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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
125/211

幕間

年末年始について

次の火曜は元旦であり、帰省予定な上、実家にはパソコンないのでお休みします

次回の更新は1月8日となります


※1/15修正

 『おお、竜より転じし我らが祖霊よ、我らにご加護を!天空に座す偉大なる竜神よ、御照覧あれ!!』


 戦の前にシャーマンが舞いながら謳う。

 海の向こう、外なる大地から『悪しき気配』が近づきつつあると警告が発せられ、狩人達は即座に身支度を整え、集った。

 この大陸において狩人とは竜モドキを狩る者達だ。竜モドキとはかつては知性なき竜、下位竜と呼ばれてきた存在達だ。例えモドキと呼ばれようが、その存在は強大。他大陸の兵ならば戦車や大型の火砲、航空機を引っ張り出す必要があるような相手を彼らは生身で狩る。

 無論、容易な事ではない。

 厳しい訓練を積んで、尚勝てず返り討ちにあう事もある。なまじ腕が立つからと過剰な自信を持ち、無謀な狩りに挑み命を落とす者もいる。

 だが、だからこそそれを乗り越え、狩人となった者達はいずれも一騎当千の強者であり、敬意を払われる。そうなって初めて彼らは「狩人」を名乗れるようになる。それまでは獅子や熊を倒せようとも「猟師」でしかない。同じような意味合いではあるが、この大陸の住人達にとって「狩人」と「猟師」の間には絶対的な差がある。

 そんな狩人達がここに集っていた。

 いずれもが自らが狩った竜モドキを素材とした鎧に身を包み、武具を手にしている。

 

 戦の舞のクライマックスで、狩人達が一斉に無言のまま武器を空へと掲げた。

 狩りの時に大声をあげるような者はいない。

 武器を掲げるのは彼らの信じる竜の神へと自らの武具を示し、「我らはこれにて偽りの竜を狩る。御照覧あれ」と示すもの。


 『竜の加護よ、我らにあれ!!』


 これらの儀式は全て魔法の一環。

 舞、大勢の行動による形式、呪文。これらが相まって、強力な強化魔法が全員にかかる。それと共に彼らは行動を開始した。




 ――――――




 狩人達と最初に相対した者達こそ不運だっただろう。

 

 「なんだあ、あいつら。今時鎧兜に、剣や槍かよ!!」


 最初に彼らが姿を見せた時、その恰好に兵士達は嘲笑った。それは狩人達の恰好もあっただろう。

 かつては派手に、今は地味に。

 時代に合わせて服装は変わったが、統一された装備を持ち、統一された武器を持つ。それが軍という暴力組織だ。

 では狩人集団はというと、彼らの装備は彼ら自身が狩った竜モドキを素材として作成されている。それこそが彼らが狩人であるという事実を明確に示すものだが、結果として当然の事ではあるが統一感といったものは彼らからは感じられない。例え、同じ種の竜モドキから作られた装備であろうと、戦の結果によって使える部位は異なる。

 戦いの中、武具としては、あるいは防具としては使い物にならない部分が出るのは仕方のない話であり、また得意とする武器によって装備の形状も異なる。それだけではなく、色彩もまた各狩人達が思い思いの色で染上げ、塗っている為にバラバラだ。

 だからこそ、見誤った。

 

 「撃て!!」


 さっさと終わらせて、仕事を進めよう。

 そんな思いは次の瞬間には裏切られる事になった。


 「な……」

 

 音を超えて飛来する銃弾が雨あられと降り注ぐ戦場でその全てを回避しきる事は不可能だ。それが複数体に命中すれば幸運が味方して命は助かっても重傷を負って動けなくなる。

 そのはずだった。

 

 「嘘だろ……」 

  

 初見の侮りはもう、ない。

 無言のままに突っ込んでくる原住民相手に苦笑しながら銃を撃ち、次に困惑と共に攻撃を集中し、最後はパニックに陥りそうになりながら必死に銃を撃つ集団がそこにいた。

 一対一で、兵士が持つなら単発の銃なら達人の剣士でも何とかなる、かもしれない。

 しかし、ここには狩人達だけでも数百、兵士はその十倍はいた。そうして彼らが撃つ銃弾はしかし、何の効果も現せていなかった。回避し、弾き、無視して突き進む。まだ回避するのは分かる。飛来する弾丸を正確に見極め、弾くなど人の所業とは思えず、幾発もの弾丸が命中しながらその全てを弾き返して突き進んでくる様は何の冗談だと思わざるをえない。これがせめて、分厚い全身防具に身を包み、その防具が弾を弾くというならまだ理解出来なくもない。

 だが、中には軽装の、生身の腕や足を剥き出しにし、そこに命中しつつも弾の方が弾き飛ばされるような光景すら存在している。

 もちろん、これは魔法による強化だ。

 はっきり言って、兵士達の放つ銃弾というものは狩人達にとってはどうとでもなるものだった。

 竜モドキの用いる魔法にはもっと危険なものが幾つもあるし、狩人同士で決闘する事もある。それらに比べればたいした攻撃ではなかった。この程度の攻撃を防げないようでは到底狩人になどなる前に死ぬ。ただ、竜モドキが存在せず、魔法もほとんど見られなくなった他大陸ではそんな事は想像の埒外だった。

 さて、そうした銃弾を避け、弾き、防ぐような集団が突っ込んできた勢いのまま接近戦の距離に突入したらどうなるか?

 答えは言わずとも分かるだろう。

 普通は精鋭の個と、凡庸でも一人前の集団が激突すれば後者に軍配が上がる。

 だが、個が圧倒的に強ければ、時に個が集団を上回る事が起こる。幾ら集団であってもミニカーの集団に大型ダンプが突っ込めば一方的に踏み潰されて終わるようにこの場合、狩人と軍人、その個の力は圧倒的に前者が上だった。


 結局、強襲上陸を果たした(つもりだった)軍は呆気なく上陸部隊が壊滅に追い込まれ、生き残りはさっさと武器を捨て、両手を挙げた者達のみという結果に陥る事になった。

 故に、続いては軍艦がその主砲を向ける番となったのだが……まさかの竜神様の出待ちに気づけなかった彼らの命運などとうに尽きていたのだろう。

それでは皆様、良いお年を!

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