第十三話:龍王の思惑
龍と竜、これは竜の姿だとお考え下さい
龍表記の場合は東洋風の蛇のような長い胴を持つ龍、竜表記の場合は西洋風の蜥蜴のような竜となります
また、竜王の場合は基本竜王で表記します。龍王表記は……竜の中でも特別な相手のみです
※誤字修正
大嵐龍王は現在存在する最古の竜王の一体である。
少なくとも当の本竜が認識している限りの範囲では自身と同程度の時を過ごし、尚存在する竜はいない。もし、いるとすれば風の属性の届かない水の奥深くか大地の地下深くだろう。それも人からすれば気の遠くなるような長い長い時間、一度たりとも風に触れる事のない竜という事になる。それでもいないとは言えないのが竜の竜たる所以なのだが、とにかく人が接する可能性のある竜としては最古の存在の一体と言ってよい。
その当竜だが、かつては東方に住んでいた竜だった。
元々、竜の姿に関しては東方と西方で綺麗に分かれていた。これは一番最初の始原の竜がそのような姿をしていたのだと竜王達は考えている。
もっとも遥か古来に東方から西方へ、西方から東方へと若い竜王が好奇心から互いに行き来した結果、現在では魂が混ざり合い、竜から龍が生まれる事も、龍から竜が生まれる事も普通に起きる。事実、テンペスタの場合も母は竜であり、父が龍であった訳だし、水竜であった次男は東方風の蛇のような長い胴体を持つ龍であった。
大嵐龍王は長く東方大陸にいたが、ある時この地へと流れてきた。
流れてきた、というのは比喩ではない、文字通りの意味だ。
既にその当時の時点で自然と半ば一体化しつつあった大嵐龍王は風に流されるままにこの地へと辿り着いたのだ。
風が渦を巻くこの地に流れ着いた大嵐龍王はこの地を終の住処と定め、ただ泰然と過ごしていた、はずだった。
「しかし、母さんに出会って気持ちは変わった!」
『はあ』
テンペスタは内心何で両親の惚気をこんな所で聞かされにゃならんのだ、と思わないでもなかったが、思えばこれから特にどこに行ってどうこうしようという予定がある訳でもない旅路であった事もあり、これも人の言う所の親孝行という奴だろうとのんびり構えて聞いていた。
それに、父龍の話も決して退屈な訳ではなく、若い頃のまだ活発に動いていた頃の話は実に興味深いものだった。
動かなくなった頃の話はつまらないのでは?と思うかもしれないが、そちらに関しては父龍自身が殆ど記憶にないのでさらっと流していた。
しかし、話す内容の殆どが母竜との惚気なのはどうかと思うのだが。
曰くあの毛並みが素晴らしい。
曰く純白の輝きに惚れた。
曰く……。
テンペスタからすれば『いや、そもそも竜の女性と出会った経験自体が少ない自分に言わないで下さい』というのが本音なのだが、テンペスタは空気の読める子なので黙っていた。
とはいえ……なまじどちらも飲食が不要なお陰で終わりが見えないのは辛いとしか言いようがない。
まあ、それでも竜らしい所があると言えば、この場から遥か彼方の北方大陸に住む母竜を見初めた事、ここから動かずに風の属性を用いて口説いた事、口説き落とすまで二百五十年程かかった、といった所だろうか。最後の一つに至っては当人ならぬ当竜曰く「僅か二百五十年で口説き落としたのだぞ」と自慢していたから、これでも短い方なのだろう、当竜にとっては。
もっとも……。
「竜というのは滅多に子を作らぬからな」
というのが大きいらしい。正確には「竜王は」というのが正しいのだが。
これは自然界を考えれば当然の話かもしれない。
最低でも人の数倍から十倍は長く生き、滅多な事では死なない属性竜がポコポコ生まれていたら、それこそ今頃この世界は竜で溢れかえっている事だろう。事実、火竜ウルフラムも番を得てからはその番を生涯変えない竜であるが、彼らとて十年から五十年の間に一個の卵を生むのみだったりする。母竜王のまとめて五個というのは実は相当な例外なのだ。
もっともこれに関しては大嵐龍王の精気が多すぎた、という事もある。
下位竜はともかく、上位竜の子孫を残す作業は通常の交尾とは異なる。
