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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
108/211

無駄な足掻きと、移住の悲劇

筆が進まない……

 「なぜです!!まだ我々は負けていません!!」

 

 人族連合軍。

 その司令部で、少なからぬ軍人達がそう主張していた。

 帰還した王の言葉「我々の負けだ」に、反発してのものだったが、同時に滅竜教団の者達の抗議もあっただろう。


 『我々は!まだ!負けていない!!』


 ここまで来て。

 そんな思いもあっただろう。

 だが、同時に恐れもあったはずだ。


 だが、そんな者達でさえ、蝕樹竜を倒した竜王の一声。

 それだけで、機竜とそれに関係する兵器類、砲が全て崩壊した光景を見て、心を折られた。

 抵抗を主張する者達にとって、竜を撃破する事に成功した機竜やそれの派生として生み出された兵器群の存在が心の支えだった。だからこそ、彼らは残る上位竜を用いた機竜などを前線に揃え、圧力を加えていた訳だったが。それら全てが、テンペスタの発した軽い一声、それだけで砂が風で吹き飛ばされるようにサラサラと崩壊した姿に屈したのだった。


 「………」

 「……あーおーい、撤退するぞー」


 唖然呆然といった様子で魂が抜けたように立ち尽くす彼らに向かって、どことなく気の毒なものを見る目で見ながら撤退は進んでいった。

 さすがに肝心要の兵器が全部なくなって、尚戦おう!という者はいなかった。なにせ、これ以上戦うとなれば、後は剣だの槍だの手持ちの武器で戦うしかない。上空から炎でも吐かれまくったら、それだけで全滅は必至だ。

 兵士達もそれが分かっていたから、錯乱した誰かが「突撃しろ!」なんて言い出す前に、とばかりにそそくさと撤退の準備を行っていた。

 無論、規模が規模ゆえに全軍が撤退したのには数日かかったが、かくして人と竜の戦いは終結した。


 そして、撤退が完全に終了した、その翌日の事。

 大陸全土が大混乱に陥った。


 『聞け、人族達よ』


 突然、上空に巨大な幻影として姿を現した竜はそう宣言すると幾つかの事を通達してきた。

 人族連合が竜に敗れた事。

 それに伴い、人に選択を迫るという事。すなわち、竜や自然と共に生きるか、それとも今の生活を維持する為に他大陸へと移るか、だ。

  

 『十年の時を与える。その時までにいずれかを選択せよ!!』


 そう宣言して締めくくられたその言葉に大半の人族が従ったのは空に映った竜であるテンペスタが同時に威圧感を適度に放出していたからだ。

 全力で威圧したらそれこそ人族の大半が命の鼓動を止めてしまうから手加減したが、それでも十分すぎる程だった。

 十年、という歳月を与えたのはさすがに移住を考えるにしても、移動の時間も合わせるとさすがに一年どころか三年でも短すぎるという現実からこの時間になったが、実際には十年でもギリギリだろう、というのを予想していた。

 だが、これが一つ大きな悲劇を生み出す事になった。


 王国と連邦はまだマシだった。

 混乱はあったものの、上層部が健在であり、責任を押し付けるスケープゴートもまた存在していたから。

 問題は……旧ブレイズ帝国領だった。

 この地域、現在もなお混乱が続き、統一政権が存在しない。

 そして、この地域はかつてリヴァイアサンが起こした津波によって大被害を被った地域でもある。

 結果として、この地域の沿岸部にあった船舶建造の為の工廠だの、船を作る技術をもった船大工達だの、船を浮かべる港だのが壊滅的な状態になっていて、しかも竜に対して非常な恐怖を抱いている地域だったという事になる。

 そんな地域にも等しくテンペスタは声をかけた。

 結果、パニック状態が発生したのだった。

 竜が怖いから逃げたい。逃げたいが、船がない。他地域に逃げるにも時間がかかるし、何より他地域は他地域で大陸からの移動を行う必要があり、自国民優先だろうから自分達が乗せてもらえるか分かったものじゃない……。

 それに統一された王権なり政府なりがあれば国家として一丸となっての船舶建造と人の整理といった事も可能だが、この地域ではそんなものはない。

 船の建造というものは当り前だが、手間も時間も施設も資材もかかる。更に、技術も当然要求される。

 そうなると一般市民で建造、というのは困難な訳で、作る技術があっても資材が、資材はあっても技術や建造する施設が……という状況が旧ブレイズ帝国領では頻発する事になった。更にそれに加えて、生き残っていた領主が何とか人と資材を集め、音頭をとって建造したとしてもそれを奪おうとする他の領主や、他の奴らだけ逃がすなら燃やしてやる!なんて連中まで出る始末。

 結果として、脱出は他と比べ、遅々として進まなかった。

 諦めて、全てを捨てて、自然と生きる道を選んだ者も多かったが(実際、他の二地域より圧倒的に多かった)、何とか作れた小舟で大海へと漕ぎ出した者達もまた多かった。

 

 そして、当り前だが小さな船で航海技術もまともに持たない者達が大海に漕ぎ出してどうなるかなど分かりきっていた。

 後に推測された話では漕ぎ出した者達の半数以上が海に消えたとも言われているが定かではない。

もちろん、王国と連邦でも悲劇はありますが、そっちはまだ船団とかで移動しますので……

以前出て来た先に移住した帝国の生き残り達は北東大陸に

潮の関係で王国は南東大陸と、一部流された者達が北東大陸に

連邦は南東大陸と西方大陸に別れてそれぞれ移住する事になりますが、そこら辺はまた次回にて



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