事件後の隣国での出来事
平成最後の投稿となります
令和に入ってからもよろしくお願いします
空を舞う大型航空機があった。
早期空中警戒機と呼ばれる大型のレドームを背負って飛ぶ機体だ。
「いやあ、最近はめっきり暇ですね」
内部にはパイロット以外に管理要員が乗っている訳だが、その一人がどこか嬉しそうに呟いた。
まあ、それはそうだろう。誰だって何も起こる事なく、仕事が終わるのを願っている。彼らが忙しい時というのは他国の軍用機が飛んでいるという時であり、最悪彼らの判断が軍事衝突を生む可能性すらあるのだから責任重大だ。
「まあ、隣国がアレっすからね」
「竜の方々に手なんぞ出すから罰が当たったんだろう」
最近配属されたばかりの新人の言葉に一人が顔を顰めて(しかめて)言うと、真剣な表情で新人以外の全員が頷いた。それどころか……。
『それには全面的に賛成だな』
と、パイロットまで同意する。
実の所、新人以外は搭乗している全員が聖竜教の篤い信者だったので当然ではあった。
「……そうや皆さん、聖竜教信者なんすよね?何でなんすか?」
新人にはそれが疑問ではあった。
というのも、これがまだ『この機体に聖竜教信者が集められた』というなら分かるが、話をしてみれば搭乗員に聖竜教の信者が実に多い事が分かったからだ。というか、空に上がる前にどの機体でも搭乗員が揃ってお祈りをしていれば誰でも分かる。
『竜の神よ、今日もまた空へと舞う我らに加護を』
そう真剣に祈りを捧げた後、乗り込んでゆく搭乗員の姿を見かけた事はこの機体以外でも一度や二度ではない。
まだ機体にお守りが貼ってあるだけとかなら分からないでもないが、全員が全員毎回のように真剣な表情で祈りを捧げている様子や、わざわざ機体内部に竜の神を祭る神棚が設けてあったりすればそんな「とりあえず聖竜教信者」みたいな軽いものではない事は分かっていたので、どこか恐々、といった様子だったが。
そりゃそうだろう。上司や先輩、同僚全員から睨まれたりすれば今後居心地が悪くなるどころではない。
とはいえ、幸いな事に全員がその言葉に苦笑した程度だった。
「まあ、そうだよな」
「俺達も昔はそこまで熱心な信者って訳でもなかったし」
『俺なんか昔は聖竜教の信者ですらなかったよ』
そう口々に言う。
つまり、それは……。
「皆さん、こうやって乗るようになってから信者になったんすか?」
つまり、それは乗るようになってから、信者になるような事が起きた、という事だ。
「ま、そうだな。……そろそろ時間だ。お前さんも来い」
そう告げると一斉に席を離れる。
「え、あの、これ拙いんじゃ……」
「気にするな。どうせ今の時間帯は『絶対誰も来ない』」
断言する言葉に首を傾げつつも、移動する。
早期空中管制機というものは本来外が見えるような窓はろくについてないものなのだが……どういう訳か、この機体には観覧席とでも呼ぶような外が見える場所がある。それはつまり、この機体を作る過程で、そうした要望があったという事……つまり、それが出来るだけの権力を持つ上層部の関与があったという事だろう。
一体何故、その疑問は到着して間もなく知る事が出来た。
「うわ……」
綺麗だった。
そして、恐ろしく、気付けば……新人の目からは涙が溢れ出ていた。
そこで見えたのは一体の竜。
航空機を大きく上回る巨大な六枚の翼に柔らかい羽毛のようなものが体を覆い、淡く金色に輝きながら悠然と空を舞うそれはただひたすらに怖ろしく、そして綺麗だった。
「聞いた事はあるだろう、空の竜王様だ」
「これが………」
ああ、成る程。
こんなものを見てしまったら、人の身に出来る事は恐怖するか、それとも崇めるかのどちらかしかない。
それぐらい、目の前の存在は人を遥かに上回ると見た瞬間にそれこそ「魂が納得する」としか言いようのない光景だった。そして。
「竜王様……あ、じゃあ」
「ああ……竜神様も一部の連中はお目にかかった事があるが……更に凄い、としか言いようがないぞ」
そうか、と新人はストンと納得した。
おそらく、この空域はかの竜王の通り道なのだろう。そうして、この御姿を見れると分かっていたから、この機体にわざわざ外を見れる場所が設けられた。
とりあえず、基地に戻ったら聖竜教に入信してこよう、きっと隊長達もすんなり許可をくれるはずだ、と思いながらどうしても思わざるをえない事をふと口に出した。
「隣国の連中、何で手なんかだそうって気になれたんすかね……」
まったくだ。その言葉に全員が頷いたのだった。
本日朝から出かける用事があったので早めに起きて書き上げてましたが、間に合って良かった…!
まあ、友人と遊びに行くんですけどねw帰って来るのは夜になるから……
ネット小説大賞は一次は通ってたものの、今回は二次で落ちました。残念




