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迷宮深部の偽宝箱《トレジャー・ミミック》  作者: 流水一
第五章『迷宮の日常と冒険者の苦難』
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第四十五話ー偽装宝箱ー『この一年の合間に①』

擬態していた冒険者の姿からから元の偽宝箱に意識を戻した俺は、さっきの冒険者達の異質さに戸惑うばかりだ。

まさか、あれでパーティーが成立しているとはな。

折角体を構成する半分以上をつぎ込んで、鉄格子を造ったのに自ら動いてしまったのは悔しい限りだ。

はっ、まさかあいつらは俺を精神的ダメージを与える為だけに、あんなふざけたことをしていたのか?

俺の宝物庫をシャワールームにして使っていたエルフ......ヤツについては、エルフィにどういうことか問い合わせてやる。


それにしても、可笑しい.....

前まで鉄格子に適当なもの入れといても、ある程度は近寄ってくれたのに、今回の敗因はなんだ?

この罠の理想としては鉄格子に触れてくれると、位置を入れ換える【キャスリング】のスキルが勝手に発動して、捉えて落とす。というものなんだが.....


「やはり、あれか?試しに使った俺の【擬態】がいけなかったのか?」



――――――――――――――――――――――――――――――



一年前、『擬態影人(ドッペルゲンガー)』との戦闘後、元の身体に戻ったら【キャスリング】に【擬態】のスキルと他数個新たに獲得していた。俺は覚えがないが【解析】していたのだろうか?

しかし、違ったらしい。

元の身体の状況は、南大陸に行く際、八割方呪われていたのに、その呪いもきれいさっぱりなくなっていたのだ。呪いを解くために連れてきたダルフのお友達?のエルフィが『あら?ダルフの勘違いじゃないの?』と怪しむくらい何にも問題がなかったのだ。

元の身体に戻り、気になる点といえば、内蔵宝物の数が二桁を切っていたことと、色々なスキルを獲得していたことだけだ。


「じゃあ、用も済んだんならお帰りいただいて結構よ?」

「あらあら、連れてきておいて茶も出さないんですか?さすが、いつも主が居ない間大暴走を起こす迷宮なだけはありますねぇ」


しっしっと手を振り帰れコールをする子供染みたダルフに、ピキっと頭に青筋を浮かべニコニコするエルフィ。


コメットやベルベット、そして聖は長旅の疲れもある中、大暴走のせいでごちゃごちゃした迷宮内の点検に向かっていった。

本当にご苦労様です。

俺は動けないので、元の身体にダルフによって戻されたのだ。



―――――――――――――――――――――――



大暴走の爪痕も酷いもんだったが、街を素通りしてモンスターが溢れてくる迷宮入り口で、金髪のイケメンが溢れるモンスターをバッタバッタと切り殺している光景もある意味酷かった。

俺はあれぞリアル無双ゲーと言ってしまうぐらいだ。


「やぁ、お帰り、ずいぶんと遅かったね」

「アーサー、まさかずっとそんなことやってたのかしら?」


ダルフが近づいたことで迷宮のモンスター達は急いで巣穴に帰っていく。

なんというシュール。


「まぁね、でも2週間に一回ペースだからいい運動になるよ」

「人の配下でハッスルしてんじゃないわよ、まったく」

いま、ダルフの配下切り殺していた人となんで呑気に会話してるの!?


「おや、君たちは......」


爽やかイケメンは、一緒にいるメンバーにも気づいたようだ。


「お久しぶりですね、ホーリーは一緒じゃないのですか?」

「筋肉痛っていってベッドで寝ているよ」


はっはっはっ笑うイケメンと知り合いぽいエルフィ。


――――――――――――――――――



ー帰還確認ー

ー今まで経験を同期しますー

ー異常なしー

ー膨大な経験値を処理しますー

ー現在進行速度(3%)ー


「戻ってきた戻ってきた、ああ、しんどいわ。やっぱ家が一番じゃね?」


俺の声を聞き取れるのは、聖かベルベットしかいなかったため、平然と呟いたら、険悪な空気になりそうなダルフとエルフィがさっと周りを見回していた。


「今の声はどこから?」

「ダルフまたイタズラですか?子供ですね」

「違うわよ!!」


え?なに?まさか通じちゃうの?

俺はまさかと思いつつも、もう一度喋ってみた。

しかし、他にいうことがあっただろ!俺!!

なぜそれが思い浮かんだし!


