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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
110/211

戦争後:連邦編

アルファポリスの第十一回ファンタジー小説大賞に参加してみました


+今回は連邦の情勢に関しての説明的な回です

 さて、王国は滅竜教団に対しては表向き、「国としてはあくまで中立」という立場に見せかけた。

 これとはまるで反対の対応を取ったのが連邦だった。


 南部を統一した連邦は王国と違い、中央集権による強権を振るうのが困難だった。

 確かに財力でずば抜けた力を持ち、だからこそ滅竜教団が潤沢な開発費を得る為に接触し、結果として南部統一を果たした訳だがその内情はお世辞にも統一されたとは言い切れないものがあった。帝国や王国がその精強なる統一された軍でもって他国を制圧していったのに対して、連邦は取り込んでいったと言っても良い。

 どちらが良いとは言わない。どちらも一長一短があるからだ。

 ただ、調子の良い時は良かったそれが、敗戦となった時一気に噴き出していた。


 『そもそも滅竜教団が竜を敵とした事が最大の過ちだった!』


 こんな事をそれなり以上の立場の者が公の場で叫ぶような真似は王国ではまず起こらなかった。

 だが、連邦は違う。

 それを口にしない者がいる一方で、それをむしろ声高に叫ぶ事で他より大きな権限を握ろうとする者がいる。世の中、確かに冷静な者もいるが、大声でそれらしき事を叫ぶ目立つ者をただそれだけで「やる気がある」などと評価して支持する者がいるのもまた事実。

 これにマスコミ代わりに噂話でも流せば完璧だ。

 そうして、そうした扇動政治家に煽られて、滅竜教団に対する空気が悪化すればそれに流されるようなお偉いさんもまた、いる。

 結果として、王国があくまで民衆が自然と対立する形になっていったのに対して、連邦においては国と教団の対立のような形になっていた。

 そして、これは船の建造にも支障を来していた。

 結果からいえば、民衆の不満を教団へと逸らし、しかし、王国自身はあくまで善意の第三者を装って、教団からも民衆からも一定の距離を保ち、国力は移住の為の船舶の建造に移住先に先行しての開拓などに注力するという形を貫いた事が最善の移住を成し遂げる事になった。

 帝国は論外としても、連邦も国力をそちらに持って行かれた為に船の建造などに支障を来した。

 

 そして、竜との戦争終結からおよそ半年強。

 遂に連邦で激烈な内戦は始まった。


 内戦となったのには訳がある。

 王国が次第、次第に教団にも責任があるんじゃないか、から教団に責任がある、へと変わり、空気が悪化していったのに対して、余りに連邦のそれは急すぎた。

 当り前だが、獣同然の下位竜の襲撃から教団によって救われた者達も決して少なくはない。

 そして、声高に「あいつらが悪い!」と、叫ぶ者達は大抵の場合、それに反発する者とて生まれる。


 『あいつらは今まで俺達を助けてくれたじゃないか!!』

 『これまで彼らに散々助けてもらったのに、都合悪くなったら捨てるのかよ!!』


 王国では大きくなる事のなかったそんな声は連邦では次第に大きくなっていった。

 国内の意見も、勢力も二分され、「連邦に味方する者」「教団に味方する者」、そしてごく少数の「第三者」に明確に分かれていった。

 そして、この最後の「第三者」のみが。


 『今はそんな事している場合じゃないだろう!船作らないと!!』


 と叫び続け、しかし、それは「うるさい、黙ってろ!!」という対立する者達の声に埋もれてしまった。世の中、一触即発、喧嘩寸前で睨み合ってる者達の間で、「落ち着けよ」などと仲介しようとしてもそれが報われるとは限らない。

 

 『下手に介入すれば巻き込まれる』


 そう判断した更に極少数の「第三者」が「分かった、なら俺達は何も言わない」と双方に宣言した上で、船の建造に注力し、「黙ってろとはなんだ!こんな時にふざけるな!!」と「第三者」としての立場を放棄した者達は自ら巻き込まれ。

 かくして、壮絶な内戦が勃発した。

 人の歴史的に見て、もっとも被害が大きくなる戦いが内戦だ。

 なにせ、戦うのは同じ国の国民同士で、戦う舞台は国の中。勝っても負けても根深い不信感が互いに残り、殺せば殺す程人口は減少し、国力が下がる。国土のいたる所が戦場となるから、農業や林業、工業も生産力が落ちて、国が荒れる。

 そんな状況でも、一旦燃え広がった戦いは止まらない。

 戦いが戦いを呼び、死傷者が増える程に互いに憎悪を募らせ、更に戦火が広がる悪循環。

 こうなると、中立を維持するのも大変だし、容易ではない。

 

 『あいつらが俺達に味方しないのは奴らの味方だからだ』


 などと短絡的に考える者や、単純に落ちた国力を補う為に無事な所から奪おうと考える者が中立の領地を襲撃する。

 結果、中立を維持していた者達が今度は連合を組み、そうなると無視出来ず三つ巴の戦いになり……悲惨極まりない戦いが展開された。


 結局、この戦いは実に五年をかけて国側(教団批判派)が勝利したが、その時は最早国力は見る影もなかった。

 しかも、敗北した側も全滅した訳ではないから、大規模な戦いが終わった後もゲリラとして残る者が多数で治安は極めて悪化し、更に都市が破壊されたり、農地を失って流民となった者達が食っていくために盗賊となり……結局、連邦は遂に国力を回復する事が出来ないまま十年の時を費やした。

 中立連合は何とかまとまった船団を送り出す事に成功したが、十年の最後の頃になるとそうした地域に難民が押し寄せ、今度は乗せろと騒ぐ難民と、内戦の最中にも頑張って船団を建造していた地域の人々の間に衝突が発生する事になった。まあ、難民達からすれば「俺達が好きでやったんじゃねえ!」となるだろうが、後者からすれば「ふざけるな!俺達が乗る船がなくなったらどうすんだ!」って事になる。

 

 こうした連邦の末路が、王国にも影響する事になったから皮肉だろう。

 一部の難民は山脈を命がけで越えて、王国に流れ込んだが、こうした人々の話が王国上層部への評価上昇につながった。

 まとめる者がいなかった為にてんでんばらばらに別大陸を目指した旧帝国領。

 内戦で崩壊して、大半がまともに脱出出来なかった旧連邦。

 これに対して、きちんと統制し、中立を保ち、あくまで教団と民衆の対立として船舶建造と移民船団を構築しきった王国。

 一部に批判する者がいたものの、大半の移民した国民から王が「それでも竜との対立を招いた時の責任者は自分である」と退位を宣言した時、大多数の王国民から惜しまれた、退位を撤回するよう求める動きすら生まれた王国の完全勝利と言えただろう。

 そう、歴史は語る。

 そして、王国内での民衆と教団との対立の陰に王国がいた事を伝える資料は陰謀論として一部に残るのみで、確たる資料もまた存在しない。  

内戦って悲惨です

アメリカでも最大の被害が出たのは、アメリカの内戦である南北戦争だとされています

南北戦争での死者がおよそ70万

これに対して、第二次世界大戦でのアメリカ軍の戦死者が40万とされてます

しかも、これに国内が荒れる要素まで加わりますからね……

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