ある宇宙の一角で11
「結局、一緒にやり直すのか?」
何となく和解みたいな良い雰囲気になって、周囲の近衛達も弟である第二王子の言葉に涙ぐむ者がいる中、非常に冷静な声が響いた。
あまりに雰囲気をぶち壊す声に、思わず声の主を睨んだ者までいた。
「そうですね、色々思う所はありますし、うまくいくかは分かりませんが、そうしてみようかと」
とはいえ、私からすれば声の主からすれば関係ないし、言っても仕方のない事と苦笑しつつ答えた。
「では、どうする気だ?」
「……そうだな、まずは王宮に戻って私の部下達に和解したという事を伝えるべきか」
視線を向けて問われた叔父上は少し考えてそう言った。
彼らとて別に先王らに恨みがある訳ではない、はずだ。和解したと聞けば、安堵するだろう。
……まあ、多少テンペスタ殿に恨みがましい視線を向ける者はいるかも……と考えて、そもそもついてきてくれるのか、という疑問にぶち当たった。
(いえ、これからは叔父上と弟で何とかしていかないといけないでしょうね)
多少国内が荒れようが、いや荒れるからこそ自分はある程度区切りがついた所で嫁に行かないといけない。
「けど、うちの国がこうなったのにあちらは私が欲しいとか言ってくれるのかしら?」
思わず漏れた声に叔父上が疑問の視線を向けてきた。
今更隠しても仕方のない事かと思い、三大国の一角、その第二皇子との婚姻の話をすると驚愕の表情を浮かべていた。
「姉上、おめでとうございます!」
と喜ぶ弟と。
「……なんて事だ。私の計画は最初から失敗しかありえなかったのか」
そう落ち込む叔父上が対照的だった。
近衛の者達は……まあ、第二皇子から私がプロポーズされた時、その場にいた者達も多いからな。特に反応を示さなかった。
「ほう、君自身は納得しているのか?」
「?ああ、わ、悪い人じゃないし……」
ちょっと眼光が鋭くなった?何かしら思うところがあるのだろうか……?
けれどまあ、第二皇子自身は悪い人ではないし、むしろ相性は良い方だと思う。
「そうか」
ん?なんだ?私に対して怒っている訳ではないが何か寒気が……。
――――――――――
そもそもなぜ、この娘に対して介入しようと思ったのか。
理由は単純、その魂がキアラのものだったからだ。
もう、幾度も転生を繰り返し、私との思い出も何も覚えていないだろうが、それでも魂自体が私を忘れてはいなかったからこそ、ああも素直に、雇うという形とはいえ助けを求める事が出来た事を理解していた。そうでなければ幾ら強く、助けられた相手とはいえ精神干渉すらなしに助けを求める事など裏切られたばかりの女性には無理だろう。
魂は宇宙に縛られない。その大本は全てを生み出す混沌へとつながっている為に一度帰り、そしてまたどこかの宇宙に生れ落ちる。
最初は縁のある者の傍に生れ落ちても、長い時を重ねる内に次第に縁という繋がりは薄れ、やがて別の宇宙へと零れ落ちる。
(何時ぶりであったかな)
ふと懐かしい気配を感じ取って覗き込んだ宇宙に彼女の魂の輝きを見つけた際、つい介入してしまった。なにせ、宇宙の中に抑え込まれていた時は魂の感知など出来ず、宇宙から出て魂というものを理解出来るようになった時には既に零れ落ちた後だったからなあ。
「古の時代に、あの子は子孫を為す事なく終わったが、お前は子を為す機会が得られたのだな」
ああ、我慢していたのだが。
このまま僅かなひと時の邂逅として黙って去るつもりだったのだが。
いかんな。呆気に取られているが、どうにも我慢出来ん。
「ははははははは、良き哉、良き哉!たかだか数千か数万年か!その程度の時でもこのような出会いがあるから面白い!」
一気に体が膨れ上がる。
いや、抑え込んでいた力が解放されたというべきか。
姿の変わった私に唖然とした視線を向けてくる彼女達。それを上空から見下ろしながら口を開いた。
「さあ、お前達の願いを言うがいい」
全長数百メートルの巨竜の姿で。
この世界では魂は宇宙を渡ります
なので、今ではキアラの魂は今、分身がいるテンペスタが生まれた宇宙とは別の宇宙にいました
で、なつかしさからつい手を出してしまった、という所です
本当はちょっとお節介して、別れるつもりだったんですが個人レベルの感情とでもいうべきものが薄れてるテンペスタにとって久々に根源を揺さぶられる想いが出てきたせいで暴走気味です




