戦い済んで王は悩む
遅れました
「まさか、ルナ姉が竜王だとは……」
はあ、とため息をついた。
王国の王として長年やってきたが、まさか国の成立当時から国の中枢にいたルナ姉が竜王だとは夢にも思わなかった。というよりも、王国の歴史においてそんな事を考えた者は誰もいなかっただろう。万が一いたとしても、精々、初代国王がもしかしたら?というぐらいか。
(しかし、そうか、だったらあの戦の結果も当然か)
竜王と機竜もなしに戦をしたら勝てる訳がない。
「しかし、分からん。竜とはいったいなんなんだ」
開き直って、三体の竜王に問いかける。
このまま殺されても仕方ないと思っていたが、蝕樹竜に取り込まれていた火の竜王も、伝説の竜王テンペスタも、そしてルナ姉も自分をどうこうしようという様子はない。いやまあ、ルナ姉が竜と戦った事を理由に手を出す気なら戦場に出るまでもなく、自分なんか終わっていただろうが。
いずれにせよ、これは良い機会だと思う事にして聞いてみた。
「私には分からんな」
「私もそこまでは聞いてない」
火の竜王とルナ姉からの返答はあっさりしたものだったが伝説の竜王は少し違っていた。
『ふむ、竜の世でも人の世でも失われた知識だが……一部なら良いか』
おや?
この様子からすると伝説の竜王はそれを知っているらしい。
……それから教えてもらった事は予想外の話だった。
無論、全てが語られた訳ではない事は理解している。おそらく、自分では理解しきれないと判断されたのだろうとなぜか納得出来た。
しかし。
「……すまない、どうにもすぐには信じられん」
人族自体が星の外から訪れた者。
竜がその人族の願いに応じて、この星を人族が住めるようにした事。
そして、長年、竜が星の脅威から人を守って来た事。
(それが本当だとすれば、我々はとんだ恩知らずではないか!いや、それどころか自分で自分の首を今締めている真っ最中だという事になる)
恩知らずの方はよろしくはないが、まだ仕方ないと考える事も出来る。
国という組織を治める以上、綺麗事ばかりでは済まず、恩知らずとしか言いようがない事だってせざるをえない事もある。
しかし、後者は……。
「事実だとすれば、我々の想定が根本から覆りますな……」
溜息が出そうだ。
このままでは人口爆発によって人は滅ぶ、だが竜を倒しても管理者がなくなった事でやはり滅ぶ。
いやまあ、今の状況を考えれば、竜を倒すなぞ不可能になったと言って良い訳だが。
「どのみち我々に選択肢などないか……」
『そうだな、お前達が竜から離れたいと願うならば、人として立ちたいと願うのならば他の大陸に渡るがいい』
当然だろうな。先の話が本当だと仮定しての話だが、この大陸にいる限り、人は竜から離れて暮らす事は出来ないのだから。
「我らは負けたのだ。移住を図らざるをえないでしょうな……ですが、その為には時間を頂きたい」
『よかろう。五年の時をやろう。ついでに少し手を貸してやろうではないか』
何をするのかと思いきや、要は大陸全土に姿を現して脅す、という事だった。
……この伝説の竜王が威圧感全開で脅しをかければ、そりゃあ竜王に帰依するような連中でもない限り、パニックになって他の大陸へと逃げ出そうとするだろうな。金持ち連中はそういう連中だからこそ、一番に他大陸へと逃走しかねん。
やれやれ、これから忙しくなりそうだ。
『ところでお前はどうするんだ』
「もちろん、移住についていく。竜のご飯は味気なさすぎる」
……どうやらうちの王家はルナ姉からは逃げられんらしいな。
思わず苦笑が浮かんだ。
最近、体幹トレーニングという奴を体力つけようと思ってやってみてます
……やってる事は簡単でも、きっついですねえ
運動不足だと猶更です




