
絵画であれば「これ竜?」という名状しがたきものと化したものや、正に人を喰らおうとしているもの。
実の所、テンペスタ自身は大して気にしないのだが、そこは人族には分からない。
となれば、当然人族の大半はこう考える。
「こんなん公開して怒らせでもしたら……」
幾ら温厚な人だとしても、賭ける対象となるのは自分や家族、友人の命だ。もしかしたら大丈夫かもしれない、と思う者がいたとしても「もしも」に賭ける奴は相当レアだろう。出版社や画商の場合、竜だけでなく、それを危惧した者に襲われる危険性とか、政府に睨まれて逮捕される危険性も考えねばならない。
しかし……。
「……ふむ……面白いな」
こういう「表に出せないもの」だからこそ面白い、収集する価値があると考えるような数寄者もまた一定数存在するのもまた事実。
そして、そうした連中は総じて金銭的に裕福な者が多い。
結果、いわば「禁制品」みたいな形でこっそり支援して、購入する者がいるお陰で、そうした作品を作る者達も生き延びて、また作品を作ったり出来ている。
こうした裕福な人族というのも、一時は相当減っていた。何せ、財産丸ごと津波で消滅させられた者も多かったからだ。
だが、ちょっと目端が利く者であれば資産の一部を連合帝国に避難させておいた者も多かったし、世界中に支店を持つ銀行に預けていた金に関しては連合帝国に残っていたデータから持ち主と認められて、お金の引き出しが出来た者も多い。
……まあ、ここら辺は「下手に厳密にやると所持金ゼロの者が多発する」という事で各国共同でかなり甘く設定していたというのもある。
金という奴は使ってもらわないと意味がない。
経済を回す為にも現金を持つ者を増やしたかったという面があった。もちろん、別の人族を騙っての詐欺も頻発したのだが、これらに関しては予想されていた件数より遥かに少なかった。
ばれた場合、即死刑という厳しい政策を取った国もあったし、騙すにしても情報が必要だ。そして、その情報が騙そうとする奴の手元には存在していない。そう、例えば……。
「お名前をフルネームでお願いします。お誕生日は何時ですか?」
こんな質問に対して必要な情報さえ、簡単には集まらない。
何しろ、役所も押し流され、ほとんどデータを一から構築し直している有様だ。
となれば、誰かから「名前、誕生日、どこの銀行に幾らぐらい預金があるか」まで直接聞きだすしかない。
知らない奴がそんな事を聞き出すのは簡単な事じゃない。老人を騙そうにも、周囲から不審な目で見られる事は必至だ。そうして、預金を騙しとったとしても目撃者が多数いて、追われる事になる事も多々ある。そうして、気づくのだ。
逃げる手段もろくにない、という現実に。
そう、電車も航空機も車も船も、それどころか自転車でさえ軒並み消え去ってしまった。
移動手段は自分の足だけ。
つまり、何日もかけて移動しても、やっと近隣の街へ移動しただけ、なんて事も普通に起きる。
かつてのように「他国へ高飛び」なんて事は既に不可能になっていた。
さて、話を戻すが、こうした各国共同での政策の結果、金持ちらを中心に金を取り戻し始めた。
人がいれば、連合帝国の商人や企業が商売のタネが転がっているとしてやって来る。
そんな中で、文化もまた復興していったのだった。
……もっとも、そうした文化が本格的に復興するまでには十年以上の月日が必要だったのもまた事実なのだが。
「兄さん、兄さん」
「うん?なんだ、ルナ。……それは本か?お前が料理以外に興味を持つとは珍しいな」
「ちょっと面白いから、ほら、これ兄さんが女性になって、18禁展開になってる」
「……いや、人族がそういうのを描く事は気にせんが、それを私に直接見せに来るのはどうなんだ?」
などという事があったと知る者はさすがにいなかったが。
精神的に参ってるみたいで健康診断の結果、不整脈になってました
早く精神的にも落ち着けるといいなあ……コロナがもう少し落ち着いて、転職でも出来んと難しいかな?




