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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
137/211

交戦

 『第二次人竜事変』


 人類の過半が中央大陸から叩き出される事になった人竜戦争、大戦時に一部国が中央大陸へと侵攻して返り討ちにあった第一次人竜事変に続く、人類と竜による交戦とそれに伴う一連の事態を指すもの。

 

 これまで人類と竜との交戦に関してはまともな映像記録が存在していなかった。

 人竜戦争が伝聞を主体とする伝承のみとなっているのは直後の混乱を考えればやむをえないが、第一次人竜事変においても侵攻した部隊の主だった艦が全滅状態にあった事、対象国の敗戦に伴う戦後の混乱において多くの資料が失われた事などから現在では僅かな写真が残るのみであった。

 これに対し、この第二次人竜事変においては多数の映像記録が残っており、竜という存在がどれ程脅威なのかを世間に実感させる事となった。



 ――――――――――



 IF、もしも、というのは誰にでもある。

 もし、あの時こうしていれば。

 誰にだってそんな後悔はあるだろう?


 もし、地の竜王に攻撃を仕掛けたのがもっと沖合だったのなら。

 もし、地の竜王が反撃した時、対象となった地上攻撃機がより高空を飛んでいたら。

 もし、反撃のタイミングがもう少しずれていたなら。


 あの攻撃の瞬間に関してそう口にしたくなる者は多数いただろう。

 結論から言えば、反撃のタイミングが最悪だった。

 地の竜王の攻撃は直線的なものだったのでウェーベルが水平線の向こう側にあれば、余波はあっただろうが大きな被害はなかったはずだ。無論、こういう言い方をする事からも分かるように既にウェーベルは地の竜王の視界に入っていた。

 もっとも攻撃を仕掛けたパイロット自身が次第にウェーベルに近づく地の竜王という状況に我慢しきれなかった結果起きた事であり、攻撃を受ける程に近かった事は仕方ないと言えるだろう。

 この他にも反撃を行った時、目標となる攻撃機がウェーベルとの直線上にいた事、攻撃機のやや後方に向けて発射し、それを攻撃機を追尾する形で横に動かした為、結果としてより遠方のウェーベルに対して薙ぎ払う形となったのも大きい。

 では、当のウェーベルはどうだったのか?

 この時、既に『念の為に』ウェーベルに対して避難勧告が出ていたのだが、世の中そんな素直に避難する人だけなら誰も苦労しない。

 それどころか、怖い物見たさ、というべきか。自分から海岸へ見物に向かう野次馬も多数存在していたのが実状だった。そして、警察もまた勧告段階では強制的な権限を振るう訳にもいかず、また海岸線自体が広大な事と数の多さもあって、人手が足りず、海岸へ向かう者をいちいち停止させる事も出来なかった。結局、警察に出来た事はパトカーで避難勧告が出ているので避難を促す放送を流して回るのが精一杯で、もちろん、それで避難するような連中ならそもそも野次馬にならないとも言う。

 結局、こうした者も含め警報が出された事で、素直に従って郊外へと自主退避を開始したのはほんの一握り、大多数は「どうせ大した事にはならないさ」と通常通りの生活を送っていた。もちろん、会社などで仕事をしていた者の大多数は会社の許可がなければ(職を失う覚悟がなければ)避難は出来ない。

 もちろん、中には素直に勧告に従い、従業員を避難させた会社もあるにはあった。

 だが、大半の会社はそれに従う事なく、通常通りの営業を続け――事態を甘く見たツケを自分達の命で支払う事になった。

 一つだけ彼らに幸いだった事があったとしたなら……苦しむ事もなく、それどころか何が起きたかも分からないまま一瞬で消滅した、という事だろう。


 そうした意味では余波による被害を受けた方が悲惨だった。

 巻き添えとなった最初の都市への攻撃で実に都市部の30パーセントが消滅し、余波でおおよそ40パーセントが被害を受けた。この被害を受けた、というのは爆風で転んで擦り傷、とか物が倒れた、といったレベルは含まれておらず、家屋の倒壊を含む重大な損傷という意味での被害だ。

