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竜に生まれまして  作者: 雷帝
人竜戦争編
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竜王戦場2

暑いですね

冷えた飲み物やアイス、ざる蕎麦やうどんが美味しい季節になりましたが、食いすぎるとお腹を壊すという……

 があああああああっ!!


 人族が聞けば、そんな吼え声に聞こえただろう。

 声にならない声というものでテンペスタが力をふるい、大地が持ち上がる。それと共にぶちぶちと根が引き千切られる。

 蝕樹竜の立つ大地ごと持ち上げる。

 一回目ならまだしも、二回目ともなれば大地に根を張り巡らして支えようとしたのだろうが、一度目よりも大きくお椀状に大地が削り取られる。そして。


 轟!


 と膨大な属性の力の込められたブレスが持ち上げられた大地ごと蝕樹竜に叩きつけられる。

 そのまま大地に向けて放てば、大惨事を招きかねない。

 蝕樹竜はそれを理解して、空へと舞い上がってこようとはしない。ならば、奴を空へと強引に持ち上げる!というのがテンペスタの選択だった。

 当初は蝕樹竜だけを空へと持ち上げようとしたテンペスタだったが、やはり属性を吸収するという性質は極めて厄介だった。ならば、とばかりに大地ごと持ち上げて、攻撃する手に出た。


 これに対して、蝕樹竜側も防御を展開する。

 持ち上げられた瞬間から大地を根が覆い尽くしていき、大地そのものへの干渉を妨害し、更にブレスの気配を感じ取るや、花が咲く。

 巨大な花だ。

 大倫の、どこか不気味な紫紺の華が咲く。

 まるで盾のように、それが膨大な属性による攻撃であるテンペスタのブレスを受け止め、受け流すだけではなく形状故か、根以上の勢いで属性を吸い込み、その吸い込んだ力で更に自己を強化し、それを破られた瞬間に次の華が咲き、と損傷を受けつつも蝕樹竜本体を守り通す。それだけではない。


 ボボン!!


 咲き誇った華の幾つかが瞬時に実り、そこからブレスを迂回する曲射として種が発射される。

 厄介なのはこの種をテンペスタでさえ無視できない事、この種もまた高い属性吸収能力を持つ事だ。

 だが、そこはテンペスタも学習している。

 即座に大気に舞い上がった塵、特に今は大地を持ち上げたばかりで周囲にはある程度の大きさの瓦礫すら絶賛落下中だが、それらを集めて弾丸と為し、加速して種を撃ち落とす。弾となった瓦礫や塵自体はあくまで属性の関わりのない通常のものであり、それを固めるのと加速する際にのみ属性を用いる事で種の迎撃に成功している。

 

 一進一退。


 そんな戦況にどちらの陣営も手が出せない。

 人族の側は最早遠慮も何もなしにテンペスタが放出する属性の力の前に手が出せない。

 竜族の側もまた、味方する人族は言うに及ばず、竜達も自らの代表ともいうべき竜王の戦いに口出しが出来なかった。いや、竜王ですら苦戦するような戦いに固まっていたとも言える。

 しかし、一進一退と言えば聞こえはいいが、互いに攻め手に欠けるという事でもある。

 テンペスタも地面から抜き出し、圧縮した岩を加速して撃ち出すという事を迎撃だけではなく、攻撃にも用いていたが、相手も竜王の一部が素材だ。属性で強度他色々と上昇させたものではなく、単なる加速した硬い物体、ではなかなか太刀打ち出来ない。

 一方、蝕樹竜側も蔦状の鞭や種だけでなく、体に咲いた花からブレスならぬビームを撃ちだしてみもしたが、これまた全属性を持つテンペスタには効果が薄い。

 ただ時間のみが過ぎていき……破局は突如訪れた。


 「はっ?」


 そんな疑問の声をあげたのは竜側、人側どちらが先だったか。

 一つはっきりしているのは双方で、人も竜もお構いなしに突如発生したという事だった。


 「なんだ、これ」


 そう呟いた者もいただろう。

 実際、地上から突然飛び出した細い細い白い糸のような何かが絡みついてきた、そうとしか思えない光景だったのだから。

 と、同時に絡みつかれた当事者達で、その答えを得る事が出来た者は誰一人、一体もいなかった。当然だろう、瞬時に吸い尽され、干からびたミイラと化し、その次の瞬間には粉々に砕かれて破片すら取り込まれてしまってはそんな事出来る訳がない。だから、その光景を見て、その糸が何を意味するかを理解出来たのは幸運にも最初の一撃では攻撃を受けなかった周囲の面々だった。

 もっとも、その中でも即座に逃亡に移れた者は更に少なく、その僅かな間が犠牲者と犠牲竜を更に増やした。


 「なんだこれ、なんなんだ、これはあ!!」

 「そんな、嫌だ、たすけ」

 「このッ!!こんなもの……切れぬ!ばかな」


 人も竜も関係ない。

 上空から見ていたテンペスタには分かったが、それは蝕樹竜を中心として両方の陣営に起きていた。そう、人側もお構いなしにそれは起きていた。

 もし、少し植物に詳しい者がいれば糸のような何かが根毛、と呼ばれるものに似ている事に気づけただろう。もっとも、現実に存在するものはもっと容易く千切れたので結び付けられなかったのかもしれないが。

 そして、前線で起きたその一報を受け、血の気が引いた者達もまた、存在していた。


 「まさか……」

 「暴走?」

 

 上層部で、蝕樹竜の事をある程度知る者達は誰もが先程までの戦闘を真っ青な顔で見ていた。

 王自身が戦っているというだけではない。

 誰も、あれだけの属性を大量に取り込み、また大量に放出するをこの短時間の間に幾度も幾度も繰り返す状況など蝕樹竜が行った事などないのを知っていたからだ。鉄とて、ごく短時間に熱し、冷ましを繰り返せば脆くなるが、同じ事が起きないと言えるのか。

 その答えが目の前にあった。


 「前線を後退させろ!急げ!!」


 だが、彼らに出来るのはそうした命令しかなく、それは崩壊して逃げ惑う前線の追認でしかなかった。

 そして状況を把握したテンペスタが動こうとした時。

 吸い取った膨大な属性を背景として、大量の根が、一本一本が城の塔よりも太いそれが無数に天に向けて伸び、そして。 

 テンペスタもまたその力を全力で解放した。

 

戦闘シーン、本当はもっと丁寧に書きたくもあったんですが、ざっくりとしたものに留めました

書籍とかならもっと細かいシーンも書けるんでしょうけど、次が一週間後という事を考えると引き延ばしになりかねないと思い……


次回!遂にその真の姿を見せる四大竜王達!明かされる真実とは!!

……まで行けるといいなあ

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