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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
149/211

ある宇宙の一角で6

次回は城内での戦闘場面です

 その日、門番をしていた者達はある意味賢明だった。


 「止まれ!」


 はっきり言ってしまえば、門番達は反乱を起こした新王に何の義理もない。

 ただ、彼らは新王に対して複雑な気持ちを持ちつつも、門番という仕事をまっとうしていただけだった。だからこそ、新王の反乱によってかつての賑わいを失っている王宮周辺で一人歩いてくる人影に対しても忠実に仕事をこなそうとした。

 もっとも世の中にはそれが無理な相手もいる。


 「……み、見ない顔だな」

 「今、ここは少々混乱している。離れるがいい」


 この国の王宮はそこまで巨大な訳ではない。

 だが、他国の王族を招いても問題ないよう立派ではある。それは門も変わらないのだが……。


 「「おい、止まれ!」」

 「第一王女とやらの頼みで来た。入るぞ」


 そう言われて、門番達はいずれも躊躇した。

 彼らも第一王女の事は知っている。そうして、王家に対して忠誠も誓っていた。だからこそ、無造作に門に近寄る相手に対して、躊躇ってしまった訳だが……直後に彼らは。


 「「は?」」


 と、驚きの声を上げた。

 無造作に扉を掴むと、近づいてきた蜥蜴人がむしり取ったからだ。

 念の為に言っておくが、正門というのは通常は使用しない。いちいち大型の見栄え重視の門を開けるのは非効率的だからだ。普段、門番や召使いなどは正門横の通用門や裏門を使い、正門の大扉を開くのは公的な使者が訪れる際や、何等かの歓迎会、王家が公式に出かける際などのいわば公的な場面でしか用いられない。

 それだけに大扉は立派なものであり、分厚い木を用いて、金属で補強されており、開閉は内部に用いられた滑車を用いて行う。

 到底、人の手で開けられるものではない、のだが……そんな物を無造作に、それこそ枯れ枝をもぎ取るように、留め金ごと軽々と引き千切って両手に一つずつ持っているとなればそんな声が出るのも当然だろう。さすがに目を疑い、硬直する門番達の目の前で蜥蜴人はスタスタと中へと入っていき、僅かな後ズン!と腹に響く音がした。

 それで我に返った門番達は顔を見合わせると恐る恐る門の中へと入りかけた訳だが……。


 「なあ」

 「なんだよ」

 「あんなの俺達でどうにか出来ると思うか?」

 「……無理だな」


 頷いた二人は素直に諦め、笛を吹いた。

 

 「……第一王女様のご依頼だって話だったし」

 「後は中の奴らが対応してくれるよな、うん」


 城の中から聞こえる怒号に騒音。

 それらが次第に小さくなっていくのを知りながら、彼らは知らんぷりをしていた。

 ……最大の理由は新王に対して、忠誠を誓う気になれなかったというのが大きい。当然、それに付き従う連中に対しても……。

 実の所、現在王宮内部にいる者達というのは基本的に三種類。

 一つは門番達のような基本的な仕事。例えば、門番だとか庭師だとかそういう、ある種の専門的な知識や技術が必要な面々だが、新王と関わる部分は少ない者達。逆に料理人や自身の周囲を世話させるメイドなど新王が自分の身の安全にかかわると考えた者達は外から連れてきている。次が新王に味方する連中で、最後の一つが人質達だった。  

 門番は武装はしているが、他国の貴族の紋章知識や彼らへの対応などそれなり以上に専門的な知識と礼儀作法が必要な為に残されたが、後は武装している者達などほぼ新王側の連中だ。


 (あいつらが多少痛い目を見ても、俺達の知ったこっちゃない)


 そんな意識がなかったとは言えない。

 もっとも結果は正しかっただろう。

 テンペスタと戦って無事に済んだ者はいなかったのだから……。

 なお。


 「では、これで失礼する」

 「「あ、はい」」


 夕方までに出て来たテンペスタが荷物を担いで出て行った後、二人は顔を見合わせる事になる。


 「「…………」」

 「なあ、肩に担いでるアレ」

 「言うな」 

 

すいません、どうにも調子が乗らず、遅れました

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