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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
193/211

幕間:対海の龍王結末

 「……やれやれ。海の奴を宥めるのが一番面倒だった」


 海の龍王が激怒した瞬間、テンペスタは直接止めるのは確かに止めた。

 だが、だからといってその行いの全てを認めた訳でもなかった。

 精神と記憶、魂とでも呼ぶべき部分を瞬時に惑星全体で保護し、海の龍王の一撃が惑星の大半を洗い流した後、その肉体を構築した。

 ただし、記憶を失った訳ではない為、海の龍王の怒りと津波によって死に追いやられる瞬間の恐怖は残ったままだ。それでも精神が壊れないよう保護されてるだけマシといえばマシだが、トラウマだのPTSDだのになる者は確実に出るだろう。そこまではテンペスタも面倒見る気はない。

 復活自体は即座にやろうと思えばやれたが、海の龍王の気持ちも分かる。だからこそ、上の立場から我慢しろと命じるのではなく、きちんと説得した上で復活させた訳だが、その結果として一年近い時間が過ぎてしまった。幸いだったのは唯一無傷だった帝国はあちらこちらとの関係が一気に断たれた為に、国内で完結させる為の作業に必死で、他所に手を伸ばす余裕がなかったという事か。


 「お陰で余分な手間をかけずに済んだ」


 さて、やるか。




 ◆




 「え……」


 その日、世界各地でそれは起きた。

 

 「夢……?」


 そう呟いた瞬間、圧倒的なまでの怒りと恐怖がこみあげてくる。

 ボロボロになった軍艦の中で。

 残骸と化した建物の前で。

 崩れ落ちた高層ビルの間で。

 次々と人は目覚めてゆく。

 そして、彼らは理解する。

 自分達は助かった訳ではない。間違いなく、一度死んだ。なのに、今、こうして立っている。それを否定するには、正真正銘の死の恐怖というもの、死ぬ瞬間の絶望というものが余りに実感がありすぎた。


 『一度だけ助けてやろう』


 そう声が響いて、目覚めた。

 周囲は荒れ果て、正直、これからどうすればいいのか途方に暮れた者も多い。

 生きていれば何とでもなる。

 そう言う事は簡単だが、生きるには本当に色んな物が必要になる。最低でも衣食住、この三つは必須だ。そして、今、この内、一つを除いて彼らには何もなかった。……一つだけ例外だと理解出来たのは彼らが目覚めると共に次々と周囲に木々が生い茂り、そこに実が成っていったからだ。

 恐る恐る手を伸ばし口にしてみれば、瑞々しく美味い。

 しかも、ある者にはそれらは肉を食っているような味わいと感触を感じ、またある者は新鮮な魚を食しているかのようだった。中には麺類だの唐揚げだのといったものを感じた者もいる。


 「どうなってんだよ、これ……」


 しかも、それらは全て同じ木から取った同じ形の実だった。

 

 「訳分からん……」


 とはいえ、同時に木々が家のようになっていた事で食住の二点に関しては当座をしのぐ事は出来るようになっていた。

 しかし、同時に人族は怖れも感じる事になった。


 『死んでも生き返らせる事が出来るのか?』


 それはもう、本当の神ではないのか?

 そう感じざるをえなかった。

 そして、この一連の事件は竜に対する見方を決定的に変える原因となったのだった。

 ……ちなみにこの後、聖竜教の信者は激増。

 反面、旧来の他の宗教は壊滅的な打撃を受けたそうである。帝国の国教という事で忌避されていた王国でさえ、王自身が改宗する騒動になったそうである。

という訳で、テンペスタが精神と記憶を保護して、体を作って再度入れ直しました

助けたのではなく、死んだ瞬間に、魂とでも呼ぶべき部分を保管して海の龍王を宥めた後で復活させたんですね

……もっとも、壊滅的打撃受けたせいでこの後、えらい苦労する事になったのは確かですが、この年は極端な寒さとかはなく、凍死者とか出なかったそうな……無論、気候制御したんだけど

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― 新着の感想 ―
[一言] 自然と生きる野生人「理不尽にいきなり死んだと思ったが、なんか気のせいだったぜ……」
[一言] そしてルナの所の自社ビルは生き残ってるんですね( ˘ω˘ )
[一言] 死んだままの方が良かった人もいただろうに。何もかもなくなって、国としての全てが足りない状態。若い人は良いけど、老人や子供を抱えた家庭は厳しいだろうね。瓦礫ひっくり返して使えるモノ見つけ出して…
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