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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
129/211

ある軍人のお話(前編)

本体ではなく、分体中心のお話……の予定です

 「貴重な学術的資料なんですよ!!」

 「黙れ!!!」


 中央大陸の、ある部族の集落でそんな問答が為されていた。

 他大陸からの自称「学術調査団」と、集落の住人達による対話ではあったが、既に一触即発だった……何故こうなった。

 あ、俺はこの調査団に配属された警備役、これでも精鋭の特殊部隊所属なんだが……ここでは何の意味もないな。ああ、俺は自称なんて言ってるが、あれでも国が正式に送り込んだ調査団だ。だからこそ、俺がここにいる。

 しかし……。


 「何故ですか!!何故、そんな長く生きてると信じられるんです!」

 「そうですよ!!そんなに長く生きているというなら是非調べてみなくては!!」

 「まったくだ!そうすれば人類の寿命も劇的に伸びるやもしれない!」

 「立ち入り禁止だなどと!!もったいない事をするべきじゃない!!」


 ああああ……連中が発言する度に集落の住人達の怒りがどんどん増して行ってる……。そりゃそうだよなあ……。

 この中央大陸には過去、二度に渡って他大陸から侵攻が試みられた。

 一度目は戦艦群と上陸部隊を擁して攻め込むも、まさかの剣や弓を持った現地住民に敗北した。それも奇襲や数の暴力ではなく、真正面からの戦闘で文句なしに粉砕された。

 二度目は数年前に暴走の挙句、国際的に孤立した国が行ったもの。

 当時、徐々に中央大陸の住民達との交流を深めつつあった他の国は大慌てで事情を説明し、援軍を派遣すると説明するも住民達の返答は「無用」。そうして、空母を持たない為に戦闘機こそなかったものの最新鋭のミサイルや火砲、戦闘ヘリまで持ち込んで行われた侵攻はやっぱり剣や弓に敗北した。

 うん、ミサイルを真っ向から受け止めて傷もつかない盾とか、それを持ってる奴とかどうなってんだろうな?

 上陸した部隊はかつてをなぞるように完全に壊滅。

 更に沖合にいた艦隊は撤退か再度侵攻か迷っている内に、中央大陸近辺にのみ生息する海龍種の襲撃を受けた。

 ……あの事件はショッキングだった。

 もはや他大陸では伝説とされている竜達。それがあれほど恐ろしいものだとは思わなかった。

 なにせ、数年前な上、事前に報道陣が待ち構えていたのに加え、侵略を行おうとした側の艦船にも報道陣が乗っていた為に生の映像が世界中に流れた。特にインパクトがあったのが沈む船から最後までカメラマンが撮り続けた映像。

 優に全長数百メートルはあったであろう巨大な蛇のような形状の海竜、いや龍。

 軍艦にその体を巻きつけた龍に、必死に船上の武器、その中には主砲である120ミリ砲や、CIWSも手動で用いられていたが、その全てが防がれていた。少なくとも、まともに傷を負わせたり出来た様子はなかった。兵士達が必死になって撃っていた銃など論外だ。そのまま蛇が獲物を絞め殺すように船は破壊され、沈んでいった。勇敢なカメラマンもその際亡くなったという。

 他にも鰐のような竜が鋼鉄の船を柔らかな魚のようにあっさり食い千切り、果てはまるで澄んだ水で出来たような半透明の龍の放つブレス……あれも魔法らしいが蒼い光とでも呼ぶべきそれで船が丸ごと凍り付くという映像まで見る事が出来た。

 はっきり言おう。

 あれで、中央大陸に寄港する船のみならず、近いからと中央大陸に近い航路を取っていた船や船会社は軒並みパニックに陥った。

 そりゃそうだろうな。あんなもんが生息してる海域、軍艦ですらあっさりぶち壊されるような生物がいるような海に入り込みたいと思う船乗りはいないだろう。当り前だけど、海軍の軍人達でも尻込みしたという。

 おまけにこうなると、空の便からも色々と噂されていた事が真実ではないかという声が続出した。まあ、後に事実だと分かったんだが、空にも巨大な竜はいた。どうしようもない現実なのはそいつらでさえ、竜神様に比べればずっとずっと弱いという現実だ。

 恐怖の中、それでも船を出したのは、ある報道会社だった。

 いや、スクープの為によくやるよと思ったが、彼らの船は中央大陸に到着前に龍達に包囲された。

 恐怖で発狂した奴もいたとか、漏らした奴が続出したとかいう話があるが多分、本当だろうな……海面から頭を伸ばして何頭もの龍達に見下ろされるなんてぞっとしねえ。

 そんな所に舞い降りたのが竜神様……うん、中央大陸の住人達が神様って言うのがよく分かったよ。それまで見下ろしていた龍達も一斉に竜神様に首を垂れた。


 『争いを持ち込まぬ限り、汝らは無事に大陸につけよう』


 確かに、これまで襲撃を受けたのはいずれも軍事力を持って、侵攻した時だけだった。

 まあ、あれで聖竜教はより一層信徒が増えたというが、それとは別方向にハッスルした連中もいた……目の前のこの連中、学者達だ。


 「どういう生態ならば、あれだけの巨体を維持出来るのか!」

 「生物が軍艦の砲撃に耐えられるはずがない!いかなる仕掛けがあるのか!!」

 

 なんて事を盛大に喚きだした。

 マスコミまで味方につけて、テレビの中で「政府は捕獲に協力すべきだ!」なんて事を喚き散らした。

 それに野党まで乗っかった連中もいて、突きあげられた当時の大統領の一言。


 『軍艦でさえ返り討ちにあうような相手をどうやって捕獲しろというのか。私は軍人達にその為に死んで来いと言う事は出来ない』


 との答弁に誰も反論出来なかった事で、やっと沈静化した。

 ただし、当時暴走していた学者達はそれで収まらず、遂に調査団を結成させてこの中央大陸へとやって来た。

 もちろん、真っ当な学者さん達も多く、大陸の住人達の協力を得て、植物の植生だとか採取、あるいは鉱石の調査などをやってる人達もいるが……。

 いや、さあ……。

 集落の人達が敬ってる祖霊の存在を聞いた途端に暴走するってどうなんだよ?

 俺ら、幾ら精鋭と言われてたって、この中央大陸の住人みたいに生身で戦車ぶった切ったり出来ないんだけど!?

 仲間の軍人や、暴走に関わっていない学者さん達と目を合わせる。全員顔色悪いし、脂汗かいてる。きっと俺もそうなんだろーなあ……。 

今回は周囲の迷惑を考えず、暴走する学者さん達のお話

現地の人達が崇めてる場所に平気で入り込もうとする学者さん達のお話

……現実なら何もないんでしょーけどねえ

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