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2章 28話 断罪(2)

「リーゼっ!!」


 クレアが嬉しそうにリーゼという少女の名を呼べば、リーゼはクレアにほほ笑んだ後、ロテーシャを睨み。


「クレア盗んでない!リーゼ保証する!」


 と、王族にひるむことなく、すたすたと歩いてくる。


「ぶ、無礼だぞ!!貴様!!!!」


 兵士の一人がリーゼの肩を触ろうとしてたじろいだ。

 どこからか放たれる殺気のようなものに動けなくなったからだ。

 もちろんシリルが念力で邪魔をしているのだが兵士はそれを知る由もなく、理由なく動けなくなったことに戸惑いを覚える。


「そのような少女一人に何を手間取っているのですか!?

 早く捕まえなさいっ!!!」


 クレアを守るように前に立ったリーゼを指さしヴィオラが言えば


「捕まえる?さて罪状はなんでしょうか?

 私の姪にどのような罪があったのかお聞きしたいのですが?」


 制止した声に――誰もが耳を疑った。

 ロテーシャやヴィオラの後ろから神官を多数引き連れて現れたのは……大神官ラーズその人だった。



 ■□■



 広場にざわめきが起きる。

 大神官と王族との揉め事など本来あってはいけないはず。

 それなのにその両者が対立しているのだ。



 なんで!?なんで大神官ラーズがここに!?

 たかが小娘同士の小競り合いに顔をだすなんて!



 こんな事は聞いていなかった。ヴィオラは歯ぎしりした。


 クレアを貶めてほしいとロテーシャに頼まれその通りに実行しただけなのになぜこんな大仰な事になったのだろう。

 実家から王族のネックレスを隠したドレスをクレアに送り、あとは舞踏会の日にそのネックレスを盗んだ事を暴く手はずだった。クレアはここで王族の私物を盗んだと罰せられる予定だったのである。


 なんでここに大神官が!?

 こんなはずじゃなかった!!


 いつの間にか容姿の麗しい自分を差し置いて、アルベルトに気に入れられた姉がずっと気に入らなかった。いつか蹴落としてやるとアルベルトに気があるロテーシャに取り入ったのだ。

 ロテーシャをそそのかしクレアを貶めるはずだったのに。



 なんで大神官ラーズだなんて大物がでてくるの!?

 出席者にラーズの名前なんてなかったのに!! 



 ヴィオラは歯ぎしりする。

 もちろんーーラーズの出席が知られれば、ダルシャ教徒に漏れるかもしれぬと、ラーズが必要最低限の者以外には伏せていたのだが、ヴィオラがそれを知る由もない。

 ヴィオラは額に冷や汗を浮かべながらただ成り行きを見守る事しかできなかったのである。



 ■□■


「こ、これは大神官様!!」

 

 ロテーシャに連れられてきた騎士たちが頭を下げる。


「ラーズ様!!」


 クレアが嬉しそうに言えば、ラーズがうなずいて、護衛の神官がクレアとリーゼをラーズの後ろに立たせた。


 つまりーークレアはラーズの庇護下にあることになる。

 王族よりも立場が上である大神官の。


 ロテーシャの顔が青ざめた。

 現在この国に大神官に逆らえるものなどいない。

 偽聖女の件で、国を救ったラーズの地位は盤石のものとなった。

 偽聖女を排し本当の聖女を導きエルディアとカルディアの加護を賜った。

 二つの聖樹の加護を受けるなどといままで誰もなしえなかった事をやってのけたのだ。

 予期していなかった大神官の登場にロテーシャが一歩たじろげば


「この少女は朝からずっと我らと行動を共にしていました。

 私が目を離したのは舞踏会のダンスに参加した時のみです。

 彼女が貴方のペンダントを盗み出すのは不可能に近いでしょう。

 落としたにしても、王族の紋章入りのペンダントを拾って誰も届け出ないなどと考えにくい。

 そのペンダントを忘れてきただけではありませんか?」


 と、ラーズが告げる。本来なら大神官相手に勝ち目のない戦いだがーーラーズの言葉にロテーシャは一筋の光を見出した。まだチャンスはある。

 クレアを陥れこの場を形勢逆転するチャンスが。


「しかし、ラーズ様。

 私がペンダントをなくしたのは、舞踏会のダンスがはじまる直前です。

 忘れてきたなどということはありません。

 舞踏会の直前に落としたペンダントを拾い、隠し持っているのかもしれません」


 ロテーシャの言葉にほぅっとラーズが目を細める。


「それは間違いありませんか?」


「間違いありません。ペンダントはダンス直前まで私が持っていました。

 そうですよね?アルベルト?」


 ロテーシャに話を振られて、アルベルトが息をのむ。

 不安そうにアルベルトを神官たちの後ろから見るクレアの事を思えば、「なかった」と、証言したい所ではあるが――騎士としてそのような嘘をつくわけにはいかない。

 それがわかっていて、ロテーシャはアルベルトに話を振ったのだ。

 アルベルトが護衛していた時は、ロテーシャの首元には確かに王族のペンダントが輝いていた。

 アルベルトが黙って頷けば、ロテーシャは微笑んで


「大神官ラーズ様、今この場ではっきりさせたいと思います。

 ここであらぬ疑いをかけられたまま終わるより、潔白を晴らしたほうがクレア様の為になるかと」


「ほう?はっきりとは?」


「ここにある魔道具は王族が所有する魔道具です。

 これは王族所有の宝石に反応し、その宝石を光らせる効果があります。

 私のネックレスを持っていれば、おそらくそのネックレスが光り輝くでしょう。

 もしクレア様が所持していないのなら光るはずがありません」


「なるほど。面白い」


 そう言ってラーズが目を細める。

 その様子にロテーシャは微笑んだ。この勝負勝ったーーと。




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