それは父竜が精気を凝縮し、それを受け取った母竜が自らの精気を注ぎ込み、卵の形へと変える。よって正確には卵のような形状をしているだけで実質は別物なのだが、ここは分かりやすいように卵で通しておく。
通常は双方にそこまでの差がない為に誕生する卵は一個なのだが、大嵐龍王の持つ気は膨大であり、大嵐龍王自身にとっては僅かなそれであっても母竜王をして五個の卵を作るに至った訳だ。
とはいえ、子が生まれたと言っても、大嵐龍王自身は子供というものにそこまで意識を払っていなかったらしい。
より正確には如何に母竜王に惚れたとはいえ、元々が既に相当枯れた状態にあった龍王だ。母竜王以外へとその興味を向けるという意識自体が相当薄かった。
とはいえ、母竜王を見続けていれば、どうしたって子供も目に入る。
やがて、子供達が巣立ちの日を迎え、母竜王も我が子の一体を連れて北方大陸へと戻っていった。
テンペスタ自身は初めてその後の母の状況を聞いた訳だが、基本、以前の生活とは変わらないらしい。しばらく不在だった為に勘違いした竜が王を名乗ってはいたようだが……。
『それって大丈夫だったのか?』
「心配いらん。所詮経験不足の若僧だ」
一応、万が一の事があったら、と大嵐龍王も監視はしていたし、一応『手を貸そうか?』と声は掛けていたようだが、きっぱり断られたらしい。
……遥か彼方の北方大陸まで当り前のように目が届いて、声が掛けられるというのは突っ込まない事にした。
それはさておき、結果は可哀想な程にボコボコにされたらしい。
背に氷竜の我が子を背負ったまま、悠然と一歩も動く事なく、完封してのけたらしい。
『母さん完封したのか』
「おお、あれは見惚れるぐらいの見事なやられ役であったな」
相手も仮にも王を名乗るもの。
元々は他から流れてきたらしい。
『流れてくるってあるのか?』
「今のお前が正にそうだ」
言われてみれば、と納得するテンペスタ。
実の所、成竜となった事でテンペスタもまた竜王と呼ばれる資格を得ている。竜王となりうる上位竜と下位竜の差は知性の有無。幼き頃より知性を有していたテンペスタであったが、これまでは幼竜であった為に上位竜ではあっても竜王とはなりえなかった。
それが成竜となった事で、その資格を得た。
竜は全てが全てではないが、属性竜の場合通常の食物連鎖から外れているという事もあり、長生きする竜が多い。そして、長く生きれば知性を得る竜が出る。
そうなれば、その地域を縄張りとしている竜王と争って、その縄張りを奪うか、或いは新たな自身の縄張りを得る為に移動するかのいずれかだ。
共存する事はないのか?と問われたならば、それはない、としか言いようがない。
通常の属性竜は共存可能だ。
では何故竜王は共存出来ないかというと……これは【竜の庭園】の存在が理由だ。
長く生きる竜の塒はやがて【竜の庭園】となる訳だが、これが竜王の縄張り内だと少々話が違ってくる。すなわち、縄張り内の【竜の庭園】は一つだけしか存在しえない、という事らしい。
はっきり言うならば、通常テンペスタのような若い竜が【竜の庭園】を形成する事はありえない。
下位竜は属性持ちであっても、ただ属性を吸収するのみで、快適に属性を制御する意志がない。
したがって、上位竜のみの特権ではあるが、例え知性があっても幼竜は通常そこまでの実力がない為に親の保護下にあるか、或いは他の竜王の支配領域で住まわせてもらうか、或いは世界を巡っているかのいずれかになる。当然、いずれの条件下でも【竜の庭園】が形成される事はない。
あの国のキアラの屋敷におけるテンペスタのそれは「テンペスタが生まれて間もない頃から知性を有していた」「そこが他の竜の生息地と被らない場所だった」といった複数要因が重なった稀な偶然である。
「そしていざ竜王となっても、既に好条件の場所は専有している竜王がいるのが普通だ」
その場所を奪おうとすれば当然、その地の竜王と争いになる訳だ。
そして、まず成り立ての竜王が負ける。
