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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
115/211

閑話その1(分体語り

 本体は悪戦苦闘してるようだな。

 こうして念の為にと星に分体として残された訳だが、気楽なものだ。

 戦闘そのものはそう難しくもなかったようだが、放出される所だった膨大なエネルギーの回収に四苦八苦しているようだ。これを放置して、残る二凶に吸収されてはいけない、という事もあるだろうが、これを機に体自体をまた作り変えているようだ。

 ま、分からんでもない。

 惑星上では限界のある膨大な量のエネルギーとそれの根幹とも言うべき属性。次にこれだけの属性を得られる時となればそれはおそらく二凶のいずれかを倒した時か、あるいは悠久の時の流れの果てか。どちらにせよそれなりの試練か時間のいずれかが必要となるのは間違いない。それなら、今回の機会を逃すはずがない。

 ま、こちらの星が平和な事もあるのだが。


 十年の期間を経て、移住が行われた。

 そこから更に年月が経て、各大陸も大分情勢が変化したが、同時に落ち着きもした。


 まず南東大陸。ここには最も成功した移住を行った王国が新たな王国を築き上げたが、移住前と比べ幾つか変化した点もあった。

 一つは王政がこれまでは比較的絶対王政に近いものがあったけれど、現在は立憲王政に変化した事だろう。これは、移住の際の王が「責任を取って退位」した事が大きな原因になったと言える。つまり、王が移住しないといけなくなった「責任を認めた」事で、王政が揺らいだ訳だな。

 一歩間違えれば革命にも繋がりかねなかっただろうが、最初の一番不安定な時期を上手く乗り切れたのが大きかった。

 成功した、と言ってもあくまで「他よりはマシだった」というだけで、不満や不備、問題はそれこそ山のように出たが、軍部の主力があくまで王家に忠誠を誓ったお陰で大きな反乱には至らなかった。まあ、裏を返せば小さな反乱は複数起きた訳だが。

 中でも最大のものは地方軍を率いる辺境伯の独立を目指した反乱。

 金鉱を発見した事に加え、北の大国との国境な事を活かし、両国の間での独立を狙ったものだった。

 しかし、王国側にしてみれば開発に多額の金を費やして、やっと軌道に乗り始めた金鉱を奪って独立を図ろうとした動きは許せるものではなかった。それがややこしい事になったのは北大陸の帝国との国境近辺に対象の辺境伯領があった事。すなわち、そこへと多数の兵力を差し向けるという事は帝国への戦争準備ではないかと疑われる危険が大だったからだ。

 既に地方軍が駐留していた。

 そこへ更に大きな兵力が向かう。

 反乱と称してはいるが、その実双方が打ち合わせての偽装ではないか、実際は地方軍に増援を加えて自国に侵攻してくる気ではないか?そう疑われるのはもっともだろう。結果として、反乱は長引き、その間に辺境伯が防備を固めた事で力攻めはより困難になった。

 しかし、睨み合いの最中に辺境伯が急死。

 更に跡取り息子、反乱に加担した軍の元副司令官(司令官は反乱に反対し、処刑された)らが次々と事故死、不審死を遂げていった。かくして、わずか半年と経たない内に独立を主導した首脳部がほぼ壊滅に至り、震えあがった残る面々は王国側の最終勧告に従い、辺境伯の孫を人質として差し出して投降した。

 これは王国の闇、裏の部隊の存在を否応なく感じ取った他の潜在的な反乱勢力を一気に震え上がらせる事にもなった。結果、彼らはこぞって王家のご機嫌伺いに走り、国内の不穏な気配は一気に消滅した。

 しかし、だ。

 ……責任を取って退位した先々王の最期の頼みであったとはいえ。

 隠居場所である離宮の料理長殿、やりすぎではないか?


