お別れだけど寂しくはない。
20XX年X月XX日
蟇目蛍の死別より、一年と少し。
多くの墓が立てられたこの墓場に、二人の人物が来ていた。
一人は、手入れされた墓の前で手を合わせ、目を閉じお参りしている。
もう一人は後ろからソレを複雑な目で見ている。
言わずもがな、夏菜子と女の蛍である。
「なあカナ、これ意味あんのかな?」
蛍が後ろから疑問を上げる。
「俺、生きてるけど」
腕を後ろに組み、釈然としなさそうな顔をしている。
「でも、それは“女の”蛍でしょ?」
優しい顔で振り返り、そう語る。
その返答に蛍は少しムッとする。
お前は私の友達だけど幼馴染じゃないと言われたようで、
なんだか胸がモヤっとしてしまった。
「女でも男でも俺は俺だよ」
「……これから蛍は美紅ちゃんっていう女の子として生きていくでしょ?私は心機一転して、新しい私として生きていく」
そう言の葉を紡ぎ、青い青い空を悠々と浮かぶ雲をどこか遠い目で追う。
「ここに来て男の蛍……過去と向き合って、初めて私は再スタート地点に立てる。そんな気がするんだ」
「……」
やはり、蛍にはよくわからない。
「そっか……」
でも、夏菜子にとっては欠かす事の出来ない、大切なモノなんだと思った。
だから、蛍も横で夏菜子に倣って手を合わせる。
そして大声で宣言する。
「よっしゃー!頑張るから刮目しろよ男の俺!過去のお前よりも偉くなって前に進んでやる!」
そんな蛍を見て、ホッと安心したように、懐かしむように、感極まるように顔を綻ばせ、熱くなった目元をグッと拭い、誤魔化すように大声で過去にお別れする。
「うん!私もいつまでも腐ってらんない!頑張るよ!見てて蛍!」
「おう!」
「あっ、今のは男の方」
「……うぐぅ〜〜!!!……なんだよそれぇーー!!」
跳びついて抱き締めつけてやる。
が、軽々と受け止められ、頭をよしよしされた。
俺は子供じゃないんだぁ!と、全身からやめろオーラを滲ませる。
「うぎぎぃー!」
「あーっはっはっはー!私を倒すのは百年早いわ!」
……そんな光景を遠目から眺める男。
「あそこにいるのは……夏菜子さん……?あの子は……」
その男は、
ある、失った弟に姿以外が酷似している少女を見て。
いつまでも立ち尽くしていた。
見てくれてありがとうございます!
大丈夫かな作者。最近おふざけしてないけどちゃんと日常パート書けるかな?