だからこそ、成り立ての竜王は最初は属性的には余り適していない、代わりに他の竜王の縄張りではない場所に居を構え、長い長い時間をかけてその土地を自らに合うように変えていく。その過程で【竜の庭園】というその竜に最も適した地へと変貌を遂げる。
そんな竜王の前に、たまたま出産でその地を離れた竜王の土地があったらどうなるか?そりゃあ手も出るというものである。
古株の竜王が長年住んでいたような場所なのだから立地的には最高。
その流れの竜王からすれば、前の竜王が何らかの理由で消えたか、移住したかと判断したのだろう。……やっと落ち着いて住める場所を見つけたと思って、何年か住んでた所に元の家主が帰ってきたというのは運が悪いとしか言えまい。
そして、最大でも三年程度の時間では、何百年もかけて最適化された母竜の地を改善する事も出来ず、結果として圧倒的格上に相手のホームグラウンドで挑む事になった訳だ。
幼い我が子を庇っていたとはいえ、それでは母竜に負ける要素はあるまい。
「まあ、機会があれば行ってみてもいいだろう。人には無理だろうが、お前には関係あるまい」
何でもただでさえ寒い北方大陸なのに、その中でも更に北の地にそこはあるという。
一年を通してその大半が雪と氷に閉ざされ、極寒の風が吹き荒れるという。
大地の恵みも殆どなく、頭上はほぼ分厚い雲に覆われた僅かな動植物のみが存在する水系統か風系統の属性竜以外にとっては悪夢のような大地。そこが母竜の住処だという。まあ、水と風の属性竜である母竜にとってはそここそが最も住みやすいのだろう。
母竜以外はテンペスタの弟妹の一体である氷竜を除けば、竜すら殆ど住んでいない。
そんな地を父たる大嵐龍王はちょくちょく覗き、母竜と話していたという。
「その過程で我が子への関心も強まったのだよ」
そう大嵐龍王は語った。
まだ知性のない子供のままとも言える氷竜は母に他の兄姉妹よりも甘えられる期間は長かった。
一応独り立ちした後も、母竜は比較的近くへと置いていたという。
母竜の縄張りに住む生命は少ない。
だが、いない訳ではなく、そんな連中はいずれも強者である。過酷な環境で生き延びるにはそれなりの強さが必要で、と同時に頭が悪いから母竜が脅した所で氷竜である三男が彼らの狩りの範囲に入り込めばあっさり殺されるだろう。
必然的に我が子に干渉しがちになり、そんな光景をしょっちゅう見ていた大嵐龍王は「自分も我が子に何かしてやるべきかな?」と思ったという。
が、ここで問題となるのがやって来る可能性があるかどうか、だ。
水竜と溶岩竜は論外。
両者とも空は余り好まず、空を飛ぶ事は出来てもそうするかどうかはまた別問題だ。出てくるにしても、こんな嵐の空を飛ぼうと考えるかどうかとなると……甚だ怪しい。大嵐龍王の気配を感じた所でさっさと水なり大地の底なりに帰ってしまう可能性の方が圧倒的に高いであろう。
そうなると、残るは長男と末っ子。
そして、末っ子は東方へと飛び去り……。
「海渡って、東方大陸まで行ってしまったよ」
『……何でまた』
中央大陸、そう呼称される大陸は他の大陸より一際巨大だ。
西方から東方へと渡るだけでも十分な距離があるし、文化も異なるはずなのだが……。
「東方料理に嵌ったようだぞ!!」
『……俺並に思い切り人と交わってるの!?』
「うむ、けしかけた甲斐があった」
『親父の仕業かよ!!』
普通なら竜が来たとて捧げ物には余り興味を持つ事はないはずだし、食す機会もないはずだが、そこは元々東方では神のように崇められていたという大嵐龍王。今でも儀式を行っての雨乞いぐらいなら応じている事もあり、縁のある竜が訪れる、という事をそうした祭事を扱う所に伝えれればもてなしぐらいは軽かったという。
別に大嵐龍王自身は末っ子が料理に嵌るとかは期待していなかったらしい。
そもそも、声をかけたきっかけも、東方の社、そこからの声は比較的聞こえるようにしているらしいが、黄金に輝く竜を最近見かけるという声を聞いた為に「我が子である」とだけ伝えたらしい。
