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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
135/211

頭痛に悩まされる人達

 ある部屋で、音声と共に映像が流れていた。


 『……ブラボー・ツ―よりコントロール。探してたお客さんを見つけたぜ』

 「こちらコントロール、シックス、やっこさんの状況を知らせ」

 『あいよ、やっこさんは現在速度三百キロ、高度百を尚も大陸方面に進攻……いや、違うな、とにかく進んでいる』

 「そのまま監視を続けられるか?」

 『厳しいな。この速度じゃあ……戦闘機よりは長時間低速で飛行可能な哨戒機あたりを寄越して欲しい』

 「危険はないか?」

 『確認の為、近くを飛行してみたが特に反応はなかった。こちらから攻撃を仕掛けなけりゃ大丈夫だと思うが……』

 「分かった、とりあえず至急上に連絡する。もう少し我慢してくれ、オーヴァー」

 『なるだけ早く頼む、オーヴァー』


 プツリ、とここで映像は途切れた。


 ―――――――


 「さて、諸君。このように現在、巨大な竜が我が国に向かっている」


 最初に発見したのは商船の乗組員。

 航行中に船のすぐ上空を低空で飛んでいく竜の姿に泡を食って通報してきたのが最初だった。

 無論、最初は誤報だと思われた。竜というものは中央大陸近辺以外では高空を高速で飛行する風竜が目撃される程度で、それも被害を受けた事はない。お陰で、一部の地方では目撃されると「今日は良い事ありそうだなあ」みたいなものとなっている所もあるという。

 しかし、その後、他の船からも通報が入った事から念の為にと緊急発進スクランブル発進した戦闘機による確認が行われた所、事実と判明。

 高度百を一つの山サイズの巨体が動いているとなれば、ましてやそれが上空を通過していったとなればパニックに陥るのも当然だろう。そう判断せざるをえなかった。


 などと考えていられたのはそこまで。

 直ちに情報は上に伝えられ、更にそれが上へと伝わり大騒動になった。

 

 『一体何故』 

 『何を目的としているのか』


 それが分からないからこその騒動だ。

 誰が山のように巨大な竜が自国に接近しつつあると言われて落ち着いていられるというのか!

 一部の馬鹿な議員達に至っては「先制攻撃を仕掛けるべきだ!」と喚いたという……攻撃を仕掛けた結果、怒らせたらどうするというのか!


 「攻撃前に議会によって強硬に攻撃が主張された、として賛成された議員のお名前も公表させて頂くが構わないでしょうか」


 そう職業軍人のトップである統合作戦本部長が答えた所、主張した議員達は大騒ぎしたらしい……「脅迫する気か!」「軍の暴走だ!」と叫んでな。尤も統合作戦本部長は淡々としていた。


 「そのようなつもりは毛頭ありません。軍が尻込みする中、議会がきちんと主張したからこそ撃退出来たとなれば功績は大です。となれば、きちんと責任の所在を明確にしておく事は重要かと」

 

 無論、迎撃に失敗した場合、責任を我々共々追及される可能性はありますが。

 そうボソリと付け加えるのは忘れなかった。

 これで連中も黙った。不満はあるだろうが、下手にちょっかいを出す事を命じて、結果として失敗の上被害が出たとなれば責任問題だ。マスコミもこぞって騒ぎ立てるだろう……軍の責任もそうだが、慎重策を主張する軍を議会が押し切ったとなれば議会の責任も無視出来ない。いや、むしろ軍より責任は重いと言われる可能性は高い。

 しかし、これで議会が黙ったとしても対応策をどうするかは決まっていない。


 「軍はどう考えている?」

 「我々としては攻撃は見送るべきだ、攻撃は相手が攻撃を仕掛けてきてからにすべきだというものです」

 「弱腰にすぎないかね?被害が出てからでは遅いのだぞ!!」


 確かにその通りだ、しかし……。

 

 「ですが、我々の攻撃がどこまで通じるかも分からないのです。……中央大陸の人間は記録に残っている限り、生身の人でありながら魔法を用いて戦車砲弾ですら防いだと言います。……竜であればどうなるか。やるとなれば核の使用も許可していただかねばなりませんが」


 それでも通じるかは分からんな。

 そして、平気だったりすれば……当然怒るだろうな。強硬な主張した閣僚も顔が引きつっている。


 「か、考えすぎではないか?昔の武器での話だろう?」

 「重機関銃などは昔と大して変わっていませんよ。当時の威力でも十分すぎてこれ以上強化する意味がないんです」


 魔法を使われなければ、十分すぎる威力がある。

 となれば、より威力を高めた新型を開発するとなるとどこで使う気かと考え出すか……当然、中央大陸に進攻する気か?と疑い出す者が出るだろう。そうなると世界各国で軍拡が始まる可能性は高い。中央大陸という美味しそうに見える相手を相手に取られてなるものかと考える者が……いや、それだけじゃない。余所が中央大陸を勢力下に入れる事を警戒する者も出てくる。そうなれば慎重論など吹き飛ぶ……。

 最悪、大戦再び、という事にもなりかねない。

 それを指摘すると全員が押し黙った。否定出来なかったんだろうな。強硬な主張をした閣僚も顔が蒼褪めていた。


 「それに戦艦の砲など当時の方が単純な威力は高かった武器もあります。今では効率が悪いとして存在しませんが……」


 そうか、そういうのもあったな。

 今は精密に狙った相手だけを破壊する、という事が主体となっている分、そうした出番のない兵器は淘汰された。持っているだけで維持費がかかるからな、それも洒落にならない金額が、だ。戦艦の主砲なら数十キロ彼方の敵を攻撃可能だが、ミサイルや攻撃機ならそれ以上の距離を精密に狙える。当然、出番はそっちが増える。戦艦の主砲なら命中したとしても、民間人の死傷者も莫大なものになるだろう。それもまた非難の対象になる。

 だが、今回のようなひたすら頑丈な相手、となると……戦艦の主砲みたいなものの方が有効ではあるか。

 結局、攻撃は見送る。様子を見るという事になった。無論、即応体制は整えた上でだ。これから広報となるが……ああ、胃が痛い。

 だって、政府広報の役を担うのって、つまりそれを説明するの俺なんだぞ……。

という訳で、地の竜王移動を開始しました

何を目的としての移動かはまだ秘密です

ちなみに、核兵器を束にしてぶち込んでも「ん?ちょっと暑いな」ぐらいの感覚です、地の竜王の場合

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