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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
113/211

小手調べ

小手調べで終わってしまった

 小手調べ。

 と、ばかりにテンペスタは基本となる地水火風四つの属性から圧縮重力波、絶対零度の冷気波動、超高熱の熱線、空間振動破砕を放つ。

 軽く放ってはいるが、これでも一発で巨大ガス惑星の三つや四つ、軽く余波で粉砕するぐらいの威力はある。

 もっとも、相手は仮にも恒星サイズ、そのサイズを考えるならこれでもごく「軽い攻撃」でしかない。この程度に抑えたのは、初手が奇襲ならば最初の一撃に強烈な一撃を撃ち込むのは一つの手だが、そうでないなら下手に初手から強烈な攻撃を行って、吸収や反射といった攻撃を返されたらたまらないからだ。

 結果から言えば、反射される事はなかったが……。


 「消えた?」


 近づくにつれ、やせ細るように攻撃は消えてゆき、最後は完全に消滅してしまった。

 消え方からすると、打ち消したというのも違う。

 しかし、吸い取ったというのも何か違う。

 

 「減衰、といった印象だな?吸収だと当人は思っていたようだが」


 考えてみると、力をまともに使う間もなく封印された訳だ。

 おまけに精神と体が切り離されていたお陰で、感覚も伝わってこない。それでは周囲の様子を見て、推測するしかなかったのだろう。


 「しかし、だとすると……」


 宇宙の活動そのものを減衰させるのか?

 

 「……もう少し試してみるか」


 単純に、素粒子、或いは更に極小の単位で速度を低下させているのかもしれない。

 物質が熱を持つと、電子原子が活発に振動している。

 絶対零度であっても零点活動という振動を行っているが、それを完全に停止させているという可能性も……。


 「おいおい」


 違った。

 むしろ一番近いのは。


 「終焉へと加速させている、といった方が近いか?」


 全てのものには終わりがある。

 この宇宙でさえ、始まりがあったように何時かは終わりがある。それをこの眼前の相手は『終焉に向かって加速』させている。


 「となると、っ」


 呟きかけた所で今度はお返しとばかりに攻撃を仕掛けてくる。

 通常の意味での目には見えない、それを浴びた事で正体を感知する。やはり、全ての物質生命を終焉へと加速させているようだ。まあ、この程度であれば、浴びた所でたいした事ではないが……お隣の恒星系で惑星が複数、終わったようだが生命の気配もなかったようであるし、問題はないだろう。

 たかだか突然、岩石系惑星が崩壊して粉々になり、ガス状惑星は大気も核も霧散しただけだ。

 この程度なら問題はない。力が足りなければ強制的に終わりを迎えさせられるだろうし、惑星や恒星であっても意志を持たねば抵抗する事は出来ない。

 逆に言えば、対抗可能な力と抵抗する意志があれば何とでもなる。とはいえ。

 

 「……こっち同様、相手も様子見兼ねた軽い一撃なんだろうなあ」


 無論、知性ないから最初から全力……という可能性もないではないが。

 そう甘く考えて、痛い目を見るよりは小手調べ程度の軽いジャブぐらいに考えておいた方がいいだろう。

 しかし、少々腹が立つのは……。


 「周囲の星系に生命が皆無。知的生命はともかく、微生物レベルすら存在しないという事はそういう場所を選んだと考えるのが妥当だろうな」


 なぜ封印に留めたのか、というのも案外、卒業試験だとか全力で力を振るえる相手として残しておいた、という事かもしれない。

 

 「まあ、いい」


 終焉へと加速させるなら抗えばいい。

 色々な形での死、終焉、複数にそれぞれに対抗処置を行いながらやるのは確かに良い練習になるだろう。

 熱的死、アポトーシス、何でもいい。そのままならば消えゆくのならつぎ込み続ければいい。

 

 「では受け取れ、ここからが本当の開戦という奴だ!!」


 次元と時を超えての距離ゼロ、タイムラグゼロの超空間振動攻撃が炸裂し、相手の一部を吹き飛ばす。

 その次の瞬間。


 「む」


 宇宙の極小の一部が瞬時にそこに存在する全てと共に終焉する。

 咄嗟に引かなければ、腕一本持って行かれただろう。更に、黒い恒星自体が動き出す。その一瞬にどこか楽しそうに呟いた。


 「まったく、厄介な事だ!」 

次回、戦闘

二話か三話で終わらせたい所ですが

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