しかし、社側からすれば神竜様の御子様という事で酒……はさすがに拙かろうという事で料理をもって招いたらしい。知性ある竜である末っ子は人の反応から「自分にくれるみたい」という事を理解して好奇心から食べたらしいのだが……。
『それで嵌った、と』
「うむ」
おまけに何とか自分で作ろうとした結果、魔法まで組み上げてしまったらしい。
いや、何してんだよ我が妹よ、という気持ちになったテンペスタだったが、よくよく考えてみれば自らとて竜としては相当な変わり者な事に気づいた為に黙っていた。
そうして、更に料理を追及しにとうとう東方大陸まで飛んでいったのだとか……。
人と交わるのは制限されているのでは、と前の竜王に聞いた事を思い出して問いかけてみたが返って来た答えは……『構わん!俺が許す!!』だった。
「人の言う上位竜とやらに入っていたお前とあの子がこうまで変り種となるのは想定外だったぞ」
『……まあ、そうだろうね』
そんな事予想出来るはずがない。
同意したテンペスタだった。
「まあ、そんな訳で多分我が子でここに来る可能性があるのはお前だけでな」
『ああ、うん、だろうね』
「折角だから勉強してゆくと良い」
『……勉強?』
何をかと思えば、これまで大嵐龍王が長い竜生で知った事や他の大陸の事、力の使い方に関して色々教えてくれるという。
その力であちらこちらに視点を飛ばしているお陰で、修正もリアルタイムだ。
「母さんも三男竜が上位竜になったら色々教えてあげたいと楽しみにしていたからな……」
『へえ……』
考えてみたが、今のテンペスタはこの世界の事などろくに知らない。
確かに王国に長年住み着いて、連合王国の側の情報に関しては色々と機密も知ってはいるが、他の国や大陸の事までは分からない。中央大陸において連合王国がどのような立ち位置にあるのかも知らない。
大体、テンペスタは自分自身の力がどの程度のものなのかも、比較対象がろくにいなかった為分からない。
『そうだね……それじゃ教えてもらうよ』
「うむ!楽しみにしているがいい!!」
この後の父龍による知識はテンペスタを長く支える事になる。
異界の知識こそあれど、この世界の事に関してはまだまだ殆ど知らなかったテンペスタにとって、この世界を知る父の教えは非常に新鮮なものだった。
飯も要らず、睡眠も不要な両者だ。
話を聞き、体を動かし、魔法を議論し、アドバイスを受け……などとやっている内に瞬く間に月日は過ぎていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そうして、遂に再びテンペスタが旅立つ日がやって来た。
『では行ってきます』
「うむ、良き旅である事を祈っておるぞ」
その言葉を最後にテンペスタは身を翻す。
……声を届けようと思えば、世界の大抵の場所に声を届ける事の出来る父竜であるし、必要なら姿を見る事も出来る。
何時でも会おうと思えば会えるのだと思えば、別れもさばさばしたものだ。
その内心では……。
(にしても……えらいテンションが高くなったかと思えば、落ち着いた老成した感じにもなるし。古き竜って皆ああなのかな?それともうちの父親が変わってるだけなんだろか)
そんな事を考えながら、テンペスタは嵐の中へと飛び出す。
前はこの嵐の中へ飛び込んだ際は出る事を拒まれる形になった訳だが、今回はそのような事もない。真っ直ぐ突き進み、切り開いて飛んでゆく。
やがて、陽の光の下へと飛び出したテンペスタは一つ羽ばたきを行うと「まずは折角だから母さんにも挨拶するか」と考え、一路北へと進路を取ったのだった。
さて、その一方、残った父はと言えば……。
「……行ったか」
飛び去る我が子を目ではなく、属性を通じて向けながら、静かに大嵐龍王は感じていた。
その気配は我が子と話していた折のテンションの高い様子は微塵もない。
「何とか、間に合ったな」
気付いていた。
自分にも他の竜王同様、自然と一体化する時間が近づきつつある事を……。
