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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第六章『迷宮最寄りのクラレント』
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第二話―聖&コメット&リフレク side 1『4thコンボ』―

ちょっとした出来事。


妖精ヴェルイットは188層の階層主で幹部の一人である。

そんな彼女は、のんびりと自分の泉に浸かっていた。


ヴェル「レファンが迷宮からいないと平和ね」

ヴェル「それにしても私に迷宮核を毎回預けるのは信用してると見て良いのかしら」


188層は広い階層だった。

湖の湖畔を丸ごと一階層に当てたように全体に迷路のような仕切りがない、広大なエリアだ。

その中心にさらに区切られた泉があり、そこがヴェルイットの管理する門がある所である。

因みに門は泉の中だ。


しかし、それも過去の話である。

ヴェルイットはある一角を見つめ呟く。


ヴェル「折角だし、あの大穴塞いじゃおうかしら」


ダルフが実験に空けた大穴は水の侵入を拒む結界が張られ、底が見えないほど深かった。

ヴェルイットは迷宮核を操作して、『ダンジョン・ツール』を呼び出し、埋め立てようとするとあることに気がついた。

それは……………


ヴェル「なんで、宝箱にそんなもん詰まってるのよ……」


ヴェルイットはため息をはく。


そんな一幕。


結晶専門店『C.C』の店主は魔女のようだ。

コメットは数分前に先に会っていたが、聖は初対面でリフレクは知り合いらしい。

三人の正面にいるのは、


リフレクと同じ格好の少女。

眠そうな目。

細身の身体はぐてっとカウンターに突っ伏している。

空のような青さの髪に、雲のような白い瞳をもったリフレクより幼い少女。


やる気無さげな少女は、コメットをからかいつつその側の二人を見た。


「昔はボクの魔法で友達を作って欲しい、って言っていたリフレクにもついに―――」

「わぁぁあああああああ、やめてください! 何を!? 嘘です! 」


リフレクは即座に近づき、黒歴史を暴露しようとする同族の口を慌てて押さえる。


そんな様子を見ていた聖は、


「おい、あの魔女友達を作れるらしいぞ!ならきっと仲間、戦力……」


目をキラキラさせていた。

コメットは微妙な顔をしていた。

なぜか、不自然なほど仲間に恵まれないリフレクは、きっと体質的なものであると検討をつけていたコメットだが、まさか、友達や仲間を『造って』貰う、それほど思い詰めているのとは思っていなかった。


『リフレクさん…あなたって人は……』


「いや、子供の頃の事ですよ! それにそんなこと言ってません!!

