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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
159/211

変わる世界4

 竜が動いた。

 そして、戦争が終わった。

 

 この動きは本来ならば竜に対する恐怖を巻き起こしてもおかしくはなかったが、ここで世界各国のマスメディア、そして聖竜教が一斉に情報操作に動いた。

 無論、現場の人間は自分達が情報操作を行っているという意識はない。それどころかそれなり以上の立場の者達でも情報操作に関わっているという意識はなかっただろう。すべてはメディアを陰から支配する一体の竜王の意志によって、直属の者達が動いた結果だ。

 まあ、聖竜教はそれらとは別に竜神の動きを見て勝手に判断して動いた訳だが。

 

 『竜が後始末に動くからいいだろと身勝手な行動を取った』

 『結果、後始末を押し付けようとする竜が動いて、そんな事をした者達に反撃した』  

 『あなたは見知らぬ相手に面倒な後始末を押し付けられて知らんぷりして許せますか?』


 簡単に言えばこんな内容で、そしてそれは事実でもあった。

 更に、これまで知られていなかった彼らの悪行は次々と暴かれていった。何せ、思い切りトラウマを植え付けられた、その悪行を行った当人達が情報を提供したのだから真実に間違いなく、報道の現場からすればこれまで隠されてきた真実を報道するのだから躊躇いなんかある訳がない。

 おまけに通常ならばかかる可能性のある圧力も今回は上が「やれ」と言っているのだから喜々としてスクープと彼らが信じる真実を流していった。

 そして、こうした事実が明らかになった時、抵抗するような連中も今回はいない。

 というより、これ幸いとばかりに素直に事実を認めて、引退隠遁していった。

 無論、刑務所に入らないといけないような連中もそれなりにいたが、彼ら曰く。


 「刑務所ではあんな目には遭わない」


 という事で控訴すらせず、素直に入る有様だった。

 取り調べにあたった者達からすれば「何があったんだ?」と首を傾げるしかないが、何しろ体に傷などはなく、精神面の傷などは目には見えない。おまけに何があったのかを聞いても頑として口に出そうとしない、どころか一部の者は「おしおきこわい」と呟いて気を失う有様。

 こうなると事務的に処理するしか方法もなかった。

 さて、こうなると自然と周囲の空気も変わる。

 

 『あいつらが悪い事を続けたから竜を怒らせた』


 更に世界最大宗教となりつつある聖竜教もそれを後押しする。


 『竜神様は悪事を働く者達が世界に災いを引き起こし始めた事にお怒りになられたのです』


 実際は食材の宝庫を台無しにされた竜王ルナの怒りと、同じ事を繰り返されてまた騒動になったら面倒だと考えたのが竜神テンペスタの行動理由だが、そんな事を知らずに表に出ている情報だけ見ればそうとしか思えない。

 おまけに隠された真実!なんてものを暴こうにも報道されているのが(珍しく)真実そのものだから陰謀論的なものにならざるをえない。

 無論、こうした動きで損失を受けた者もいる。いるのだが……。


 「余計な事はしないでね?」

 「「「「「イエス、マム!!!」」」」」


 全員転移で呼び出された祖霊達がテンペスタが背後に立っている状況で威圧全開のルナにそう言われて、反論も反抗も出来る訳がない。

 変な反抗をこっそりした所でばれたら後が怖い。

 多少の損失があっても、下手な手を打って敵に回す相手が相手だ。かくして、裏で動こうとする連中も祖霊達の全面協力もあって全て潰された。……と言いたい所だったが。




 ――――――――――




 「あとは犯罪組織だけ」

 「……そうか、接点がほとんどなかったんだったな」


 基本、祖霊達は犯罪組織には関わらない。

 無論、ある程度なあなあでないとややこしい事になる部分があるのは仕方ないが、少なくとも自分達自身が犯罪組織の長になるような事はしないし、犯罪に関わるような事は……まあ、積極的にはしない。まったくしない訳ではないのは綺麗事だけでは片付かない事がどうしたってあるからだ。

 結果、ルナや祖霊含めビジネスライクな付き合いはあっても、犯罪組織のトップと親しい関係にある者は一切いない。

 あちらも最初の頃は色々と接触してきたみたいだが、今は諦めたのか淡々とした接触のみとなっているようだ。まあ、ずぶずぶの関係になっていた方が安心出来るというのもあるだろうし、色々な意味合いで関係を深める事を狙ったのだろうが、祖霊は人の姿をしていても中身は竜で、毒や狙撃といった暗殺は通じず、却って反撃で大損害を被った事から自然と一歩引いての付き合いとなっていったらしい。

 

 「だから、今回ちょっかい出そうとしている連中には……」

 「強制的に黙らせるか」


 そう、とルナが頷いた。

 とはいえ完全に潰すつもりもないようだ。どんな世界でも裏社会に落ちる者はいる。

 そして、裏の勢力を完全に叩き潰してしまえば、今度は抗争とかで余計な犠牲が表にも出る。

 そこは理解しているというのでテンペスタも黙っている事にした。 

 ……ただし、ルナの表の顔の影響力を知っていれば、少し悩んだかもしれない。


 かくして、一般社会には知られる事なき超巨大企業複合体フェガリスキアのトップと複数の犯罪組織の長達の会談が決定した。

フェガリスキアはギリシア語で月影の意味です


大分涼しくなったけど、その分疲れがどっと出てきた感じです

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