偶像3
街を一望できる高いビル。
ここから夜景を観る事ですら
ほんの一握りの存在。
私はそこから、さらにひとつまみされた人間だ。
私はあの流星風流の秋田憂だ。
暗い闇の中に際立つ窓から洩れた光。
街灯、車のヘッドライト。イルミネーション。
全てが私の目に映る。
ここに来ると思い出すのは
何年か前のステージ。ファンがペンライトを手に持ち私たちに向けてくれた。幸せな時間。
その時の光は気持ちのこもった光だった。
一度地方に行った時私のカラーで会場が埋まった事があった。あの時は嬉しくて泣きながら笑顔で歌って踊ったなぁ。その後ありがとうを伝えたくて泣きながらブログを更新した。私に唯一スポットライトが当たった日だったなぁ。嬉しかったなぁ。またあんな日が来るの夢みてたんだけどなぁ。
思い出に浸っていると目の前の光達の意味の無さに冷静になる。
風の冷たさがやけに気持ち良い。
冬のライブを思い出す。
皆が見ていた私は私だったのだろうか。
普段は露出の高い服すら規制されてる反動からなのか、身に纏っているものを全て払いのけてみたくなった。
全身で冷気を感じた。
街の街灯を背に裸の私。
そんな写真が出回っても大して価値もつかないのだろうな。
雪まで降り始め、私の身体を虐める。
私色に染まったあの小さなライブのセットリストを歌いながら踊りきると自然と涙で、景色にピントをあわせられなかった。
やけに綺麗だ。
そう言えば私の代表曲私がいなくなったら、誰が歌うのかなぁ。
私が休養中に入ってきて、大失敗した舞台でボロボロになってしまったショートカットのあの子。
後輩ちゃんの中で唯一私を好きと言ってくれてた子。結局私が復帰する前に辞めちゃったから会えなかったけど、なぜだかあの子が歌っている姿を想像してしまった。自分みたいな人間に憧れてアイドルになってくれた子がいた事が嬉しかったなぁ。
目を開けた時に幸せな明日がまっていますように。
彼女はなんの意思も持たない冷たい風に身を任せる。
ほのかに積もり始めた雪が赤く染まっていた。
もはや流星風流のメンバーでもないショートカットの女の子は、彼女の死をニュースで知って涙を流した。