あとそこの聖騎士モドキ、その反応を止めてください、昔を思い出します!!」


聖とコメットの対照的な反応に弁解するリフレク。

どうやら、聖の反応は忌まわしい過去を刺激されるらしい。


――――――――――――

暫くしてから、リフレクが二人にクリエイトを紹介した。


クリエイトは常に眠そうな覇気の無い少女に見える。

その魔女は実はリフレクより年上であった。


その事実に驚く聖。

コメットは平然としていた。

魔族の1種族である魔女族は見た目と年齢が合わないことを知っていたのだ。


「なに!? その見た目でリフレクより年上だと!?」

「そうさ、僕はこの子より30年は多く生きているね」


クリエイトは魔女帽をずり落としながらぐてっとしたままそう言った。

聖はリフレクをじっと見る。


「………なんですか?」


リフレクは視線を感じ聖に向き直ると、


「いいのか? 明らかなサバを呼んでるぞ? 怒らないのか?」


クリエイトに指を指しながら至って真面目に告げる。

が、しかし、リフレクはため息を付くばかりだ。


「いえ、事実ですし、私の方が年下ですよ」


仕方がないが事実だと聖に言う。


「…………(ふーん、【魔】のモンスターに【小精霊】ね……)」


そんなやり取りを行う聖とリフレクの頬にある白い『9』の紋様にじっと視線を向ける人物がいた。




お互い自己紹介が終わり、早速商談に入るがそれも一瞬で終わった。


「ごめん、一時間前に売れちゃった! てへっ」


と言われてしまったのだ。


固まる聖とリフレク。

その様子を見守るコメット。


しかし、売れたものはしょうがない。

売ったクリエイトが悪いわけではないのだ。

そもそも、三人が即払える金額では無かった。


ピクッと震えた後二人は動き出した。


「店主、そいつの特徴を教えて貰おうか……」


背中に背負っていた盾から剣を抜く聖とその聖を羽交い締めにするリフレク。


「ほら、ほら見てみなさいよ!! あんなのんびりしているから!!」

「放せぇぇ、教えろぉ!」

「顧客情報ですよ!? 教えるわけ無いでしょう!!」


どたばたと暴れる聖とリフレクに、コメットはため息を付き、この『C.C』の店主であるクリエイトは何ともないように言った。


「えっと、そうだなぁ、銀髪で胸が大きかったような……」


「!! わかった…感謝する」

「え? ちょっ、わぁぁ!?」


それを聞いた聖は礼をいい、非力なリフレクを突き飛ばして即座に走り出そうとする。

しかし、前に進むことが出来なかった。


「うべぇ!?………」


聖の目の前に半透明な壁が構築されていたのだ。

これを作り出したのは一人しかいない。

ぶつけた鼻を押さえ聖は目で訴えるが、その相手であるコメットはニッコリしているだけだ。


『略奪はダメですよ? 別の方法を探しましょう』

「むぅ」


聖は渋々ながら従い、突き飛ばされたリフレクもヨロヨロと立ち上がる。

コメットの声は聞こえないが、クリエイトも何を言っているのか大体雰囲気で察した。

クリエイトは指を向ける。


「リフレク、そこの商品棚片付けておいてね」

「えぇ!?そんなぁ」

「突き飛ばされちゃったのはリフレクだよ、ほら『仲間』ならああやってしっかり止めないとね」

「はぁ……と言いましても、私じゃ無理ですよ」


クリエイトの言葉にガックシうなだれるリフレク。



―――――――――

棚の片付けも終わり、案を考える四人。


別の方法として上がったのは、クリエイトが転移石を10個用いて、目的の『上質な』転移石を造り出すことだが、時間が極端に掛かってしまう。

クリエイトが取り掛かって、大体3ヶ月は掛かるようだ。


他に方法が無かったため、取り合えずその案で行くことした聖達。

もし、それより先に手に入れられたら、それでよし、ということになっている。

クリエイトは造り上げても、別で手に入れてもどちらでも良いそうだ。


「じゃあ、完成したとしたら、お値段だけど……金貨7000枚ね」


クリエイトから告げられる値段にコメットまでも唖然とした。

言われた値段にやっぱりと言う顔をするリフレク。


「高すぎませんか? 」

「でも、これでも結構良心的だよ? リフレクの仲間記念で金貨3000枚はおまけだからね」

「なんですか!? 金貨一万枚とか、小さな豪邸が建てられますよ!」


予想外に値引いてくれることは嬉しかったが、元金のでかさに叫んでしまうリフレク。


「じゃあ、買っていった人物は何者ですか!? ポンと払ったって事ですか!?」

「うん、そこの壺がそう」

「壺?」


カウンターから動く気はないのか、カウンターの丁度下を指差した。

そこには、蓋がしてある膝までの高さの壺があった。

その壺の隙間から、金の輝きが発せられていた。


間違いなく即払いをしたんだろう。


(それにしてもそんな大金をすぐ出せるなんて、何者でしょうか?)


