ある宇宙の一角で10
「内戦か……なるだろうな、このままだと」
「分かっているなら説明したらどうだ」
「……私が言って信用してもらえるかね?」
「穴があるなら指摘ぐらいはしてやる」
目の前で分かった様子の叔父上とテンペスタ殿が話をしている。
内戦?どういう事だ?
「まあ、言ってみれば簡単な事だ。私が倒れたら反乱側を制御する者がいなくなるだけだな」
「彼が消えて、お前達が出て来た時点で反乱側の勝ちはなくなるからな。そうなれば降伏しても前より良くなる事はありえん」
反乱に与しなかった諸侯をねぎらう為にも報酬を渡す必要があろうし、その為には反乱した側から領地なり一部剥奪するのが妥当だ。
そう言われてみれば、確かにその通りだ。
と、同時に……。
「一部は交渉次第では納得して投降するかもしれんが、悪足掻きする者は必ず出るだろうな……大体、だな」
君達はどうやって自分達が次期王だと宣言する?
周囲にまともな戦力もいない状態で。
「……それは」
新王を名乗る叔父上を討ち取ったとして、近隣に存在する最大戦力は他ならぬその叔父の領地の軍隊だ。
彼らが諦めて、素直に第二王子に臣従するなら問題ないだろうが……もし、主の仇討ちを図る者が一人でもいれば。
(いかん、最悪王家の血筋は途絶える!)
現状、王家の直系はこの場にいる三人のみ。叔父には子供がいるが、まだ幼く、そもそも叔父上自身が叛逆し、叔父上が討ち取られた状態で「じゃあ次の王は新王の子に」とはいかない、それで収まる訳がないのは私にだって分かる。
だって、そうなったら間違いなく叔父上の側についていた者達が大きな顔をする。少なくとも、しようとする。そうなれば、「新王は討ち取られたのに、新王側についた貴族達が忠臣顔して次の王の側近に納まろうとする」という状況が生まれる。当然、叔父上の側につかなかった者達からすれば「ふざけんな!!」となる可能性が大きい……。
間違いない、そうなったら内乱はより激化するだろう。
……そして、そうなったが最後、止める事は不可能だ。王家の直系はその時には新王の子しかおらず、それに対して今度は立場を逆にして反乱がおきる。
ではどうする?
どうする……?
私がそう遠くない内にこの国を去らねばならない以上、弟を支え、弟を新たな王とするだけの力を持っていて、尚且つ王家に忠誠を誓うような相手と合流……テンペスタ殿にまた頼む?いや、それは出来ない、テンペスタ殿はあくまでこの国の内乱には本来関係ない亜人。
この地を遠く離れた場所まで果たして私達を連れて行ってくれるのか?この地で静かに暮らす事を望むような相手が?
それに図々しい行動ばかりでは見捨てられるのではないのか?
必死に考える私の思考を止めたのは軽く引かれた服の裾、ひいてはそれを為した弟だった。
「姉上」
「……どうしたの?」
視線を合わせる。
そこにはどこか不安そうな弟がいた。大丈夫、私が守ってー。そんな思いは次の瞬間吹き飛んだ。
「叔父上を殺すのですか?」
その言葉に私は即答出来なかった。
一瞬の躊躇いが答えと受け止められたらしく、弟は。
「……駄目です、姉上」
泣きそうな顔でそう言った。
「叔父上までいなくなるのは、嫌です」
「………」
「例え叔父上が父上や兄上達を殺したのだとしても……僕は、叔父上までいなくなるのは、嫌です」
……ああ。
そうか、そんな単純な事だったか。
「分かった」
そう言って頭を撫でる。
「分かった、約束しよう。……叔父上は殺さない」
この国の為にも、この国を離れなければならない私ではなく、この国の未来を決める権利があるのは間違いなくお前にあるんだから。
たった一つのシンプルな答えです
……多少裏を明かせば、第二王子はそこまで父や兄との接点がなかったのもありますが
父自身は愛情を持っていましたが、王たる立場上なかなか第二王子の為だけに時間を割く事が難しく、第一王子からすれば自分の次の王位継承権の持ち主に対してはどうしたって警戒心が向き
そして、第二王子の母親は決して愛情を向けてくれる相手ではありませんでした
何気に、叔父さん、王宮にいた頃は自分と重ねて可愛がってくれたりしてました




