第二次?
急に友人から連絡があってメシ行ってました
戦争の始まりとは何がきっかけだろう?
延々と交渉が行われた末に堂々たる開戦が行われる事もあるが、大抵の場合は予想外の一弾から始まったり、奇襲攻撃から始まったりする。
地の竜王が上陸を開始する直前、彼の竜王の傍にいたのは地上攻撃機の小集団だった。これは地の竜王の速度が対地速度でおよそ時速四百キロ程度と微妙な速度であった為だ。
ジェット戦闘機では速度が速すぎる。
元々、ジェットエンジンというものは大体音速に対して0.7倍から0.8倍で最も効率良い飛行速度となる。つまり、その半分程度の速度というのはただでさえ燃費の悪いジェットエンジンの効率は更に悪化する事になるという訳だ。
では、ヘリはというと、こちらにとっては速すぎた。
元々ヘリというものは長距離を飛行するのには向いた機体ではない。また、速度は案外遅い。基本的に戦闘ヘリであっても最高速度は三百程度、限界でも四百には届かない。
とはいえ、非武装の輸送機を飛ばすのはさすがに反対が多かった。
これに対して、地上攻撃機というものはこの速度帯でも安定した飛行を可能としている。故に、地上攻撃機が選ばれた訳だが、この時全機がフル武装していた。もちろん、ミサイルなどではなく対地用の装甲目標を貫通させる為の爆弾の類をギッシリとだ。
そうなっていた理由はどうにもはっきりしない。
曰く『若干巡航速度より遅いのでウェイト代わりにつけられた』
曰く『不安を訴えた搭乗員を少しでも安心させる為』
曰く『万が一の攻撃命令に備えて』
はっきりしない理由は単純だ。
当時、現場にいた者で事情を知る者が皆無だからだ。
これに対して、最初の一弾が放たれた理由ははっきりしている。これは当時、別の基地にいた通信員が機体間の通信を傍受していたからだ。仮に小隊のメンバーを隊長以下A及びBとする。
A「隊長!このままだと奴はウェーベルに上陸しますよ!!」
(注:ウェーベルは当時の沿岸部にあった大都市であった)
隊「分かっている、だが、攻撃命令は来ておらん。我々が受けた命令は監視のみだ」
B「そうだぜ。それに案外、奴さん何もせず通過するだけかもしれねえだろ?下手に藪を突いて怒れる竜が出て来たらどうすんのよ?」
隊「少し落ち着け。何を興奮している」
A「……俺の故郷、ウェーベルなんですよ」
A「攻撃しないかもしれない。けど、するかもしれないんでしょう?」
隊「……どちらになるかは誰も分からん。だから、俺達は命令がなけりゃ攻撃してはならん」
B「そ、そうだぜ!それに俺らの攻撃程度で奴さんが痛がるのかよ!?手出したせいで、ウェーベルがぶっ壊されるかもしれねえんだぜ!」
こうした会話が残されているが、次第にAは感情をヒートアップさせていき、追い詰められた精神的状況になっていったようだ。そして。
A「…………すいません」
隊「おい、やめろ!」
B「引き返せ!!やめろーっ!!」
この会話の直後に投弾が行われたと思われる。
そう、この攻撃が元で地の竜王との戦端が開かれる事になったと言える。
この一撃はこの後も続く通信内容から地の竜王の頭部に集中して命中。なまじAの腕が良かった事がその原因であったと言える。そして……。
A「命中!」
B「……全弾頭部に命中。いっそ外れてくれてりゃ良かったのに」
隊「……奴は、いや、分かり切ってるな。胴体は浮いた、ままだ……」
B「っておい!!何する気だ!!爆弾効かねえのにそんな豆鉄砲通じる訳ねえだろうが!!」
この通信から大口径機銃での攻撃が行われたと思われる。
毒喰らわば皿まで、というべきか。攻撃を行った事でタガが外れたのか、この後も攻撃を続けたようだ。
さて、そうして爆弾の攻撃が通じなかったとしても、機銃での攻撃が実質効果なかったとしても……果たして、頭部の周囲でひたすらに飛び回ってちょっかいをかけてくる相手をどう思うだろうか?人であれば、例えそれが実害のない羽虫だったとしてもうっとうしいと潰そうとしたり、手で払ったりするだろう。
そして、それは竜も同じだった。
地上攻撃機は同じ航空機を撃墜する為の機体ではなく、下手に降下すれば自分達まで竜に敵視されるのでは、煽ってしまうのではと考えると残る二機が動けなかったのも仕方ない部分もあるだろう。事実、この時二機はBが説得すると共に、隊長機はAの撃墜許可を求めていたようだ。
問題は混乱した上が最終的に許可を出す前に、竜王が攻撃を、Aに対して苛立ってしまった事にある。
最悪な事にそれはAの乗った地上攻撃機が高度をほぼ竜と同程度まで下げた時の事であり、地の竜王の放った重力波による攻撃の直線上にウェーベルがあったという事だ。
第二次人竜大戦と呼ぶ者がいて、人竜紛争と呼ぶ者がいて。
誰も望まぬ戦いは一人の暴走から始まった。
次回はテンペスタ(分体)の対応です




