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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
166/211

変わる世界ー昔語り2

 ぎゅりいいいいいん


 暴走する竜の奥底から再び声とも単なる音ともつかない響きが轟き渡る。

 今の奴の姿は触手が無数に集まった塊のような姿。

 確か、奴はデキソコナイになる前、もう年老いて身動きが取りづらく、獲物を逃していたはず。そうすると、あの触手は獲物を捕まえようという意志の現れ、行動は飢え死に寸前の飢餓の現れかあ……。厄介なのはあの触手、振るわれれば切断が可能なぐらいの切れ味がある上、何本も出して獲物に絡みついて捕えようとしてくるんだけど、長さが物凄く長い。

 

 ぎゅりいいいいんぎゅりいいん


 そして、触手がこすれ合う度にあの妙な音が響く。

 これがデキソコナイ、である事は分かる。

 デキソコナイ、か。かつて一応は妹であるルナから聞いた話を思い出す。意志を持たないで生まれた竜王はデキソコナイなのだと。単なる暴れるだけの装置に過ぎないと。

 今、それを間近にして、それがよく分かる。


 (ならこっちも竜王になる道を選ぶしかない!……んだけど)


 問題はどんな竜王になるのか。

 やり方は分かっている。何せ、多数の祖霊が生まれる程だ。既に、竜王化の方法は明らかになっているし、彼らと異なり長生きしてきた私には十分な属性の力が蓄えられている。本当の意味での竜王の一角に加わるには十分すぎる程だ。

 最大の問題は私にデキソコナイに勝つイメージが固まらない事。

 このようなデキソコナイは北大陸においては他の大陸以上に多数が生まれていた。

 原因は単純。

 中央以外の大陸にはそもそも竜がおらず、中央には古くからの竜王達に加え、竜神というべき存在になった兄がいる。

 そんな所で竜王より劣る力しか持たないデキソコナイが生まれた所で瞬殺されるだけだろう。


 一方、北方大陸には実はほとんど竜王はいない。

 原因は分かっている。母の縄張りとも言える北方大陸であるのに加え、余りにこの大陸は変わり映えがしない。結果、知恵をつけた若い竜はほとんどがこの北大陸を出て行ってしまう。残るのは、この北の大地を好む一部の竜だけだ。

 そうして、代わり映えしない大地を愛するそうした竜達は基本、変わらない、変わろうとしない。

 ただ、あるがままに生きて、滅ぶ事を選んでいる。

 そして、それはこれまでデキソコナイを滅ぼしてきた母も同じだ。めっきり眠りにつく回数と期間が伸びた。そんな母に負担をかけるような事は出来ない。

 ……だが、そんな事を考えていたのが悪かったのか。


 (いたっ!!)


 触手の一本が足を掠めた。

 そして、そのせいで気が付いた。気が付きたくなかった現実に。


 (いつの間に!?)


 周囲には触手が張り巡らされていた。いや、これは……。


 (まさか、攻撃する触手とは別に空高くと、雪の中の二方向から触手を迂回させた!?)


 そんな知性というか本能があったとは思わなかった。

 気づけば巨大な触手の檻に閉じ込められ、全方位から次第に触手が迫ってくる。

 それも、焦る事なく、着実に狭めてきて……。もう、時間はない。


 (くそっ、こうなったら……)


 光に包まれ、竜王としての力を願った事で動きが停止する。

 その瞬間、全包囲から触手が襲い掛かってきた。




 ――――――――――




 実に美味そうな気配だと感じていた。

 今まで食ったどれよりも美味そうなそれを追って、逃がさないようにして、遂に捕まえた。

 そう思った。


 ぎゅりりり……パキリ


 そう思えたのはほんの一瞬の出来事だった。 

新作「ウサギに生まれ変わりまして」もアップしました

当面、来週月曜までは毎日更新、その後は月曜更新、予定です

ちょっと職場が面倒な事になりそうなのでもしかしたら、変更になるかも……

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