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2章 42話 絶望



 絶望が。

 聖なる都市カルディアナを支配した。


 カルディアナが眠る陽光の月の儀式の最終日に、悲劇は起きた。


 500年前起きた恐怖の具現。禁呪によるグールの出現と聖樹への反乱。

 王都の中心の広場で怒号が飛び交い、悲鳴が響く。


「逃げろ!!グールだ!!グールがでたぞ!!!!」


 突如各地に現れたグールが人々を襲い始めたのだ。


 普通の人かと思われていたそれが、いきなり苦しみだしたと思ったら咆哮をあげて姿が青白く変化していく様は異様な光景だった。

 徐々に人の肌が鱗と化し青白い肌になり牙をはやし変貌していく様子は紛れも聖書で恐れられ畏怖の対象とされるグールそのものだ。


 グールは500年以上前。

 人間が聖樹に対抗するために生み出した禁呪。

 過去ファラリナの力を奪おうとした禁忌の魔法。

 人々にとっては絵本や聖書でみるおとぎ話や伝承の中の話――のはずだった。

 そのおとぎ話の存在が突如街中に現れ人々を襲おうと動きだしたのである。

 街の人達は誰一人その真実を知ることはなかった。

 かつてファラリナに滅ぼされたはずのダルシャ教徒達が各地で一斉にグール化して人々を襲い出したのだということを。

 ただわけもわからず現れたグールに人々は逃げ惑うしかなかったのだ。


 グールに逃げ惑う人々を高い時計台の上から見下ろしながら、アルベルトに憑依したダルシャ教徒は微笑んだ。


 500年前、ダルシャ教は人々の希望として、各地で密に崇めまつられた。

 恵みがあるにも関わらず人間にその一部しか与えない聖樹達に恨みをもつ人間は少なくなかったからだ。

 目の前に緑があるにも関わらず、聖樹達は動物や聖獣の地だとそこに人間が住む事を許さなかった。

 飢えて死ぬ子どもや貧しい貧民、老人達を聖樹は見殺しにしている現状に憤りを覚えていた。


 そこに現れたのがダルシャ教だ。

 聖樹達を人間の監視下におき、すべての緑の地を人間の手にーー聖樹を従わせ、飢えも乾きもない理想の世界に。


 その理念を元にダルシャ教徒達は聖樹ファラリナに戦いを挑んだ。


 禁呪を手に入れその力で一時は上手くいくかと思われたその戦いは――ダルシャ教徒が敗北した。聖樹の力は人間の想像以上だったのだ。


 そして敗れたダルシャ教徒達に待っていたのは、聖樹達による反撃と――人間達の裏切りだった。


 ファラリナに敗れ、聖樹達が人間達に敵意を示すと、人間達は我先にとダルシャ教徒達を殺しはじめたのだ。残虐な方法で。


 いまだあの時の事は鮮明に覚えている。目の前で殺される仲間達。


 泣き叫ぶ子どもまで容赦なく殺されるさまはまるで地獄絵図をみているようだった。

 

 人間の未来のためにと立ち上がり、敗れた途端、お前らのせいだと迫害を受け殺されていった。自分も――500年前、瀕死になり仲間とともに自らを封印した。


 だが数年前。気づけばいつの間にか自分はアルベルトの身体に憑依していた。


 遺跡調査にきた調査団員全員に、かつて殺されたダルシャ教徒達がのりうつっていたのだ。

 サーシャ達にもまたダルシャ教徒が憑依していたのである。

 ダルシャ教徒達は何故今復活を遂げたのか――誰一人答えを知る者はいなかった。


 だが、誰もがこれは運命だったと確信した。

 これは神が我らに復讐の機会をくれたのだと。


 また禁呪が復活したと知れれば、聖樹達は今度こそ人類全てを滅ぼすだろう。


 そう、このカルディアナでの人類の滅亡は序章にすぎない。

 怒り狂った聖樹達が自分達(邪教徒)を滅ぼそうとも、それが何だというのだ?


 人間達もともに滅ぼされるならそれでいい。望むのは自分達を裏切った人間の滅亡。

 人類が聖樹に惨たらしく滅ぼされれば、ダルシャ教徒が正しかった事を証明できる。


「さぁ!!カルディアナ王都が滅びれば人間は滅亡を迎える!!

 我らだけを聖樹に挑ませ、敗れた途端我らを迫害した人間達に復讐を!!!!」


 小高い時計台の上から眼下に広がる逃げ惑う人たちと自らの部下がグールと化して人々を襲い始めたのをみたダルシャ教徒アルベルトが歓喜に震えたその瞬間。


 ズゴゴゴゴゴゴ


 激しい音をたて、それは現れた。

 カルディアナの王都の中心に聖樹カルディアナを超える巨大な木が突如姿を現したのだ。 

 そちらに慌てて視線を移せば木の上にたたずむのは金髪の赤い瞳の少女。


「なんだ!?まさかあれが聖女か!?」


 月夜に金色の髪をなびかせて微笑む少女が手をあげた途端


 ザシュ!!!!!


 ――カルディアナ王国全土に無数に伸びた木々がグールだけを貫き、ぐちゃぐちゃとグールの復元力が追いつかなくなるまで痛ぶり続ける。


 逃げ惑う人々を助けるかのように蔦がグールめがけて飛んでいき、喰らいつくしているのだ。

 人間だったころの原型をとどめたそれを容赦なく、潰し、切り刻み、血を飛び散らせているのである。 


「ありえないっ!!!たかが聖女があのような力を使えるなど!?

 聖樹が眠る陽光の儀式中だぞ!?聖樹が聖女に乗り移ったわけでもないのになんでこんな広範囲攻撃を!?聖女がそんな力を使えるだなんて聞いたことは………」


 ダルシャ教徒が悲鳴をあげれば


――人間の知識ごときで何がわかるのかしら?

  ファラリナで成功したからと調子にのったようだけれど……――


 どこからか可愛いらしい声が直接脳に響き邪教徒が目を見開いたその瞬間。

 少女がこちらを見た。


 ニコニコと笑を浮かべーーそして口が動く。


「みつけた」


 ――と。

 

 それと同時にまた声が頭の中に響く。


 ――ごめんね☆うちの聖女ちゃんは規格外の最強だから☆――


 その声が、最後に聞いた言葉だった。ダルシャ教徒は木の蔦に身体が貫かれていたのだ。

 邪教徒は理解した。この少女こそ、カルディアナの聖女ソニアだという事を。

 そして頭に直接響く声の主は聖樹カルディアナだという事を。



 誤字脱字報告&ポイント&ブクマありがとうございました!!


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そして手に取ってくださった方は本当に本当にありがとうございました!!!多謝★★★

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