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2章 8話 不安(他視点)

 ガタガタガタ。


 市場から神殿に戻る馬車で、リーゼはファルネの腕の中で眠りについていた。


 歩き疲れたのか自分の腕の中で眠ってしまったリーゼを見て、ファルネは心の中でため息をつく。

初めての友達とはしゃぐリーゼは微笑ましく思うし、あれほど同年代の子を怖がっていたリーゼが喋れるまでになったのは純粋に喜ぶべき事だ。

 けれど殴られそうになったクレアを守ろうと無意識に力を発揮してしまったリーゼの顔は、守ろうというよりも怯えていたように見えた。今にも泣きそうで。まるでリーゼ本人が殴られそうになったかのように恐怖に怯えた表情。

 自分にではなく他人にまで振るわれる暴力をあれほど怖がるのは彼女の中で虐待された傷は癒えてはいないのだろう。

 時々夢でうなされているのは知っている。

 それでも健気に笑うリーゼの姿に胸が締め付けられた。

 いくらカルディアナ様が制御するように加護を与えてくれたとはいえ、あのように無意識に聖女の力を発動させてしまうのでは、まだ彼女を外に連れ出すのはやいのではないかと危惧される。

 ラーズに相談する必要があるだろう。


 幸せにしてあげたいと心から願うけれど。

 自分は彼女を幸せにしてあげられているのかと不安になる時がある。

 一度無理矢理リーゼの記憶を奪ってしまおうとした事があるだけに、自分の選択肢が正しいのか常に自問自答する日々で。

 自分の思う彼女にとっての幸せと。彼女の思う幸せは違っている。

 自分の基準で彼女の幸福を決めつけていいものかという不安は拭えない。

 リーゼの望むものを。望む答えを。


 リーゼの頭を撫でて誓う。

 彼女に安らぎと幸せを自分の手でと。



 ■□■


 エルディアの森の中で。

 リベルが川で魚をとるその横で寝ていたシリルは顔をあげた。

 リーゼが去ってから、寂しくはなったが相変わらずリベルや森の動物達に囲まれ……エルディアに「肉球!肉球!」とストーカーされたりもしたが、それなりに平和に暮らしてきたのだが。


 急に何かを感じ取ったのだ。

 嫌な予感がする。


 ゾワゾワとした気配に顔を上げた。

 

『シリルどうした!?どうした!?』


 大きな魚をもったままリベルがシリルに聞けばシリルは目を伏せた。

 気配を辿ってみるが森にはなにも異常はない。

 なのに何故こんなに胸が騒ぐのか。


 特にリーゼの事を思い浮かべると、胸のモヤモヤがさらに高まる。

 野生のカンか。何かリーゼによくない事がおきるのか。


『愛しい子よ。感じるでしょう?

 邪悪な気がカルディアナから感じられる。何かが蠢いている。

 いまはカルディアナが瞑想にはいる陽光の月だったはずよ』


 シリルの不安に答えるように現れたのは金髪美女のエルディアだった。


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