 当然、そこには多数の死者重傷者が発生した。

 ここまでくれば避難すべきだったと理解出来ただろうが、この時点では既に遅かった。だが、それでも今更ながらに慌てて人々は逃げ出し。

 ――そして、パニックが起こった。


 『御覧ください!現在地上は大パニックです!!』


 そんな光景を飯の種にしている者達もいる。

 この報道ヘリが避難誘導や、救助活動をしている軍や警察のヘリの活動を邪魔していたとして後々問題になる訳だが、そうなるぐらい盛大に活動していた。

 もっとも、彼らからすれば「自分達も命がけでやっている!」と反論するだろうが……ウェーベルにあったテレビ局や新聞社なども少なからぬ会社が地の竜王の攻撃で消滅していたのは事実だった。とはいえ、それで実害を受けた人達からすれば「ふざけるな!」と言いたくもなるだろうが……。


 『あっ、竜の姿が見えてきました!!』


 カメラの向きが変わる。

 テレビの画面には海の彼方からやって来る地の竜王の姿が映っていた。


 『これは……大きいです!周囲を飛び回る小さな虫のようなものが見えるでしょうか?あれが我が国の戦闘機です!!』


 地の竜王は一つの巨大な山に匹敵する。

 幾ら戦闘機や地上攻撃機が全長15から20メートルに達するような機体であったとしても巨大な山一つに比べれば小さなものだ。


 『あっ、今爆発が見えました!攻撃の最中でしょうか!』

 『爆発が連続しています!一体何機が攻撃しているのでしょうか!!』』

 『ちょっとカメラさん!あそこもう少しアップで!』

 『現地、もう少し近づけませんか?』


 『そこの報道ヘリ達!!ただちに後退せよ!!現在ここは戦場である!!』


 明らかに怒っている声で軍のヘリからの警告も飛ぶが、報道ヘリは完全に無視している。  

 実はこの時、一部の軍人は怒り心頭で報道ヘリの撃墜許可を求めていた程であった事が後に判明している。救助活動には危険な飛行を行う場面もあるのに、そうした場所でギリギリの飛行を行っている最中に報道を盾に近づいてこられたらどうなるか。余計な危険が増すだけだ。

 幸いにも現在、地の竜王は最初の一撃以降は長射程広範囲攻撃を行ってはいない。

 しかし、それでも何機もの戦闘機、攻撃機が撃墜されている。仲間が幾人も戦死しつつも必死に時間を稼いでいる傍で、報道の名の下に見世物扱いされていればそりゃあ腹が立つのも当然だろう。


 『いいから指示にしたが』


 そう怒鳴りかけた直後、すっと陽が陰った。

 余りにも唐突な変化。

 そして、軍のヘリは共通の通信から事態を把握していた。


 「……嘘だろ」


 思わずヘリのパイロットはそう呟いた。

 一瞬、一瞬でまだ何キロも先にいたはずの地の竜王がウェーベル上空へとその姿を移動させていた。 

 

水平線の位置は地球の場合で3570(地球の半径)√H(高さ)

地球と同じ場合、地の竜王が高度400mにいたと仮定すると水平線は約70キロ程になります

この星は地球より大きいので実際はそれより遠くになります(100キロ以上)


あと、地の竜王が低空飛行なのは自身の身の丈の関係もあります。高度400mぐらいで自身の体の一番高い所は5000mを超えます。現在の竜王中でも巨体という意味合いでは一番ですね

というか、ベヒモスもそうでしたが地系統は体が大きいものが多く、基本体のデカさは地>>>水>>火>風となります 

テンペスタ自身は複合体なので水並かそれ以上の巨体ですが、地ほどではありませんし、分身なのを活かした縮小も可能です


なお、地の竜王自身は「うっとうしいなあ、ちょっと速く移動しよ」で振り切っただけのつもりです 

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