「......デカ乳?」


ぱっと俺(一面がB1サイズの長方形で出来た宝箱)に指をさした


「聞こえたわよ!ミミックあんたでしょ!?」

「お、おう」


嬉しそうに指をさすダルフ。

俺も内心通じたことに喜びを隠せないな。


「しかし、喋るミミックですか?見たことありませんね」


確かに今までは聖やベルベットなど専用のスキル持ち相手にしか喋れなかったが、これからは普通に会話できるのか......筆談とか面倒だったんだよなぁ......


「てか、エルフィまだいたの?」


ダルフのあの顔は本心から不思議そうにしている顔だ。

エルフィは口許をピクピクさせていた


「当分滞在の予定と言ったではないですか?忘れっぽいんですか?鳥頭なんですか?」

「な!?失礼な魔精ね!」


のけ反り大袈裟なリアクションを返すダルフ。

そんなダルフの残念さに申し訳がたたない俺。


「なんかウチの上司がすいませんね」

「いいんですよ、4000年もの事なので」


いつもこんななんか!ダルフ!


―――――――――――――――――――


エルフィが滞在する理由は2つ。


一つは、あのときの戦闘でエルフィの居住区の神殿が崩壊したこと。

聖と影人のせいですね、分かります。


もう一つは、エルフィの配下がコメットしかいなくなってしまったこと。

これにより、エルフィ自体も自らの迷宮を閉めざる終えなかったのだ。

力を蓄えるために、一時的にダルフの迷宮で世話になることにしたらしい。

ダルフは迷宮の知名度を上げることで、振るえる力が上昇するが、エルフィは、配下またはエルフィを信仰するエルフ、および自身が、誰かに『献身』することらしい。

ぶっちゃけ、コメットがダルフのところで、せっせと働くだけでエルフィは自然と振るえる力が上昇するのだ。

これを聞いたダルフは『卑怯よ!寄生なんて!』と言っていたが、しっかりと自己管理が出来ていれば、『お手伝い』程度であり、力の上昇も見込めないが、ダルフレベルの管理能力のない相手だと『献身』に値するらしいことから、どれ程コメットに迷惑をかけているか分かるだろう。


そして俺もエルフィに頼みがあるのだ。


「エルフィ、さん?」

「エルフィでいいわ」

にっこり微笑むエルフィ

「なぁ、エルフって解呪魔法とか、そういうスキルとか得意な方なのか?」

「そうですね、昔からちょこちょこダークエルフとやりあっていましたので、天使族や妖精族の次に得意ですね」

口に手を当てそう答えるエルフィ。

「じゃあ、俺が持っている呪われたシリーズを街に放出すると、解呪にエルフや解呪が出来る種族の力が必要になるわけだけど......」

そこまで話すと俺が言いたいことを理解したらしいエルフィ。

「なるほど!それはいい手ですね」


俺としては、この呪われたシリーズを早く処分したいだけなんだが、有効活用できるならするまでだ。

因みに俺が居ない間にセルフで持っていった武器も当然呪われている。

俺のせいではないと言っておこう。


「この街に住まうエルフに、声をかけて店を開かせて、エルフ達の生活の場を.......」

エルフィがぱっとこっちを向く。

「どのくらいの数のカースドシリーズが出回っているのですか?」

「3000くらい?」

息を呑むエルフィ。

「す、すごいですね」

「しかも結構性能いいんだよなぁ.....鑑定してたら呪い解いて使ってみたいと思うはず」

「値段は割り増しでもいけそうですね、これで街でエルフの居場所が出来るかもしれません」

真剣に考え込むエルフィ。

さすが元エルフの精霊。

魔精に落ちても守護はやめないとか恐れ入る。


「ねー、私もちゃんと子の面倒みてるのよ?聞いてる?」


なにか聞こえるようだが気にしたら敗けだ。


「では、ちょっと街に出てきます、今の街は復興の真っ只中、この間に場所を確保してきます」

「おぉ、がんばれ」

「あと、寝泊まりはヴェルイットの階層にしますよ、他の階層は信用できませんし」

先を計算をして早速行動に移すようだ。

その場で地面に魔方陣を発生させ、転移してしまった。


ダルフが、『信用ならないってどういうこと?ねぇ?』と叫んでいたのは割愛する。


―――――――――――――――


ダルフも自室でやることがあるのか、自室に戻っていった。

俺はその間に、自分状態を再確認することにした。

俺が居ない間、本当に何があったというのだろうか。

どうみても、俺が知らないスキルを獲得しているし。

増えていたのはこれだ。


【造形師】【擬態】【遊王】【複製】【捕食】


の5つだ。

そのうち【造形師】は【総合芸術】に統合された。












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