幕間:ある料理人のお話①
スランプかなあ…
いや、本日書き直しに書き直ししてました
人が中央大陸から三方の大陸へと移住してそれなりの時が過ぎた。
星々の彼方ではとある竜が未だ動けずにいる中、人の間では遂に戦争が勃発した。
北の帝国に対して、南の王国が遂に戦争を仕掛けて来た。
移住して名を変えた王国は初代王、二代目は国を安定させ、発展させる事に注力し、帝国とも国境線で睨み合いつつも経済面では結びつきを深めて来た。その様相が一変したのはおよそ十年前、四代目が即位した頃からだ。
そもそも三代目の死も怪しかった。
初代と二代目の意志を継ぐ事を公言していた三代目だったが、短命で終わった。
表向き事故死だったが……王国内部でも陰謀説が未だ消えないぐらい怪しいらしい。
で、初代から二代目が頑張って立憲王政にして王の権限を弱めたはずなんだが……まあ、世の中腐敗政治というのはどこでも起きるって事だな。
議会が腐敗の温床になった所を上手くついて、議会の中でも過激な連中を引き込み、王の権限を再び相当規模で取り戻した。
そうして、強権を振るい、実績を上げた事で民衆の支持を高め、議会から更に権限を奪い……。
そのままなら単純に良い王で済んだのかもしれんが、そこで生じたのが「南北を統一した偉大な王として名を残す」という代物……。かくして、王国は帝国に対して、遂に宣戦布告。帝国の要塞線に対して、後方に艦隊を用いて強襲上陸作戦を行い、補給線を遮断する事でこれを窮地に追い込んだ……。
「あ、このご飯お代わり」
「……あんた肝っ玉座ってるね」
呆れたように言いつつも、料理屋の親父は目の前の美女に料理を差し出した。
「未だ普通に料理を提供している所が少なくて困りました」
「いや、そりゃあそうだろ」
思わず突っ込みを入れてしまった親父だった。
ここは帝国要塞線の背後にある港町の一つ。
本来なら帝国の要塞に勤める兵士達や、それを相手に商売する商人などで賑わう場所だったが、要塞線背後に上陸された状況では、非常な危険地帯と化していた。既に、王国軍が街の近傍に迫り、住民の大半は要塞の内部か、それとも本国目指して避難している。
「悪い事は言わん。お前さんみたいな綺麗な女性だとどんな目に遭わされるか分からんからさっさと逃げた方がいい」
「王国の兵士ってそんなに柄が悪いの?」
「……本来ならそうでもないんだろうけどな。帝国領内、救援も早々送り込めない場所への上陸って事で噂じゃ犯罪者が恩赦を条件に送り込まれてるって話だ」
そして、親父はそれが噂ではなく真実だと知っていた。
要塞に向かって逃げて来た者達、その中でも一度は捕まったような人達から話を聞いていたからだ。
「それでもあなたとか逃げなかった?」
「……俺はここで生まれた最初の世代でね。他の街なんか知らん」
殺されるにしてもこの街で死にたい。
そんな思いで残った者はそれなりにいる。ほとんどが老人だが。
「でも、この港町の名産は無理?」
「無茶言わねえでくれ。あれを獲って来るには人手がいるし、解体だって専門の業者に工場が必要なんだ。今の街じゃ無理だよ」
親父は街の名産と言われたものを思い出す。それは巨大な貝だ。
この海域の湾の沖合では本来もっと深海に棲んでいるはずの、ある貝が生息している。小型のものなら一人でも何とかなるが、名産と言われるほどのものは直径十メートルを超えて初めて、そう呼ばれる。年間に獲る数も厳密に管理され、余所では超高級食材とされる。
密漁しようにも、相手の大きさのせいで小型船では話にならないし、大型船では目立つ。何せ、ここは帝国と王国の国境線近くの要塞線に近い。そんな所に見知らぬ大型船が入り込めば即軍艦が飛んでくる上、素人が手を出せば命に関わる。
そんな貝を地元では一匹は確保し、期間限定な上、お値段も張るが味わう事が出来る、はずだったのだが……。
「許せませんね」
「王国の王様でも怒鳴りつけたら、連中も引くかもしれねえけどなあ」
「五十年前ならそれも出来たんですけどね」
ん?と、親父は小声で呟いた声が聞き取れず、首を傾げる。
「まあ、戦争が終わって、ここがまだ残ってたらまた来てくれや」
「ええ、来年また来ます。お代ここに置きますね」
「ああ、毎度」
確信を持ったその声には苦笑を浮かべた。
……まあ、今から逃げりゃ、何とか間に合うだろう。
娘夫婦は逃がしたし、妻にはもう先立たれた。娘夫婦には何度も説得されたが、妻との思い出の詰まったこの店を捨てるぐらいなら死んだ方がましだ。
しかし、その日も、その翌日も。王国軍は港町へと襲来する事はなかった。
当初別の話を書いてたんですが、どうにもしっくり来ず消して
で、分体のお話書いてやっぱりしっくりこず、これも消して
別のを書いてまた消して、で四本目なので一旦これでアゲです




