変わる世界9
今回は兄弟妹回です
※10/2 修正
こんな所にも人は来るのだな。
「美味しいですからね」
北大陸へ上陸して少しして、人の姿を見かけた。
北大陸は「凍結」の概念が大陸中を覆い尽くしている。水の属性持ちである母に加え、今では強力な氷結の竜王となった弟が、その強烈な属性の力を持って北大陸を閉ざしている。結果として、この北大陸では通常では凍結しないような温度や物質が「凍結」してしまう。
無論、そこでも動こうと思えば動けるが、先程の人々がそうであったように特殊な装備が必要になる。
当り前だが、そんな特注の装備は高い。それでも、そんな装備を身に着けて狩にこれる、という時点で背後にはそれなり以上のスポンサーがいるのだろう。
「うちですよ」
……そうか。
きっとお前の事だから、美味しいものを世間に広める為にやってるんだろうな。
「分かってくれて嬉しいです」
まあ、首を傾げてはいたが……その恰好を考えたら当然かもしれんが。
何せ、今のルナの恰好は容姿はともかく、そこらの街で普通に歩いてそうなスーツにパンプス姿だ。密林だの凍結した大地だのをそんな恰好で歩いていれば、そりゃあ目を疑うだろうな……。
「いいじゃありませんか。写真とか映像とかは撮れないようにしてますし」
そうだな。
ところで、弟が来たみたいなのだが。
「……何度見ても変わってますよねえ。何であんな姿を選んだのか」
生まれて間もない頃は我々と異なり、知性はなかった下位竜に分類される竜だった。
もし、あのまま中央大陸にいれば数百年の内に、どこかで滅竜教団にでも狩られていたかもしれないが、特殊な属性持ちだった為に母竜が本来の住処である北大陸へと連れ帰ったせいで生き延びて、その内上位竜へと変わり、遂には竜王にまでなった。
竜王になったのは……まあ、母竜以上に我々の影響だろうな。
ルナは「ここの生物は美味い」と何気にちょこちょこ北大陸にやってきては獲物を狩って、ついでに母竜の所に顔を出していたらしい。
何気にマメな奴……その際に弟竜とも遊んでやっていたら、ああなったらしい。
「雪玉というか氷玉だよね」
そう、うちの弟竜の竜王としての姿は巨大な氷の玉なのだ。一見すると雪玉に見えるのは表面に雪がついているに過ぎない。
直径百メートルに達する巨大な真球体。
砕かれようが、瞬時に砕けた氷の欠片は気化し、再び表面を埋める形で再氷結するようだ。
そんな球体がふわふわと浮かんでいるのだから、きっと人が見れば目を疑うだろうな。まあ、今の魔法を捨てた人がここまで来れるはずもないが。
『やあ、我が妹よ』
「ええ、久しぶり、と言っておくべきかしら?」
まあ、五年程度じゃなあ……と、何故こっちにそんな視線を向ける?いや、目がどこにあるか分からんが、意識が向いたのはわかるし、何やら疑問めいた視線なのも理解出来る。
『どなたでしょうか?』
おい、兄の顔、いや気配を忘れたのか?
『え、兄?……でも、あれ?』
「……わかる訳ないでしょ。今の兄さんって分体な上、見た目まで変えてるじゃないの」
……それで分からなくなるものなのか?
そう言えば、ルナも弟も揃って頷いた。いや、片方は気配だけだが。
ルナはしょっちゅう会ってるからまだ分かるらしいが、弟の方はほとんど会ってなかったから分からなかったらしい。分体だと質が変わるらしい。なんでも「よく似てるけど何か違う」と感じるらしい。そこに加えて今回は見た目まで変えたせいで弟は「あ、これはちょっと似てるけど違うな」と思ったらしい。
しょうがなかろう。現在使ってる外見だと全長五十メートルを超えるんだ。
どこで目撃されるか分からんから、今はこちらも人の姿になっている。本体は出来ないが、そこは分体だからな。
「便利ですよね、分体」
『なるほど、今の兄さんって言ってみれば不定形な塊がその形取ってるのか』
そうなるな。
さて、それじゃそろそろ……いくか。
本体は形状変化出来ません
なので、テンペスタも本体は人型になれませんが、この世界にいるテンペスタは本体の力をかつての姿に形成してるだけなので、こうして形状を変える事が出来ます
なにせ、それが出来ないとサイズ変える事も出来なくなりますからねえ……世界が壊れるっ!