 さて、次は南東大陸と睨み合う北東大陸。

 こちらはかつて本体が移住を手伝った帝国が順当に……ではなかったが、最大勢力を構築した。

 国として評価すべきはあのお姫様が本体から「これから移住者が渡って来る」という事を伝えた後、迅速に海岸線の見張り体制と、その後の築かれた町への攻撃、制圧を決断した事だろうか。

 いや、あのお姫様の行動ぶりには本体も感心していたが、どちらにせよどのみち将来的に対立する要素があるなら、まだ相手が十分な力を蓄える前に自国の一部にしてしまえと割り切ったんだな。元々、南東大陸を目指して移住を図った連中が嵐や潮の流れの関係で船団から逸れて辿り着いたのが北東大陸だ。当然、彼らが北東大陸に築いたのは南東大陸に王国が新たに築いた街や北東大陸の帝国が構築したものとは異なる丸太で周囲を囲った村だった。

 そんな所にかつての王国軍の数万の軍勢に比べれば遥かに小さいとはいえ、軍勢と呼べる規律を持つ千人が押し寄せたらどうなるか?

 当然だが、抵抗を諦めて帝国の一員となった者が大半だった。極一部の例外はいずれも滅ぼされた。そりゃまあ、断った時点で潜在的な敵だからな、見逃してもいい事なんてない。

 かくして、細い陸橋で繋がる北東大陸と南東大陸だが、南東大陸の王国が徐々に大陸の探索を行い、北へ北へとその手を伸ばしていった時、遂に帝国の先端と遭遇した時には帝国は王国には劣るものの、守りに徹すれば十分防げるだけの力を有していた。王国側も帝国と本気で戦争をすれば甚大な損害を受けると覚悟せざるをえない程度には。

 この最大の原因は「移住者が来ると覚悟して準備を進めていた帝国」と、「既にそれなりの規模の勢力が新たな大陸に存在していると思わなかった王国」との差だったんだろう。

 結果、両国は現在も国としては睨み合いを続けながら、商人による交易自体は行われている。

 

 余談だが、この北東南東両大陸には自治都市というべき小国家も少数だが存在している。

 何でかといえば、王国と帝国双方が「何か問題が起きた時に交渉する場所」として活用しているからだ。

 互いの国内での話し合いはしづらく、しかし、話し合いは必要な時に場所を提供する事で、これらの小国は存在を許されている。

 

 北大陸は言う必要はないだろう。あんな所に人が生活なぞ出来るものか。

 漂流して辿り着いた者も一月もった者は誰一人存在しない。水は凍り付き、それを溶かす火を起こす為の薪さえ手に入らないような場所でどうやって生き延びろと?

 竜がゴロゴロ生息しているから海だって危険なんだ。


 で、後は南西大陸だが……完全な群雄割拠状態だな。

 元々、中央大陸北西部のブレイズ帝国は崩壊して、そこからの脱出民はてんでバラバラに船に乗って逃げ出している状況だったし、連合は連合で元々団結なんて皆無の地域。あくまで利で一つにまとまっていた国であって、結果、南東大陸に移動した時点で機能していた中央議会もなく、再び船団、あるいは船ごとに勝手に行動を開始した。

 結果、多数の小国が成立し、複数の小国をまとめた一際大きな国が成立したかと思えば、周囲の小国が連合を組んで対抗し、またあるいはそうした国や連合同士が激突して消耗し、崩壊してまた新たな国が成立し、を繰り返し続けた。

 それでも、それなりの時間が過ぎて、ある程度落ち着きはした。

 落ち着きはしたんだが……統一国家の成立した東の二大陸に対して、現在も十の国家群、彼らは自分達を「十の王冠テン・クラウンズ」なんて称しているが……実の所は単なる小国家群だな。おまけにこの状況でもいがみ合い、小規模な戦乱が続いているので国力では各大陸中最低だろう。


 ……というのが現在の惑星の状況だ。

 本体よ、暇つぶしにはなっただろうか?

 のんびりと空を舞いながら人々の姿を見るのが何とも言えない楽しみだ。

 ……もっとも、北東の帝国は竜信仰があるので崇められる。南東と南西の大陸では恐怖でパニックになったりするのはどうにかならんものか……。 

  

遅れました

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