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どうか、お幸せになって下さいね。伯爵令嬢はみんなが裏で動いているのに最後まで気づかない。  作者: しげむろゆうき


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 そして、数日経ち、その夢はもしかしたら現実になりそうだと実感も。

 ソニアの上位貴族が睨みを利かせているという言葉が利いたのか、あれから家族は拍子抜けするほど静かになったので。母がいた頃の平穏を取り戻すほどに。

 それどころかあの頃よりも幸せな日々を。

 何しろ、ハンナには今は大切な婚約者がいるのだから。

 それも、優しくて頼りになる——と、今日も授業が終わるなりエリオットにエスコートされるハンナは笑顔で馬車へと向かう。

 今日も一日を楽しく過ごせたことで自然と足が弾み、このまま馬車なしでも歩き続けて帰れるのでは? そう思いながら。

 ただし、「お姉様ぁ!」と、焦った様子のフィナが現れ、二人の前に立ち塞がったことで、ハンナの足は急に重くなってしまったが。

 フィナの様子に察してしまったので。


「どうしたのフィナ?」

「大変なのよぉ! お父様が倒れてしまったのぉ!」


 フィナが嘘を言っていると日頃からの態度から察してしまったから。

 ただし、フィナと一緒に来たらしく最近入ってきた新人侍女ホリーが「フィナお嬢様、ハンナお嬢様、急いでお戻り下さい」そう言ってきたため、ハンナは少しだけ警戒を緩めたが。


「わかったけれどお父様はなぜ倒れたの?」

「そ、それは、新人の私には良くはわからず……ただ、旦那様がお二人に声をかけて戻るように伝えろと……」


 ホリーの様子に嘘を言っている様子は感じられなかったので。

 つまりはフィナが何かをしたわけではないと。

 ただし、エドモンドがまた事業を失敗した可能性はありそうだけれど——と、ハンナは頷く。


「……そう、わかったわ」


 それからエリオットを一瞥して悩んでしまいも。キリオス伯爵家の問題に婚約者とはいえ他人を巻き込んで良いか迷ってしまったので。

 特に事情がまだわかっていないのならなおさら。

 そう考えているとフィナがエリオットに媚びる様な仕草で近づいていく。それも必要以上に。

 ただし、口にしたことはしごくまともな事だったが。


「あのぅ、エリオット様は遠慮してもらって良いですかぁ。一応、デリケートな問題になりそうなのでぇ」

「あ……ああ、確かに婚約者とはいえキリオス伯爵家の問題に僕が入り込むのはまずいね。わかったよ」

「ありがとうございますぅ。じゃあ、お姉様、うちで会いましょうねぇ」


 そして、あっさりエリオットから離れホリーを連れて足早に馬車がある方に行ってしまって——と、正直、一緒に行くと思っていたハンナは呆気にとられてしまう。

 すぐに状況を思い出すなりエリオットに頭を下げたが。


「エリオット様、すみませんが私は一人で帰ります」

「わかった。気をつけてね」


 それから、すぐに自分が乗ってきた馬車に足早に向かいも。いったいエドモンドは何をやらかしたのだろうと小さく息を吐いて。

 ただし、馬車に乗りタウンハウスに向かっている最中、ふとハンナは思ってしまったのだが。

 なぜ、新人のホリーをよこしたのだろうと。伯爵である父に何かあったのなら、普通は爵位を継ぐであろう自分には状況が説明できる者をよこさないだろうかと考えてしまったので。

 それこそ侍女長か執事辺りを——と、そう思ったのだけれど使用人も最低限しか人数がいない我が家に、やはりホリーが来たことに納得するしかなかったが。

 何しろ、誰かをこさせただけでもよくできた方なのだから。

 フィナだけでなく——と、そう思った直後、突然、馬車に衝撃がくる。

 そして、馬車が横に倒れていくのを理解も。

 ただ、ハンナの記憶はそこまでだったが。横転した際に頭を強くぶつけて叫ぶまもなく気を失ってしまったので。



 ベッドの上でその事を思いだし、ハンナは自分が事故にあった事を思いだす。

 そして、すぐに髭面でいつもニコニコしている心優しき御者のジェームズは大丈夫だったのかしら? と、心配になってしまいも。

 何しろ、年齢的にもエドモンドよりも上のはずなので。それは健康面と見た目がかなり年下に見えていようとも——と、そういえばエドモンドも大変だとか言っていたことをハンナは今更思い出してしまう。

 なのにその事はすぐに角に置いたが。


「ハンナ、お医者様達が来てくれたわよ」


 部屋に医者と看護師を引き連れたソニアが入ってきたので——と、ハンナは礼を言う。


「ありがとうございます」


 それから鉛のように重い体をなんとか上げようとも。

 看護師に慌てて止められてしまったが。


「ハンナさん、半年間も寝ていたんですから無理しちゃ駄目ですよ」


 ハンナが驚く言葉を言ってきながら。


「……半年間?」


 すると看護師は「ええ、ハンナさんは馬車同士の事故に巻き込まれ、その際に頭を強く打って半年間眠り続けていたのよ」と、説明してくれる。

 そして、ソニアが続けて「ジェームズは大怪我だったけど、今は回復してるわ。そしてあなたの父親はぴんぴんしてるわね……」と、ハンナが心配していたことを。


「そうでしたか。良かった……」


 ハンナがそう言った直後、ソニアは一瞬顔を顰めたが。

 ただし、すぐに笑顔になるとハンナの頭を撫でも。


「半年ぶりに起きて沢山話したから少し疲れたでしょう。もう休みなさい」


 まるで、ハンナの状態が手にわかるように——と、ハンナは急に眠気が来る。

 そして、すぐに夢の世界へと落ちていきも。



 ソニアside.


「……ハンナは姉さんの大切な娘。そして私にとっても大切な存在」


 ソニアは愛おしそうに静かに寝息をたてているハンナの頬を撫でた後、医者に質問する。


「先生、ハンナはどれくらいでまた普段通りの生活に戻れますか?」

「おそらく三カ月ぐらいでしょうね」

「そうですか……。では、先ほど話した通りにお願いしますね」

「わかりました」


 それからゆっくりとハンナから離れも。

 ただし部屋から出た瞬間、ソニアは唇を歪めたが。


「やっと、奴らを地獄に落としてやれるわ」


 そう呟きながら。

 誰もがゾッとするほど冷たい表情に変わって。

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