年末特別版
今回は年末特別版として、本編とは関係ありません!
世界は新年を迎えようとしていた。
ただ日が変わるだけではあるけれど、何か特別な事であるような雰囲気がある、そんな空気が街中にも流れていた。
そして、ある場所でも……。
「兄さん、こんなものかしら?」
構わないと思うぞ、と答えると楽しそうな笑顔になった。
妙に張り切っているのは人の竜王ことルナだ。
何かスイッチが入ったのか、「新年のお祝いをしましょう」と言い出して、ご馳走を作り出した。
(……いや、単にかこつけて年末や正月の料理を作って振舞いたくなっただけかもしれん)
あいつならありえる。と思うテンペスタだった。
「ここまで手伝う兄さんも大概だと思うよ?」
などと弟である氷の竜王が呆れたように言った。
そうだろうか?
と、会場予定の場を眺めた。
今回の招待客は他に地の竜王、空の竜王、海の龍王。後は祖霊達。
祖霊の事を空の竜王は余り好いてはいない、というか嫌っているみたいだが、それを他者に押し付けたりはしないし、彼らが話しかけても無視はするだろうが、殲滅まではするまい。
「幾ら、図体が大きい奴もいるからって文字通りの意味で作るのはやりすぎだと思うんだ」
食材はいいのか?
「思う存分食うぐらいの量を自然調達したら、大変な事態になるからそれはいい」
いいのか。
そう思いつつ、会場に視線を向けた。
とりあえず、平地が必要なので山を作って、平らにした。
後は、そこにテーブルクロスみたいに絨毯を敷いて……。
「そりゃあ、ここなら人族はいないだろうけどね」
くるりと球体が回転したのは周囲を見回したらしい。
「何さ、会場は衛星ですって」
人族が住まう星を見上げながら、というのも乙じゃないか。
ここなら人族の視線を気にする必要もない。ちゃんと光学的な部分もカバーしてあるぞ?
「……いいけどね」
ちら、と調理中の場に視線を向けた。
なかなか豪快に料理を作っているな。火柱が数百メートル規模で噴き上がっている。
「兄さんはルナに甘いなあ……」
そうだろうか?
生まれた時から会話が出来た唯一の弟妹だった事や、だからこそキアラの事も覚えているから多少は甘くなるのは認めるが……。
ところで。
「何?」
お前、ちゃんと食えるのか?
喰わなかったら、ルナが怖いぞ?
……そう言うと、弟が固まった。
「………た、食べないと駄目かな?」
駄目だろう。
そう告げると、しばらく沈黙していた。やっぱりその体では食事に支障があるのか。
「……と、年明けパーティ開始までには何とかする」
そうしておけ。
と、答えつつ、星に生きる生命に思いを馳せつつ、空を見上げる。いつか、この地へと彼らがやって来る時は来るのだろうか?
その時はそれを祝って、彼らも交えて祝いの席を設けるのも良いかもしれぬ。
迷惑かけないよう、衛星で祝いを行うテンペスタでした
ちなみにこの後、喧嘩とか起きたりしますが、会場はびくともしませんでした
それでは皆様良いお年を




