幕間:対海の龍王6
職場で、一人「風邪っぽい症状」で倒れた為、休みが潰れました……
どうやら、コロナではないらしい、多分、なのですが……最初聞いた際、遂にうちでも出たか、と思いましたよ……
「撃て!」
「撃ち方始め!」
各艦で一斉に砲撃が開始された。
「くそっ!命中率が悪すぎる!!」
誰かが罵り声を上げた。
光学照準に頼る上、コンピュータ制御にしようとするとコンピュータは海の龍王を認識出来ないというどうしようもない現実が判明した為に全て手動だ。
カメラを通してとはいえ人の目で狙いをつけ、人の手で動かし、人が引き金を引いて撃つ。
緊急用のシステムとして搭載はされていたものの、所詮緊急用。命中精度は普段の訓練のそれとは比べ物にならない程酷いものだった。更に、そこに所属国の差が出る。中には変態的なレベルで手動照準のはずなのにパカパカ命中させている艦隊がある一方で、もたもたした動きで、やっと撃ってもとんでもない方向に砲弾が飛んでいく艦隊もあった。
「うちももう少し訓練を厳しくするべきかな?」
「生きて帰れたらそうしましょう」
そんな嘆きを洩らす艦隊司令官もいた。
しかし……。
「やはり効いていないか」
どの艦隊司令官もそれは理解していた。
何しろ、大きさが違いすぎる。
相手は最低でもキロ単位の距離が離れていながら、視界を覆い尽くさんばかりの巨体が肉眼でも見えるような相手。
一方、こちらが撃っているのは精々がとこ、150ミリ程度の砲弾。
人相手ならそれこそ「ミンチよりひでえや」みたいな状態でも形が残っていれば超幸運と言える程の砲弾だが……あれだけの巨体の相手では豆鉄砲もいい所だろう。深い溜息をついて、王国海軍の現在の総司令官は参謀に声をかけた。
「航空機の発艦はどうなっている?」
「ミサイルの誘導を切った上で、出撃させております」
本来ならとっくに出撃させているはずだったが、ここでもミサイルの誘導が役立たずになった事が祟っていた。
となれば、最早撃ちっぱなしのロケット弾として使うしかない。そう指示を出したものの、その処置には当然、それなりの時間がかかっていた。
(まあ、ミサイルも砲弾と同じだ。意味などなかろうな)
溜息が再度漏れそうになるのを抑えながら、確認を取る。
「……こちらの秘密兵器の準備は」
「……もう少し時間がかかると」
「……そうか。なるべく急ぐよう伝えてくれ」
有力な軍を抱える国はそれぞれが秘密兵器……という名の蟷螂の斧を各国とも準備してきた。
蟷螂の斧だと理解していても、それを信じる事で今はまだ戦えている。だが、その全てが効果がなければ……。
(今更か)
最初から勝ち目などないと理解していた戦いだ。
だからこそ、全員が遺書を書いて、出撃した。
(水相手という事で、あんな武器を持ってきたが。さて、どこまで効果があるのやら)
他の艦隊も果たしてどれだけ効果があるのやら。
と、思うと同時に、それでも皆生き残る為に努力している、と思い直すのだった。




