表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
143/211

北方研究譚

投稿遅れました

 『第二次人竜事変』、そう呼ばれた戦闘から少し世界は変わった。

 

 まず最大の点はこれまで潜在的に存在していた「竜の討伐」という言葉が消えた事だ。

 それを口にしていた者達には色々な立場の者がいた。単なる一般人から政治家、財界人、記者を含めたマスコミ業界に至るまで様々だ。当然、その理由もそれぞれに異なっていた。

 例えば、ある政治家は中央と北方二つの大陸を竜や龍達のものと認めるような現状はどうなのかと常々訴えていた。単純に領土拡張という面で言えば、国家として誰かが統治している訳でもない広大な土地が広がっているのにそれを放置しているのはどうなのか、或いは経済面では二つの大陸には間違いなく資源が豊富に眠っているはず、という意見もあった。

 単純に竜を認めないという者もいたし、そうした者もその理由は様々だ。

 単なるトカゲと見ていた者、人こそが頂点に立つのだと主張していた者、単純に人がかつて負けたけど今なら!なんて者もいたし、そうした人達に煽られて乗ってるだけな人もいた。


 そうした人々が全部消えた。


 政治家は論調を変えた。

 財界人はリスクが大きすぎたと認め、主張を取り下げた。

 マスコミも今、下手にそんな事を主張してきた人達を前に出したら、まだ民衆はどうとでもなるとしても国やスポンサーから睨まれかねないと判断して自主的の言葉の元にそうした主張をしていたコメンテーターを呼ぶのをやめ、そうした主張をおおっぴらに書いていた記者の記事を出さなくなった。

 一般人の中には未だに主張をネット掲示板やブログに書き込む者もいたが、ことごとく叩かれ、炎上した。

 結局の所は感情論などの「きっと何とかなる」「どうにもならないって保障があるんですか?」といった意見しか彼らが返せなかった事に尽きる。核融合弾ですら平然としていた上、放射能すら除去してしまうような相手に「どうやって対抗するつもりなのか」という主張に、具体的な形で返答が一切示せなかったからだ。

 結局、極一部が賛同者とだけ集まって、盛り上がるだけの場にはなっていたようだ。


 さて、そうした強硬策が無意味と分かった事で逆に活性化したような人達もいた。

 まず最初が宗教団体。

 最大手の聖竜教はもちろん、新興宗教含めて竜を崇めるような教団は軒並み勢いが増した。

 なにせ、聖竜教徒でさえ「昨今は信仰心はピンキリ」と言われていたのが一気に真剣な信者が増えたと言われるぐらいだ。

 ……カルトも増えたが。

 ちなみに前述の感情論で盛り上がってる竜討伐主張した著名人にこうしたカルト竜信仰信者がテロを行ったという実例さえ生まれたほどだ。もっとも、それでさえほとんどのマスコミは報じなかったどころか、テロを支持する発言さえ掲載した程、この時期の竜信仰は盛り上がっていたとも言える。

 これを恐怖の裏返し、と言った学者もいたほどだ。


 次に盛り上がったのが学者達。

 彼らの主張は「相手を知らなければ、交流のきっかけも掴めない!」という主張の下、更なる研究資金の増額を要求した者が多々出た。

 無論、かつて起きたような暴走するような連中は徹底的に排除される事になったのだが……。


 「素晴らしい!!」

 「いやあ、これまでこっちはろくに調査の手入れられなかったからなあ!」


 北方大陸への調査に入る学者と、トラブルが続出した。

 と、言っても馬鹿な事をやらかして、という訳ではない。

 これまで北方大陸はほとんど調査の手が入っていなかった。

 広大な大陸ではあるが、危険が大きすぎたからだ。中央大陸が知恵ある竜達によって統制され、一定の安全が現地人達によって確保されていたのに対して、北方大陸は「竜王はいるのか分からない」という点が大きかった。竜王や龍王がいれば下位竜であっても一定の安全は期待出来る。つまり、「航路」を通るだけならまだ安全だ。

 しかし、北方においては襲撃が度々報告されていた。

 北方大陸の寒さは怖ろしいレベルで、もし、レアメタルや金銀財宝が眠っていたとしても採掘施設を設け、維持するには気象面だけ考えても莫大な経費がかかるのが確実だった。

 ましてや、食料だけでなく、燃料も全てを持ち込まねばならず、しかも海にも陸にも下位竜がゴロゴロしているという場所。資源採掘を目論むにしても、まず上陸して調査するだけでもとんでもない経費と手間がかかるのが分かり切っている状態では「割に合わない」と領土欲を持つ政治家も、鉱山などに興味を示す財界人も手を出さなかった。

 何しろ、それ以上に楽な気象条件で広大且つどこの国のものでもない中央大陸というものが目の前にあったのだから。

 唯一の例外が科学者だったが、そんな状況では予算も満足なものがおりず、そして十分な資金と国のバックアップなしではとても研究が十分に出来るような場所ではなかった。


 そんな場所ではあったが、中央大陸に手を出す事が事実上不可能だと判明した事でようやく北方大陸に目が向けられる事になった。

 要は「中央にはもうこれ以上手は出せないし、北方に何かしらいいものないかな?」という事だったりする。

 無論、その過程で護衛によって一部の下位竜の討伐は為される訳だが、この下位竜の屍骸も研究者達にとっては宝の山だった。


 「竜王様達、怒ったりしないかな?」


 という事で軍人達はいずれも恐る恐るではあったので、結果として乱獲などは為されず、あくまで襲ってきたものを返り討ちにしただけだったが……。

 結果から言えば、学術的には貴重なものが多々見つかったし、中には素材的にも貴重なものは多数見つかった、訳だが……。

 問題は調べれば調べる程、「割に合わない」と判断せざるをえなかった事にあった。 

 北方大陸の夏を狙って上陸した訳だが、沿岸部の夏でさえ北方大陸の気象はマイナス30度を超える日はなく、寒い日は50度を割った。秋が近づくにつれ、気温は更なる低下を見せる有様であり、遂に無理を押して採取に出た学者三名が瞬間冷凍されて死亡した状態で発見されるに至り、これによって「短い夏以外では局所的にマイナス200度近くに達する」気象現象が起きる事が判明した。

 こうなっては命あっての物種、という事で撤退せざるをえなかった。

 が、その後も夏限定の北方の研究は今も続いており、気象的素材的両面から幾つもの発見は今もなお続いている。


 『ちょっと騒がしくなったかしらね?まあ、奥まで来ず、面白半分に殺している訳ではないようだから見逃しておきましょう』


 なお、今なお、北方大陸の奥においては荒れ狂う気象によって観測が出来ていない……。

 

この星の衛星事情


現時点で、この星においては宇宙への進出は未だ為されておらず、また衛星の打ち上げも成功していません

実はこの星がスーパーアース級の惑星である事が大きな原因となっており、重力の壁が大きな問題となって立ちはだかっています

これは2018年にドイツの研究者が提唱した話でもあり、スーパーアースでは地球より重力が巨大である為に打ち上げにかかるコストが膨大なものとなる、というものです。彼が仮定したスーパーアースのケースで言えば、アポロ宇宙船並の打ち上げを行うのにかかる燃料の重量はギザの大ピラミッドにも匹敵する莫大なものとなる為、化学燃料による宇宙進出は極めて困難、というものです

この世界ではそれが現実に立ちはだかり、宇宙進出が未だ為されていない、という事にしています。……竜以外はね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