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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
130/211

ある軍人のお話(中編)

 こうして学者達がやって来たのは中央大陸と他大陸の国家における雪解けを象徴する動きの一環だった。

 十年余りに達する交渉の末、部族連合と話がつき、中央大陸のごくごく一部、突き出た小さな半島部分を借りる、という形で国際共同都市計画がスタートしたのがおよそ二十年ばかり前の話。その後、一時は先に述べた暴走国家のせいで緊張が走ったが、幸いな事に竜神様や龍達は寛容で、竜たる方々が許したのなら、と部族側も引いてくれた為、何とかなった。

 そうして設立された国際共同都市は中立都市であり、研究都市であり、各国の外交の舞台ともなった。

 当初はいわゆるスパイを入れて、暗殺も企んだ連中もいたみたいだが、そうしたよこしまな事を考えた連中はそもそも島にすら入れなかった。

 何故か、船から島へと降りたとうとした瞬間、沖合に着水する者が続出。

 しかも、そうした連中は竜神様達の保護から外れるらしく、慌てて救助船が向かう前に全て喰われて海の藻屑に。

 ならばと高空から降下を目論んだ連中もいたらしいが、その全てが消息を絶った。

 ……それどころか、現場の人間のみならず、それを命令した本国の上層部さえ軒並み消息不明という事態が発生した事で、上の連中含めた誰もが震えあがり、以後はこの中央大陸に踏み込む者達は護衛目的以外では軍人や特殊部隊の要員を派遣しなくなった。さすがの上層部も自分達まで行方不明になる状況で再度の強行は出来なかったようだ。


 護衛自体はむしろ部族側から「つけずに大陸内部に足を踏み入れる事は許可出来ない」と言われていたので必須だった。

 学者達が喜々として研究に足を踏み入れて早々に、我々はそれを嫌と言う程思い知らされた。

 なにせ、この中央大陸、魔法の技術が入ってるだけでなく、魔法の力を宿した生物が至る所にいて、魔法に影響された魔法植物の類もそこらにゴロゴロしている。もう少し詳しく言うなら、国際共同都市近場の森に入っただけで新種(我々にとっての)の植物がそこらに幾らでも見つかる、という状況だという。

 ただまあ、あれだ。

 まるで意志を持つような植物も下手に戦闘力なしに手を出すには危険すぎてなあ……。

 かといって、戦闘でズタボロにしてしまうと、正確な調査は困難になる。

 だからこそ、我々はこの地に慣れた部族の協力を求めざるをえなかった。なんだが……幾度か調査協力をお願いする為に来ている内に、部族の始まりから生き続けるという祖霊の存在を学者(の一部)が知って、暴走した、というのが今回の次第だ。


 「だから!彼らが本当に長生きしているのか、それとも単なる嘘なのか調べるだけでも有益なのだ!」

 「誰がそんな余計な事をしてくれと頼んだ!!」

 「本当にそれほど長く生きているというならば彼らの体を調べれば、人類にとって大きな飛躍となる!たった一人がその身を差し出してくれるだけでだ!何故分からん!!」

 「貴様らの勝手な事情など理解する必要などない!!!」

 「それほど、長く生きておられるというなら話を聞くだけでも昔の貴重な話が聞けると思います。是非、お話を伺えないか聞いてみていただけませんか?」

 「……まあ、それぐらいなら了解した」


 ……真っ当なのもいるんだがなあ。

 とりあえず、仲間とアイコンタクトを交わし、暴走気味の学者達を取り押さえる。


 「だから……なっ!何をするかっ!放したまえ!!」

 「貴様っ!私を誰だと……!」

 「何をする!…っ!この件は貴様らの上に話しておくからなっ!!ただですむと思うなよ!!」


 生憎ながら……。


 「この命令は一番上からの命令です」


 正式に書類を示した。

 その上で、部下達は尚も騒ぐ学者達に猿轡さるぐつわを噛ませて、運んでいく。


 「どういう事です?」

 「はあ、実は……」


 不信感バリバリの部族の人、その中でもまだ比較的冷静さを保って聞いてきた相手に説明した。

 要はこの調査団、編成された時点で上は暴走を懸念していた、って事だ。

 命じられた当初は、「なら、最初から入れるなよ!」というのが正直な気持ちだったが国内でも有数の実績を上げているのも確かで、「暴走するかもしれないから入れません」とはいかなかったようだ。まあ、確かに暴走する前から可能性だけで排除する訳にはいかんよなあ……。

 という事を説明した訳だが。


 「……分かりました。正直実害はこちらとの口論程度ですし、謝罪を受け入れましょう」

 「まことに申し訳ない」


 頭を下げる。

 というか、目の前の御仁は冷静に話をしているが、その後ろの部族の人達はかなり殺気立っている。あの中に一人でも狩人がいたら……。そんな暴力振るうような連中じゃないと分かっていても、戦車を真っ向粉砕出来るような相手が目の前で怒っているってのは怖いんだよ。

 ……なんて思ってた訳だが。

 まさか翌朝になって。


 「我らが祖霊が話を聞きたいと言われている。来て欲しい」


 なんて言われるとは思わなかった。

 本当なら責任者に押し付けたい所だが、本来の責任者は現在、(上からそう命令を受けていた)俺の指示で拘束されている。あんなのを連れて行くなんて部族側が納得する訳がない。

 嫌だなあ、でも行かないといけないよな。はあ……。

前にロボものを改めて書いてると書き込んだ事がありました

気付けば、何故かロボが消えて、マッスルなお話を書いてました

……あれえ?

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