リフレクは壺を見て思案していた。


まずは一つづつやっていくしかないのだろう。

リフレクは提案する。


「とりあえず、お金を稼ぐために冒険者ギルドに向かいましょうか」

「そ、そうだな、ちゃんと、稼がないと、な」


チラチラとある方角に視線を向ける聖。

そんな聖の背後に佇むコメット。


『……聖ちゃん?』

「なにも見てない、盗ろうとして無い!!私は騎士だぞ!」


あまりにも信用できない発言にリフレクもため息を吐いた。


早速冒険者ギルドに向かおうとすると――――。


「ああ、リフレクはちょっと話があるよ」

「え? なんでしょうか?」


心当たりが有りすぎて冷や汗をかくリフレク。


聖とコメットはお互い顔を見合せたのち、


「じゃあ、先に行って【クエスト】決めておく。

あ、先に宿かな?」

『長丁場なら『エルフの秘店』に泊めて貰いましょう。

なので大丈夫ですよ、ギルドに向かいましょうか』


といいう話になり、後でな、といい出ていってしまった。


待っててくれる筈、いなくならない筈、たぶん……

という不安に教われながらも、一応は信用し、引き留めた同族の正面に立つ。

何を言われるか、緊張で心臓がばくばくだった。


「なんなんですか? クリエイト」

「分かってるでしょ? なんで『あっち側』で行動してるの?」


リフレクはやはりと思った。

さすがに気づく人は気づくのだろうか……

惚けることにしたが、クリエイトが自分の頬を指差していた。

クリエイトのつるりとしたほっぺには何もないが、リフレクの頬には魔物との意思の疎通をするための

刻印が刻まれている。

知っていれば分かりやすい理由だった。

ため息を付きつつ、協力して貰うために、同族の中でも結構仲が良いクリエイトにあった出来事をすべて話すことにした。


「実は―――」


――――――――


すべてを話終わったリフレクにクリエイトはポカンとしていた。

それはそうだろう。

世界の真実や叡知を求める魔女族は、時と場合によっては、『魔王』や『魔皇』の元に付くこともある。しかし、長い年月の中でまさか、【魔】の側につく魔女は一人もいなかった。

それは、まともに話が出来る【魔】は少ないし、人族に知られれば天敵の『魔女狩り』を差し向けられるからだ。

昔から、面倒を見てきたリフレクが、そっちに手を出しているとは思ってもいなかった。

そのため下手なことになる前に縁を切らせようと思っていたのだが……


「やめときなって、相手は【魔】だよ? 上には『呪殺のレファンシア』でしょう? 」

「い、いやですよ、せっかくの『仲間』ですから。 それに裏切らないって『レファンシア様』もいっていましたし」

「レファンシア様って……」


話をしていくと、リフレクが絶対に引き下がらない感じがした。

クリエイトはもしリフレクが【魔】に堕ちてしまっていたら、魔女の決まりで殺さなければならない。

剣呑な雰囲気がいつもは眠たそうにしているクリエイトから発せられたことで、慌てて訂正をするリフレク。


「ちょっ、別に【魔】には堕ちてませんよ!?」

「本当に? 」

「本当ですよ! ただ、私は何て言いますか『黒木さんの仲間』であって『魔精』についたわけではありません」


言ってる意味が分からないクリエイト。


「あの子もレファンシアの配下でしょう?」


リフレクは続ける。


「えっとですね? それも違うというか……」



二人の魔女の話し合いは一時間くらい続いた。

結局、クリエイトが理解できたのは、魔精と宝箱の関係と、なぜか迷宮に挑み続ける謎の集団の事だけだった。


「あぁ!? こんなに時間が!! ヤバイです、絶対変なクエストを受けてそうです!!」


時計を見て慌てるリフレクを止めるクリエイト。


「ちょっと、そのままで行くのかい? 色々話して貰ったお礼に作り直してあげるよ」


クリエイトはリフレクの身に付けている装備品が魔力を感じさせないことに気になっていたが、話の中に出てきた『アイオロスの魔導書』で納得していた。

魔女が装備する装飾品は様々な効果を発揮するが、そのどれもが壊れていたのだ。

それを直してあげる、というクリエイトの言葉に数秒悩んだリフレクは、


「超特急で、お、お願いします。」

「はいはい」


リフレクが結晶専門店『C.C』を後にしたのはさらに1時間経った頃だった。

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