テンペスタはほんの数年程度に思っていたようだが、実はこの地で過ごした時間は既に二十年余に達していた。太陽などの時間を感じる手段がないこの場所では時間の感覚は大幅にずれてしまう。それだけに必要最低限の知識の譲渡だけでも終わるかどうかは不安だった。
事実、感情をかきたてねば、自身の気持ちすら奮い立たせる事が出来なかった。
母竜に惚れたのは事実ではあるが、と同時にあれだけ情熱的に口説いたのは自分自身の終わりが近づきつつある事を無意識にも感じていたのだろうと判断している。終わりが近づきつつあるからこそ、子孫を残すという本能が刺激されたのであろう、と……。
無理に奮い立たせたせいで、妙に感情が高ぶっていたように見えていたかもしれぬな、と僅かに苦笑する。
現時点で既に知性を持つ上位竜となりえている二体の我が子には人と接する事を推奨した。
長らく、本当に長い事、竜王達はそれを守り続けてきた。
最大の原因は人と竜はまだしも、竜王とでは力が違いすぎるのだ。竜王にとって戯れであっても、人にはそれは災害であり災厄だ。小石がぶつかるなら精々がとこ「痛い」で済むが、見上げるような巨岩がぶつかれば声を上げるすら余裕なく押し潰されてしまう。それを避ける為に竜王は人との接触を禁じてきた。
だが……。
(……竜を殺すのは退屈だ)
大嵐龍王はそう思う。
余りにも竜の生活は動きがない
せめて食事が必要ならばまた話は変わるだろう。
その食事を得るのにただうろつけば良いというのでなければ、また違ってくるだろう。
生憎、竜、正確には属性竜には何も必要がない。
人は衣食住を必要とするが、竜に衣は不要だ。
食も同じく。属性竜は何も食わずとも、自然から属性を吸収し、それで補う事が出来る為に食べる物を探して歩き回る事も、栽培する為に畑を耕す事も、或いは金銭でそれを求める為に働く必要もない。何らかの嗜好品として食べる事はあっても必要だから食べるのではない。逆に言えば、飽きれば食べる必要もない。
そして最後の住に関しても言うまでもない。
(人と接し続ければ、或いは)
人は竜からすれば恐ろしく早く生き、そして消えてゆく。
裏を返せば、それは極めて変化に富んでいるという事だ。竜からすればほんの僅かな時間、その時間で彼らは何かを作り出し、それを受け継ぎ、その内の大部分はやがて消え去り、しかし幾つかは残り後の世へと更に受け継がれてゆく。
その変化は竜にとって大きな刺激となるのではないだろうか、そう思うのだ。
だからこそ、息子と娘には少々お節介をした。
幸い、息子は人と接する事をその生来より当り前のように感じており、娘はといえばこちらも興味を持ってくれたようだ。
その後を見ている限り、彼女が選んだのはただ単に食事にだけではなく、むしろ何かを作り出す事のようだった。今はあれこれと興味を持つままに手を出しているようだが、そのままその興味を深めて欲しいものだと大嵐龍王は思う。
(人は増えた……)
かつて竜王達が人と接するのを避けた理由、今ではその後に生まれた新規の竜王の殆どが知らぬ事だが、まだまだ人という種自体の数が少なかった。
だからこそ、竜王達は自分達が数も少なく脆いのに、積極的に自分達の領域にも踏み込んでくるこの種族を誤って滅ぼしてしまうのではないかと考えたのだ。
だが、今はかつてとは違う。
人は国を作り、互いに連携し、今や大地でおおいに繁栄している。なれば、もうそこまで「関わるな」という制約は不要だろうと思うのだ。
距離を置く事しかしなかった自分達とはまた異なる関係を我が子達は築いてくれるのではないか?
そんな想像を大嵐龍王は楽しむのだった。
という訳でテンションえらい高いのは強引に気持ちを高めて……結果として、躁状態にあった為でした
竜を退屈が殺すとしてますが、人も変わり映えのしない日々が続くと結構あっさりと……
私の祖母もなあ……あれだけ元気だったのが、怪我が原因で老人ホームに入って間もなくボケました
この間会いに行ったら、何とか自分の子供の事は覚えてましたが、それ以外となると孫の自分の事すら覚えてませんでしたよ……




