炎の後
「やったか!?」
そんな声が司令部に響いた。もっともそんな歓声を上げたのは極一部で、大部分の者は苦い顔をしている。
今回使用された核融合弾は2メガトンクラスの水爆が全部で三発。
威力自体はもっと強烈なものがない訳ではないが、やはり国内の領土で使用するという事に反対意見が多く、最終的にこの数字となった訳だが、「国内で爆発させるぐらいならこのままもう手出しせずに息を潜めていた方がいいのではないか?」という意見すら出た程だ。
それでも最後は使用が決断され、国内の土地を汚染する事を覚悟の上で使用された。
この時、最終的に核融合弾の使用が決定された事には、もう一つの意味があった。それは実戦での核融合弾の使用がこの星では未だされていなかったという事だ。つまり、開発され、実験も為され、確かに高い威力が出るのだと分かってはいたが、実戦でどの程度の被害が出るかは、どんな惨状が展開されるかは未知数だった。
まさか、実験で自軍の兵士を生贄に差し出す訳にもいかない。
だから使う。
竜王というこの上ない獲物を対象として。
「どうなった?」
「あの爆発だ、ケリはついている」
「さすがだな、高い開発費をかけただけの事はあるという事か……」
そんなもう勝ったと言わんばかりの者がいる一方で厳しい表情を崩さない者もいる。
「いい気なものだ、まだ終わったと決まった訳でもあるまいに」
「そもそも終わっていたとして土地の汚染はどうする気だ……」
「後始末には手間がかかるだろうな」
それでも大半の者が「さすがに追い払う事ぐらいは出来るだろう」、そう考えてはいた。
だが、そんな考えは間もなく崩される事になる。
「ほ、報告致します!!」
泡を食った様子で通信兵が叫んだ。思わず、皆の視線が彼に集中する。
「健在!敵竜は尚も健在です!!」
「「「なんだとっ!!」」」
「では奴には、竜はどの程度の損傷が見られるのだ!」
あれでも倒れなかったのか!彼らの考えはそんな思いだったが、それすら即座に打ち砕かれる。
「そ、それが……無傷、と……」
シン、と司令部が静まり返った。
直後、怒号とも言える大声が飛ぶ。
「無傷だと……そんな馬鹿な話があるか!!もう一度確認したまえ!!」
「は、はっ!……こちら司令部、もう一度確認したい」
重苦しい時間が過ぎた。
僅かな時間ではあったが、おそろしく長く感じられた時間だっただろう。そして。
「……間違いありません。竜は今も健在、飛翔を続けているとの事です。確認出来る損傷は見受けられず、と……」
「地上部隊からも連絡が取れました……最大望遠で確認するも損傷は見られず、現在も攻撃前と変わらぬ高度及び速度で前進中との事です……」
最早誰もが声を出す気力すらなかった。
核融合弾という大規模破壊兵器を用いてすらまともな損害を与えられない。それは彼らの持つ現行の兵器ではまったく歯が立たない事を意味していた。
――――――
一方その頃。地の竜王はのんびりと考えていた。
(やれやれ、やっと静かになったか。先程、少しばかり日差しが強くなったようだったが何かあったかな?)
確かに恒星も核融合によって周囲に光と熱を放っている。
しかし、核融合弾の直撃と恒星からの日差しが同じものかと言われれば人族は「断じて違う!」と言いたいだろうが……竜王にとっては同じなのだ。それは地のみならず、風や水であっても同じ事。
(あーこれでやっと風のが言ってた風景とか落ち着いて見れそうだ)
元々低空を進んでいたのは以前から風に聞いていた風景と言う奴をこの機会に見てみようと思い立ったからだった。のんびりと空を飛びながら、ゆったりと周囲に視線を巡らせるのだった。
風邪気味かも……
先に引いた上司に移されたか、それとも季節の変わり目に暑いからと布団をはだけて寝ちゃったりしたのが拙かったのか
皆さんもご注意を




