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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
114/211

戦いなき戦い

自己防衛だけで動いてて、まともに考えて動いてる訳じゃなかったら……

 少し時間の進んだ状態を説明するなら、こちらが圧倒的優位で事態は進んだ。

 当然といえば当然かもしれない。あちらは自己防衛本能に基づいた攻撃で、考えて動いている訳ではない。

 これに対して、こちらは先を読んで動いている。

 ……これで手こずってたら、先が思いやられる、か。そして……。


 『もう終わりか。案外早かったね』

 「いや、ただ図体でかいだけだったからなあ」


 そう、盛り上がりも何もなく、あっさりと終わってしまった!!

 

 「人の物語とかなら、ここで『ふははは、手加減は終わりだ。真の姿を見せてくれよう!』とか、実は黒幕がいたとかの展開があったりするんだが」

 『現実にはないだろうね。そうするぐらいなら最初から全力で確実に仕留めておいた方がいい』


 例えば、攻撃してくる相手は実は本体の封印だった。

 例えば、枷がかかっていて全力を振るいたくても振るえなかった。

 例えば、一定時間が過ぎなければ全力を発揮出来なかった。

 何等かの理由による、そうせざるをえない状況があるならともかく、そうでないなら獅子は兎を狩るにも全力を尽くす、という言葉のように戦いでは遊んだりする事なく仕留めるのが正しい。そうして、体の活動が急速に低下してきた事により、精神の側の活動もまた可能となっていた。

 

 「もしかして、急に精神の側が体を制御出来るようになって襲い掛かって来るとか」

 『ないない』


 どこか笑いの籠った声だった。

 けれども、既に火の三凶の体は崩壊寸前……いや、もう自分自身の力で絶賛終焉へと向かいつつある。

 四大竜/龍王達は自身の作った失敗作を三凶と呼んだ。

 確かに、災いではあっただろう。火の三凶はただあるだけで宇宙自体を終焉へと導く存在だった。それでも、火の三凶を単なる凶的存在であるとひとまとめにしようとは思えなかった。あれはただ単に、火の竜王サラマンダーの失敗の被害者に近いだろう。

 おそらく、前の失敗作と面倒だからまとめてそう呼んだだけだったのだろうと推測出来る。


 「それじゃあ……さよならだ」

 『ええ、それでは』


 そうして、火の三凶は……。


 「ってちょっと待て」


 確かに火の三凶は消えようとしているが。

 この世界にはエネルギー保存の法則というものがある。

 我々には質量保存の法則とやら含めて色々と例外が混じってはいるんだが……。


 「ふと気づいたのだが、吸い込んだというか終焉に導いたというか。それらのエネルギーは消滅したのか?」

 『……封印破る為に溜め込んでいたと思いますね』

 「それ、お前の体が消えたらどうなる?」

 『解放されるのではないでしょうか』


 しばしの沈黙が訪れた。


 『では!後はよろしくお願いします!!』

 「おい!」

 『いや、どのみち私にはどうしようもないので!吸収でもして今後の戦いの足しにしておいてください』


 実の所、高圧縮されたこの会話、現実世界では一瞬、それこそナノセカンド程の時間でしかなかった訳だが。

 

 「おのれ、いい加減貯めに貯めこみおって!!」


 確かに方向性がなく、意志なきエネルギーなど吸収するのは容易い。

 問題は量だ。

 たとえ、どんなに美味しい料理があったとしても、だ。いきなり目の前に数十食、あるいは数百人分の料理を出されて「さあ、どうぞ!!全部食べないとダメですよ!」と言われたら、時間かかってもいいとはいえ嫌になるはずだ。

 とはいえ、これだけのエネルギーをむやみやたらと解放させる訳にもいかない。

 それこそ長い長い時間、あの星の人類が滅びるぐらいの時間ぐらいはかかるかもしれないが、何時かはこの宙域を超え、広範囲が崩壊するだろう。

 超新星爆発は衝撃波がおよそ半径五十光年というが、これだともっと広範囲に及ぶかもしれん。

 ……ああ、面倒な。

 とりあえず、エネルギーを収納して、それを順次吸収して……さて、十年やそこらで終わるのだろうか?

という訳で、後始末の方が面倒でした

超新星爆発が数十個まとめて起きたぐらいのエネルギー放出は起きてます


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