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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
171/211

変わる世界13

 艦隊を空から見下ろす視線があった。

 もっとも、艦隊は全くその存在に気づいていなかったが。

 原因は大きく分けて三つある。

 一つは艦隊の目がほぼ例外なく海に向かっていた事。

 彼らは自分達がこれから何と戦わねばならないか重々理解しており、だからこそ必死に海面を睨んでいた。

 二つ目は彼らが本来ならまだまだ訓練の途上であった事。

 新装備を満載しているのに、訓練の途中であり、更にその新装備に文字通りの意味で命を賭けないといけないという状況は別に提督に限らず、一兵卒に至るまで冗談ではなく、彼らは必死にその扱い方に慣れるべく懸命の努力をしていた。

 三つ目はそもそも視線自体が人ではなかったからだ。


 「言われて来てみましたが、はてさて」


 その姿を知る者はこう呼ぶだろう。

 空の竜王、と。

 

 「はてさて、竜神様より言われて来てみましたが、どうなるやら」


 空の竜王にとって、本当の意味での仲間や目上というのはほとんどいない。

 敬意を払う竜神、仲間として見ている最古たる風雪の竜王、祖霊などという竜王もどきではない人の竜王、海洋を統治する海の竜王、大地を収める地の竜王、これに最近、氷の竜王が加わった。最近は風雪の竜王はもう、古来からの竜王同様自然へと還る過程にあるらしい。それが少し寂しくはある。 

 なお、空の竜王は祖霊などという安易に走った竜王モドキを竜王とは認めていない。祖霊に対する対応は竜王ごとに異なっていて、接点の多い人の竜王、ルナなどは自分の後輩として普通に扱っており、地の竜王は話しかければ対応するが、基本は祖霊とは接触しない。海の竜王は安易に走った困った連中と苦笑と共に相手しているといった感じだ。

 そして、空の竜王は一番の強硬派。

 人の竜王はいい。最初の一体であり、自身の夢、欲望を叶える為にそれを選んだというなら認めよう。

 だが、他の連中は真似だ。ああいう姿もありなんだと知った途端に真似をして、たいした欲や夢もない癖にあの姿を選んだ。

 だから、人の竜王は一つの欲に今も没頭し、全てはその為に動いている。

 一方、祖霊達は違う。人の姿を得てから「何をしよう」と探し、そうしてそれぞれが好き好きで色々な事に手を出している。空の竜王はそれが許せない。一つの根幹を持たない時点で、彼ら祖霊が本当の竜王となる事は永遠にない。

 ただし、人には案外、空の竜王は優しい。

 これが海の竜王だと溺れて助を求めていても助けるかどうかは怪しい。理由は単純、人族は海で暮らす命ではないからだ。彼らはあくまで陸の命であり、海にはただ道代わりに通り過ぎるだけか、海から奪う為にやってくる。さすがに警告して逃げるなら叩き潰しはしないが、人族の姿を見て、余り良い顔はしない。

 そんな竜王の領域だからこそ、今回、人族達はこういう目に遭っているとも言える。

 

 「人が再び竜を狩る事に熱中しはせぬかの見極めと、どうにもならなさそうなら多少は助けてやれ、との事でしたが」


 はてさて、と再び呟いた。




 ――――――――――




 護衛空母から飛び立った機体が艦隊の周囲を飛行していた。

 かつて護衛空母と言えば小型の簡易空母みたいな代物だったが、長い時を経て復活した今の護衛空母はそうではない。かつて商船などを守った護衛空母と異なり、今回彼らが守るのは堂々たる正規艦隊だからだ。

 竜相手の為に、耐久性に重点を置き、その分、艦載機の数が減っている。冗談でも何でもなしに、もし、こんな事でなければ作られる事など考えもしなかった艦だった。


 「……索敵機は全て出たか?」

 「はい。問題ありません」

 「よし」


 護衛空母の艦橋で艦長が副長に確認を取っていた。

 空母と名乗ってはいるが、実の所、攻撃能力は航空機に頼ってはいない。搭載された艦砲がその火力の源であり、むしろ航空戦艦といった方がいいような艦だ。


 「まったく、こんなゲテモノを動かす事になるとは」

 「仕方ありません。現状の航空機では海龍相手に効果的な攻撃手段が……」


 分かっている、と渋い表情で答えた。

 航空機の主な手段は機銃と爆弾とミサイル。

 だが、海龍相手ではまずミサイルは意味がない。

 機銃程度では豆鉄砲もいい所。

 そうなると、爆弾ぐらいしかないのだが相手は艦船より遥かに機動性が高い上、海中にも潜れる。体当たり覚悟でもなければ当てられるとは思えない。

 魚雷の復活も考慮されているのだが、開発が行われていたレールガンなどと異なり、航空魚雷など最早歴史の彼方の代物だ。そうそう簡単に作れはしない。

 かくして、大型の砲を搭載しながら、周囲を見張る為の航空機を運用する航空甲板を持つ護衛空母……という名の航空戦艦が誕生したのだった。

 こんな艦がこれから他にも生まれてくるというのは考えたくないが、かといってそんな意地の結果として同じ海軍の仲間達が死んでいくのはもっと耐えられない。艦長はそんな思いで、この艦に乗っていた。  


 (ここまでやってるんだ。頼む、仲間の敵を取らせてくれ)


 そう声に出さず、祈るのだった。

竜王の性格

空の竜王は人には比較的優しいですが、祖霊には厳しいです

海の竜王は人には厳しいですが、祖霊には比較的優しいです

地の竜王は人にも祖霊にも聞かれたら答えるという感じで、基本、竜王以外接点を余り持ちたがりません。そうした意味では双方に対して厳しいと言えるかもしれません

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 人の竜王というか、料理の竜王?
[一言] 火の竜王もとい、サラマンダー二世はどうしたのだろうか。
[一言] なるほど、ルナは人の竜王として祖霊とは区別されてるのか
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