ある宇宙の一角で5
最近の寒暖差で再び風邪引きました。夜勤に備えて寝た昼は暑かったので窓開けてたのが祟ったか……
もし、明日更新なかったら寝込んでると思ってくださいな……
新たに玉座を得たはずの先王の叔父、以後新王だったが、表には出さずとも苛立っていたのは間違いない。理由は単純で、周辺三ヶ国がいずれも彼の王就任を認めなかったからだ。
かといって、大使らを脅す事も出来ない。現状の自国と大国と呼ばれる周辺三ヶ国との間には拭いきれないだけの力の差があったからだ。下手に相手を怒らせたら、それこそ潰されるだろう。
彼自身は知らなかったが、先王ならば彼らへの貸しも幾つか作っていたし、まずプライベートでは友人と呼べるだけの関係を構築してもいた。
当り前だが、先王も大使らも公的な場ではそんな友人関係は棚上げし、あくまで公人として自国の為に行動するが、それでもプライベートで友人関係を構築するのは重要な意味合いを持つ。誰だって、見知らぬ誰かの為ならともかく、親しい友人になら自国の権益に関係ない範囲でならさりげなく忠告したり、親身にだってなってくれるだろう。
そうやって、三ヶ国の大使らと友人関係を築いていたからこそ、先王は仲介者として、三ヶ国の話し合いの際の立ち合い人として大きな役割を果たしていた。
そして、当然だが三ヶ国の大使も性格は色々だ。彼ら全員と友誼を結ぶまでには並々ならぬ努力と苦労があった。だが、代々の王が苦労してきたその結果としてこの国は三ヶ国のいずれに対しても、この国対して友好的な勢力を築き上げてきたのだった。
そんな先王の努力を彼はまったく知らなかった。
三ヶ国の大使らにしてみれば、実質的に暗殺というだけでも顔を顰めるような話だ。ましてや、その結果として公的な立場としては熟練の仲介者を失い、私的な立場としては友人を失ったのだ。それで玉座を奪った相手に対して好感情を持てという方が無茶というものだ。
これがせめて、叔父とかいう男が先王以上に公的な面では有能だとか、三ヶ国の大使にとって彼もまた友人だった、というなら話は多少変わって来たかもしれない。
だが、そんな奴ならそもそも先王のやり方に対して不満を持って、暗殺して玉座を奪うなんて事はしない。
「まったく、奴には困ったものだ」
「左様左様」
「で、どうする」
王宮を辞した三ヶ国大使達はさりげない会話の中で打ち合わせをして、密かに集まっていた。
王都は現在、厳戒体制にあるが新王が信頼出来て、それなりに有能な奴は自身の身の回りに集めていた。
したがって、王都の見回りを行っているのは下っ端の兵士達が内心で不満を持ちつつ(厳戒体制という事で非番の者まで駆り出されたのだから当然だが)、見回りをしていたが、そんな下っ端の兵士達でもしっかりと教えられている三ヶ国の紋章をつけた公的な馬車を止める度胸など、ましてや外を出回るなと命じる気持ちなど持てるはずがない。
結果として、彼らは堂々と三ヶ国大使の一人の私邸に集まっていた。
「先王殿は惜しい事をしたが、問題はこの後だな」
「それなのだがどうも王宮に入れていた手の者によれば第一王女と第二王子が脱出に成功したようだ」
「ほう」
この手の者、という奴だが実の所、公然と送り込まれていた。
この国にしてみれば「どうせ何等かの手段で送り込まれるのは確実なんだし、防ぎようもないんだからそれならある程度は堂々と迎え入れておいた方がこっちからも裏から情報流すのに最適」と割り切った結果だったりする。無論、知る者は極僅かで、表向きは目立たないよう然程重要ではないが、王に何等かの要件で呼ばれてもおかしくないような立場に就いていたりする。
そんな一人が脱出の情報を掴んだのだった。
「第一王女というと……女だてらに騎士をやっているという」
「ああ……というか第一王女といえば確か……」
「ああ、うちの第三皇子殿が一目惚れして、婚約しているな」
さすがに三ヶ国のどこかの王妃とかになるというなら拙いが、継承権も低い第三皇子ぐらいならそこまで目くじらを立てる必要はない。
「まあ、うちの殿下は着飾っただけの女が嫌いでな……かといって皇子の関心を引く為に剣を習う程度の女も嫌いと陛下も悩んでおられてな……」
「……確か、立場を隠してこの国の近衛騎士らの鍛錬場に顔を出されて……」
「第一王女を見つけて、勝負を挑んだ所真っ向から堂々たる戦いぶりを見せられて、それでその場で『惚れた!俺の嫁になれ!』、でしたかな?」
案外有名な話なので他二人も苦笑しつつ言ったが、即座に真剣な顔になった。
「根回しの関係で表立っての発表はまだでしたな?」
「……失礼だが、第一王女が暗殺で殺されたとなった場合、貴国は……」
「……既に正式な婚約は結ばれている。第三皇子といえど皇太子たる第一皇子殿下とは母を同じくする実の兄弟で、第三皇子ご自身が王位に関心がない為、仲もよろしい。我が国としては間違いなく兵をあげる事になると思って頂きたい」
はあ、と全員が溜息をついた。
「……その事はあの男には?」
「明かせる訳なかろう。まだ本国の許可が得られておらん!」
「……次期王の実弟である第三皇子の婚姻ともなれば、根回しもそれなりに時間かかるでしょうしな……」
「ああ、皇帝陛下や王妃様、皇太子殿下らは『女に興味を示さなかった第三皇子が』と大喜びなのだがな」
それだけに第一王女が亡くなりでもしたら、間違いなく陛下らまで激怒すると言われては他二国としてもどうしようもない。彼らだって自国の直系王族が正式に婚約した家の娘が暗殺されたとあっては面子の関係上相手を叩き潰さざるをえないという事は理解している。
ただ、その場合は……この国は呑み込まれる可能性が高い、という点が厄介だった。第一王女が殺されるような状況ともなれば、共に脱出した第二王子もなくなっている可能性が高く、そして今回新王を名乗る男は一族抹殺される可能性が高い。そうなれば遠縁の者を担ぎ出して、という事になるが担ぎ出された者が果たして使い物になるかどうか……。
そんな彼らの悩みは急報にて中断する事になった。
「「「亜人一体が王宮に真正面から乗り込んだ!?」」」
「はっ、しかも既に正門が破られ、内部では尚も戦闘が繰り広げられている模様!!」
さすがに困惑した顔を見合わせる一同だった。
「なにが、起きている?」
という訳で、現在の周囲三ヶ国の大使達でした
前回出て来た第一王女と婚約結んでる第三皇子ですが、「政治なんて面倒なものは兄貴に任せた」と公言してますが、実際は謀略も含めた各種戦略戦術を駆使する名将でもあります
要は下手にお家争いを起こさせない為の当人なりの方針ですね。まあ、実際、皇帝になる事に興味がないのとか、香水だダンスだ宝石だ詩歌だ観劇だといった事にしか興味示さない一般的な貴族の女性に関心が持てないのも事実なんですが




