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どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。  作者: しげむろゆうき


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7

 ソニアside.


 ソニアはあることを切っ掛けにキリオス伯爵家に四六時中、彼らを監視できる体制をひいていた。

 そして、ある日、密偵からキリオス伯爵家に不穏な動きありと報告後、すぐに彼ら……ではなくハンナの元へ。何しろ彼らの狙いはキリオス伯爵家の跡取りであるハンナなので。跡取りの座をフィナに交代させるために。

 ただ、それがわかっていて対応策も考えていたはずなのにソニアは間に合わなかったが。

 それはハンナの元に向かうなり、目の前に悪夢の様な光景が映ったので。ハンナが乗っていた馬車と衝突したであろう馬車が二台共、道から外れて三メートル程の高さから落ち、積み重なる様に横になる姿を。

 そして、投げ出されたハンナの馬車の御者であるジェームズの姿も。

 相手は逃げたのかそもそも馬車を当てる際に飛び降りたのか見当たらなかったが。


「くっ……」


 ソニアはそのことに唇を噛み締める。

 気持ちを切り替えるなり一緒に来ていた部下達に指示を出し、血だらけのハンナとジェームズを救出すると急いで病院へと運びも。

 自分の手が血だらけになるのも構わずに。



「ハンナお嬢様は出血が多いのと頭をかなり強く打っていますので、予断を許さない状況です」

「そうですか……」


 医師の報告にソニアは頭に包帯を巻き、ベッドに横になっているハンナを申し訳なさそうに見つめる。


「ごめんなさい。きっと、私の所為で奴らが強硬手段にでたのよね……」


 そう呟いて自分を責めながら。

 ただ、「違うぞ。全て悪いのは奴らだ。それにいつかは奴らはこういう事は考えていたのだろう。だからお前が気にする必要はない」

 そう言って病室に入ってきたソニアの兄、レフティア公爵が首を横に振ると、ソニアは少しだけ気持ちが軽くなったが。


「お兄様……」

「なに、証拠も必ず見つけてやるから、それまではお前はハンナの側にいてやれ」

「ありがとう。ただ、このままだとハンナが危険だわ。きっと奴らは何かしてくるわよ」

「そんな事はさせんよ。だから、こういうのはどうだ? ハンナは顔に酷い傷を負い、更に寝たきりなのでもうキリオス伯爵家を継げない可能性がある、そう奴らに教えるんだ。そうすれば奴らは浮かれて、わざわざ病院にまで来ないだろう。もし、奴らが来てもうちの戦闘ができる侍女の顔を包帯で巻いて寝かせて面会させておけばいいしな」

「それは良い案ね、では、それでお願いするわ。じゃあ、私はお兄様が証拠を見つけるまでは変な事をしないよう、奴らに少しだけ援助をしとくわ」

「ああ、そうしてくれ。ただ、例の契約はしっかり書かせておけよ。では、私は早速動くとするよ」


 レフティア公爵はそう言うとハンナに優しく微笑んでから部屋を出ていく。

 部屋を出るなりその表情は悪魔のような恐ろしい形相になったが。


「……ハンナ、必ずあなたが受けた痛みは必ず奴らに味わわせるからね」


 そして、それはソニアも。

 ただ、すぐに表情を変えるとハンナを愛おしげに見つめたが。世界で一番大切な存在を見るかのように。



 しかし、そんな大切な存在、ハンナの意識は二ヵ月程経っても戻ることはなかったが。


「先生、ハンナは大丈夫なのでしょうか?」

「うーーん、頭を打った事と血を流し過ぎた事が原因でしょうから今はなんとも……。ただ、体の方はすっかり良くなってますので……私から言えるのは後は本人次第と」

「そうですか……」


 医師の言葉にソニアは力無く病室を出て行く。

 それからしばらく病院の外でボーッと眺めも。

 ハンナや姉と一緒にお茶をした楽しい時間を思い出しながら。

 ただ、見覚えのあるレジエット侯爵家の馬車が病院の前に横付けされるのが見えた直後、ソニアの表情は強張ったが。

 何故なら、ハンナが入院してから一度もキリオス伯爵家とハンナの婚約者は見舞いに来なかったので。

 つまりは何か仕掛けてきたのかと。フィナの婚約者を使って。


 いや、もしくは小娘を送り届けにきたか……


 ソニアはそんな事を考えながら馬車を見つめる。態度では見せないが警戒心を限界に引き上げて。それは、中から花束を持ったルーカスのみが降りてきても。

 それこそ丁寧に挨拶をしてきても。


「こんにちは。あなたはレフティア公爵家令嬢のソニア様でよろしいですか?」

「レジエット侯爵令息、私はもう平民のソニアよ。それで何をしに来たのかしら?」

「単刀直入に言います。ハンナ嬢の安全を確認に来ました」


 ただし、ルーカスがそう言ってきた瞬間、ソニアは片眉を上げてしまったが。


「安全? まるで誰かにハンナが狙われているような言いぐさね」

「……あなたは知っているはずですよ。あの馬車の事故はキリオス伯爵家が仕掛けた事をね」


 更にはそんなことを言ってきたら余計に。

 何しろ、ルーカスはあの事故をはっきりとキリオス伯爵家が起こしたと言ってきたので。

 キリオス伯爵だけでなく家族も含むと。


「驚いたわね……。そんなはっきり言ってしまって良いのかしら? あなたはあの小娘の婚約者なのでしょう?」

「それなら、近いうちに向こうから婚約解消してくるはずなので大丈夫ですよ。何しろ、フィナ嬢は姉のものは何でも奪うことを生き甲斐としてるみたいですから」

「……そう。それであなたは良いのかしら?」

「ええ、元々、私とフィナ嬢の婚約話は父がキリオス伯爵家の親戚と繋がりたいがために作ったものですから何の感情もありませんよ。それで……私はハンナ嬢の見舞いはできるのでしょうか?」

「……良いわ」


 ソニアはそう答えるとルーカスを案内する。

 軽く世間話をして。まるで先ほどの話で仲間であると打ち解けたかのように。

 ただし、病室に入るなりすぐにルーカスは咎めるような視線をソニアに向けてきたが。


「私はハンナ嬢の見舞いに来たのですがね」


 そう言いながら。

 ただ、ソニアの「あなたの事は信用できないもの」

 そう返事がくるなり納得した表情を浮かべたが。


「……そうですか。では信用されるよう努力します」


 花束を置いて去っていきながら。

 ソニアにとっては感心するような態度を。

 ただし、ルーカスが去った後、花束をゆっくり掴むなりソニアはゴミ箱に投げ入れたが。今は一歩たりとも誰も聖域には入れないと、守護者のように。

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