変わる世界14
すいません短めです
「戦闘ようーい」
ほんの少し前、護衛空母搭載の無人偵察機からの映像が途絶えた。
直前に映っていた映像を分析した結果、海面から一瞬姿を見せる奴と、そこから飛来する水が映っていた。
「いよいよだな」
「はっ」
どの艦も高速巡航の準備を行っている。
最大速度は高速航行モードに切り替える事で、一時的に旗艦である戦艦級でさえ四十ノットを超え、小型艦に至っては六十ノットを超える――ただし、短い間だけ。それでも、速度がなければどうにもならぬと実験艦の技術を、自身の良心にかけて渋る技術者達を説き伏せてまで搭載した。
技術者達が渋った理由は単純。
確かに、この技術を使えば一時的な高速は出せるが、稼働を終えた後は最低でもフルメンテナンスが必須、運が悪ければ稼働中に爆発事故を起こす。大体、穏やかな内海や湾内とかならともかく、荒れやすい外洋で大型艦をそんな高速で走らせるなど正気ではないと散々語られたが……。
それでも高速航行は搭載された。
水竜に沈められたら、危険も何も関係ない。
「偵察機はどうか?」
「高高度より有人機が、低高度から無人機が追跡を続けております」
はっきり言ってしまえば、無人機は捨て駒だ。
無論、お値段を考えれば安いとは言えないが、それでも艦隊が奇襲を受けるよりは遥かにマシだ。
「駆逐艦隊、砲撃態勢に入ります!!」
「各艦、水中貫通弾装填!!」
水中貫通弾も冗談のような代物だ。
砲弾を高速回転させ、更に固形ロケットに点火する事で水中を突進させる砲弾。
ただし、残念ながら――。
「発射、命中を確認!」
「敵生体の動きに変わりなし!」
今の所、大型の砲には適用できていない。
というより、大型の砲自体が最近新規に開発されたものなので、駆逐艦の主砲サイズのように色々な研究(それこそ使えるモノから使えないモノまで)がされてきていないというのが正しい。どちらにせよ、今回の攻撃は……敵に気づいてもらう事が目的だ。
「さて、作戦が上手くいくといいのだが……」
提督はポツリとそう呟いた。
――――――――――
うまくいかないだろうね。
それを天空の彼方から見つめていたのが空の竜王だった。
あの水竜は竜王とならなかったのが不思議な個体だった。
どういう訳か、知性を得る事なく――いや、分かっている。あの竜は強すぎたのだ。そして、海という場所も悪かった。
これがもし、もっと弱ければ、頭を使っただろう。
そうすれば、どこかで知性を得た可能性はおおいにある。
地上であれば、知性あるものと接していた可能性は高い。そうすれば、どこかで知性を得たかもしれない。
だが、生まれつき強すぎたから、餌を取るのに支障なく、海という知性あるものが極めて少ない場所故に接する事もなかった。
海の龍王はいたが、危ないならその場所を避ければいいだけだ。意地になって、戦いを挑んでいればあるいは……。
(いえ、それもまた生きる道ですね)
願いもなしに、ただ楽な路を選ぶなど、あの祖霊どもと同じではないか。
(それだけに哀れではある)
害獣とされてはいるが、あれは野生の獣同様に好きに生きてきただけだ。生態系も荒らしている訳ではない。
だが、同時に救う気もない。
何故ならあれはどう足掻いても、最早竜王となる道が閉ざされた個体でもあるから。
そんな竜王の視線の先で早くも駆逐艦隊が壊滅の危機に追い込まれていた。
眠いので十分だけ→四時間ほど寝ちゃったぜ!




